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うまかっちゃんを語る

突然だが、うまかっちゃんについて熱弁する。わたしの好きな食べ物は、うまかっちゃんだ。うまかっちゃんはハウス食品から発売されている袋麺だ。九州では言わずと知れた、ソウルフードである。うまかっちゃんはクリーミーでやさしい、それでいてコクも感じられる。もはや袋麺の垣根を超えたハイスペックな豚骨ラーメンだ。小鍋とどんぶりさえあれば、すぐに空腹を満たしてくれる素敵な食べ物。小中学校時代の土曜日登校から帰ってきたお昼ご飯といえば、うまかっちゃん。冷蔵庫の余り物の野菜とハム、そして卵を入れて、ハフハフ食べるのだ。もしくは、何も入れずに食べる、具なしうまかっちゃんも潔くていい。すすりやすくて、むしろ いい。ひとしきり麺をすすったら、余ったスープに白ごはんを入れ、ラーメンライスっつって、まるで鍋の〆のように二度楽しむのが、うまかっちゃんを食べるときのシキタリである。これは九州に生まれたら、もはや通過儀礼だろう。



特に福岡人のDNAには、豚骨の血が流れているため、無性にうまかっちゃんを食べたくなる日があるのだ。ちなみに調べによると、生粋の福岡人(福岡生まれ福岡育ち福岡在住)の比率は、全年代のなかでも6.1%ほどらしい。クズなワタシもそんな貴重なパーセンテージを担えるなんて。これを自慢に生きていこうと誓う。命を燃やして食べるは、うまかっちゃん。ソウルフードとはまさにこのこと。うまかっちゃんの種類は定番の他にも「博多 辛子高菜風味」や「熊本 香ばし にんにく風味」などがある。味にうるさい九州人のためにハウス食品さんが趣向を凝らしているのだろう。もちろん、これらのフレーバーはどれもおいしい。けれど、ワタシはノーマルうまかっちゃんが1番好きだ。原点回帰っちゅーやつだ。



しかし、うまかっちゃん好きなら誰もが直面したであろう問題がある。それは「水の量を見誤ってスープが薄くなる」「茹で時間を少しでも気を抜くと麺が柔くなる」という、非常に深刻な問題だ。だが、安心してほしい。そんなときは水の量を50ml少なく、茹で時間を1分短くするといい。これはうまかっちゃん好きなら誰もが知っているであろう裏技であるが、文章にすると「そりゃそうだ」感がすごい。なんだか とてもマヌケである。ちなみに、隠し味に九州のソウル調味料「茅乃舎のだし」を入れると風味が格段にアップするゾ。だが、こちらは高級品なので、頂き物などで入手した際に試してみるといいだろう。隠し味というかちょい足しで言うと、付属の調味オイルのうえに更にごま油も回し入れ、チューブにんにくをニュルニュルと入れたうえに塩をパラパラと、塩分過多不健康極まりないビチャビチャうまかっちゃんの日もあっていい。ビールとの相性は抜群だ。



そう、うまかっちゃんの在り方は、歳を重ねるごとに刻一刻と変化していく。幼少期は「食事的存在」のうまかっちゃんも、大人になれば立派な「酒のつまみ」になる。ラーメンはなにも飲み会の〆だけではない。九州のやさぐれた大人は、歳を重ね、酒を覚え、酒に溺れ、そして可愛げもなく酒をしょっちゅう飲むようになり、真の「のんべえ」になると、塩っ辛くて脂っこい博多のラーメンは、じつにビールと仲良しこよしなのだ。ビールとラーメンは友だちである。九州の酒飲みは、ビールのお供にラーメンを食べちゃうのだ。ちなみに、ラーメンのスープを紅しょうがで真っ赤に染めるのは、九州の女 特有の行動なので、九州外の殿方たちは決してビックリしないでほしい。ワタシは家でも紅しょうがを常備している。ワタシは酒を飲む時は、紅しょうだけでも永遠にイケる。なにはともあれ、うまかっちゃんに入れる紅しょうがは美味い。



さて、締めに、うまかっちゃんとの休日のヒトコマを、ば。何も予定のない休日は、昼過ぎにやっと起きて、眠気まなこで冷蔵庫から発泡酒を取り出し、プシュとすれば背徳と高揚感で包まれつつ、実はもう慣れたもので、スポーツマンがアクエリアスで水分補給をするように、すっかり習慣化しているワタシにとっては、なにも今さら改まって珍しい光景ではない。寝起き発泡酒を煽りながら小鍋にいろはすを450ml注ぎ、ガスレンジをやや強火で沸かす。そう、スープも美味しく頂きたいのがうまかっちゃんなので、ワタシはミネラルウォーターで作るのだ。決して贅沢ではない、これはうまかっちゃんに対する敬意だ。あらかじめ言っておくが、ワタシは鍋のまま食べたりはしない。ちゃんと どんぶりに移すのだ。



ワタシとうまかっちゃんのイイ関係。
卵を入れるタイミングは、未だに迷う。


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