フリーランスデザイナーとして10社のUIデザインに関わった2020年の振り返り
こんにちは、フリーランスデザイナーのキクチリョウタ(@kikku_chi)です。
2020年は今までで一番多くのプロダクトに関わった年かもしれません。UIデザイナーとしては数年分のUIをつくった気がしています。
これまで1年の振り返りをあまりしてこなかったのですが、「さすがに今年は振り返ったほうが学びがある気がする!」という感覚があったので、まとめてみようと思います。
フリーランスのPdM/UIデザイナーも最近は増えてきたのかな、と思いますが、そういう方たちにとって僕のこの1年が少しでも何らか参考になったら嬉しいです。
2020年の総括
仕事
UIつくりすぎてお腹いっぱいです…!
これに尽きます。
食べたいものを全部食べたような感覚です。
お声がけいただいた中で「このプロダクトが広まれば世の中はもっと良くなる」と感じたプロダクトやサービスをできる限り担当させていただきました。
120点を目指してこだわる・突き詰める、というよりは、
90点のものを多く生み出すことに対して打ち込み続けました。一定レベルの質で量をこなしていった感じです。
社会情勢としては、年明け1月中旬から日本国内でもパンデミックが起こり、今も予断を許さない状況です。
主にスタートアップ企業に携わるスタイルで活動しているので、「2020年はスタートアップの資金調達が厳しくなるのではないか」という警戒感から、2〜3月にかけて事業への投資金額を見直す企業が増えました。
3月は個人的にも景気悪化の予兆が現れ始めました。
単価引き下げの依頼や、稼働予定だったプロジェクトの一時凍結などがあり、4月は半月ほどしか稼働が無くなったりもしました。
しかしその後、ウィズコロナ時代のニューノーマルなプロダクト開発やDXブームなどで一気に持ち直し、結果としては昨年よりもスタートアップ自体が活況だった印象を受けます。
世の中的に大変な時期にも関わらず、こんなにもご縁をいただけたことが何よりも嬉しい1年でした。
ご縁をいただいた皆さん、本当にありがとうございました!!
遊び
ドライブして、旅して、ゆったりしておりました。
めちゃくちゃGoToトラベルをしました。
控えめにいって最高でした。
自分でそれなりに仕事をコントロールできたり、まとまった時間をつくれる人にとっては最高な制度だったのではないでしょうか。
2〜5月の外出自粛が予想以上にストレスフルでした。その反動で10月以降はかなり楽しみました。
通常時は家に一日中いても何ともないのですが、「出ちゃダメ」と言われて家にいると自分に自己コントロール感が無くなるので辛いという、初めての経験でした。
もともと、2020年は3ヶ月に1〜2回くらいの割合で海外に行きたいと思っていましたし、夏のオリンピック時期は海外で過ごそうと思っていたのですが、蓋を開けてみれば世界的なパンデミック。来年こそは海外に行きたいな、と願ったり。
ドライブの話でいくと、実は2019年11月まで車を持っていたのですが、あまり使う時間が取れなかったので一度売った過去があります。ただ、ドライブしたい欲が炸裂して今年10月にまた買ってしまいました。すぐ乗りたかったので中古車です。
カーシェアでいいじゃん?となるかもしれませんが、昨今の状況だと、「誰が乗ったか分からない車を借りるのはちょっと…」という心理が働きます。
最近中古車マーケットが活況だったり、新車生産台数が回復しているのもこういった大衆心理が働いているのかもしれないな、と思ったり。
別に都内で車いらなくない?って言わないでください。趣味です。
2020年にした仕事
さて、仕事の話に戻りますが、2020年は実に10社ものプロダクトに携わらせていただきました。
書き出してみて、今一度、素晴らしいご縁をいただいたな。。と心に染みています。本当に皆さんありがとうございます。
いくつか抜粋して書かせていただきます。
pring
お金コミュニケーションアプリ「pring」を提供しているpringという会社に携わらせていただいています。
2019年後半からなので1年以上になります。
こんなに長くプロダクトに伴走していくのは新鮮な経験でした。
キャッシュレスが急速に進んでいった2019年〜2020年でしたが、その中で多くのQR決済サービスが生まれては消え、という過酷なマーケットでした。
その中で、ポイント還元などで多額の広告宣伝費を掛けるわけでもなく、撤退するわけでもなく、独自の道を歩んだ面白いアプリです。
「pring」個人間送金・決済アプリのほか、法人送金などいくつかのプロダクトを展開しています。
その複数のプロダクトを横断的に担当させていただいていました。
基本は各サービスのUIデザインを担当しつつ、一部のプロダクトに関してはプロダクトマネジメントも担当していました。
Akerun
オフィス向けスマートロック「Akerun」を展開しているPhotosynthさんにも携わらせていただきました。
場所の数だけ鍵を持つのではなく、1つのIDで様々な空間にアクセスできるようにする「キーレス構想」というとても大きなビジョンを持っている会社です。
僕は持ち物を1つでも減らしたいほうで、前々から鍵を複数持つことがあまり好きではなかったので、このビジョンが早く実現されてほしいな、と切に願っています。
10/28に発表のあった入退室管理システムのリニューアルのベースの画面設計・ビジュアルデザイン・デザインシステム設計などを社内のデザイナーの方と分担しながら担当していました。
代表の河瀬さんは非常にビジョナリーな方ですし、プロダクトマネジメント室長の荒川さんはプロダクトの要件の整理や他部署との折衝などに長けていらっしゃる方で、楽しくプロダクトづくりを進めていけました。
NOW ROOM
短期賃貸プラットフォーム「NOW ROOM」にも携わっています。
アイデアのプロトタイピング段階からサービスの0→1に最初期から携わらせてから1年経ちました。
まだプロダクトの構想が今のものではなかった2019年末に知人伝いで代表の千葉さんと出会いました。カフェやコワーキングスペースに週1で集まってその場でプロトタイピングをしながらサービスのイメージをつくっていきました。
リリース後も継続的な改善やUIデザイン周りを担当しています。
リリースから5月中旬のリリースから約半年が経ちましたが、今では全国30,000室が掲載されるプラットフォームに成長しており、トラクションのあるチームです。
現在、UI/UXデザイナーを募集していますので、気になる方は一度お話を聞いてみてはいかがでしょうか?
Smooth
賃貸初期費用の分割払いサービス「Smooth」にも携わらせていただきました。
引越しの度に掛かる数十万円の賃貸初期費用が分割払いでき、負担を軽くできるサービスです。Smoothの提携仲介事業者でのお部屋探し・契約が条件にはなりますが、分割手数料は無料です。
不動産仲介業者がこれまで集客広告費として各プラットフォーム等に支払っていた金額を原資として出す仕組みとなっています。
これまでに無かった新しいサービスだということで、サービスの訴求方法や仕組みの説明などの部分は試行錯誤しながらつくっていきました。
プロダクトは、LINE Frontend Frameworkという、LINEアカウントをともだち追加すると利用できるアプリとして構築されており、メッセージベースのユーザーインタラクションを考慮しながらデザインしていったのも貴重な経験でした。
WEEK
曜日で借りるオフィス「WEEK」のブランディング・Webデザインを担当しました。
Pictors&Companyの水口さんとサンフロンティア不動産さんが共同事業として展開されている新コンセプトのシェアオフィスです。
WBSにも出ていたので、そこで知った方もいらっしゃるかと思います。
「場所をどうシェアするか」という対象がこれまでと異なっていて、これまでは「利用区画をシェアする」のに対して、「曜日単位でシェアする」形式になっています。
WEEKのロゴが縦方向にラインの入ったカレンダーになっているのはそれを概念的に表しています。
リモートワーク元年といっても過言ではない2020年にマッチしたコンセプトで、1拠点目は満曜日、2拠点目もオープンしました。
もう一人、僕が何かと信頼しているクリエイターの高橋くんと一緒にプロジェクトを進めていきました。
サイゼンレツ
有料ライブ配信サイト構築プラットフォーム「サイゼンレツ」に携わりました。
昨今の状況で会場内でのライブ開催が困難になり、音楽活動・芸能活動は軒並み大打撃を受けています。
そんな中で友人の藤山くんが着想したのが有料ライブ配信のプラットフォームでした。
5月頃にアイデア着想、6月に会社登記、7〜8月に導入先が決まり、9月リリースといった感じで進んでいきました。
導入先のイベントの日程が絶対、という前提がある中でどこまでをまず提供して、というMVP思考で立ち上げていったので、もう少しこだわりたかったのが本音ですが、ビジネスとして成立することが実証できたのは大きいと思います。
Jr.EXILEのメンバーが出演するBOOK ACT、カンニング竹山さん、かもめんたるさん等々の公演で導入いただき、数万人の利用者の方がこのプラットフォームでエンタメ体験を楽しんでいただいています。
直近ではあらゆる事業者が同様または競合するサービスを展開してきているので、UVPとなりうる次なる打ち手として新機能のリリースに向けてデザイン・開発を進めています。
興味があるデザイナーの方がいらっしゃいましたら、僕に声を掛けていただけると嬉しいです。
新サービスのUIデザイン、新規導入先立ち上げ時のビジュアルデザインを担当いただける方を副業でも良いので募集中です!
Donguri
ブランディング・デザインコンサルティングファーム「Donguri」さんでもサポートメンバーとしてお世話になっています。
2020年3月にはワークショップデザインの「Mimicry Design」さんと資本業務提携をされ、横断経営という形にされてからはさらにケイパビリティが広がっています。
組織変革コンサルタント、リサーチャー、デザイナーなど、いろんな方面の専門家が集まって楽しく仕事をしている、面白い会社です。
僕が携わらせていただいた会社の中で、一番Slackがにぎやかで、コミュニケーションが丁寧なのがDonguri/Mimicryさんです。
カルチャーがSlackからにじみ出てくる会社は意外と少ないものです。こんな素晴らしい会社ですから、大手の企業さんから指名で組織変革を依頼されるわけです。
僕はというと、プロジェクト単位で情報設計やビジュアルデザイン周りを担当させていただいています。
STUDIO
デザイナー界隈では知っている人も増えてきた国産デザインツール・ノーコードWebデザインツール「STUDIO」にも携わらせていただいています。
主にデザインエディタ以外の部分のUI改善や、デザインシステムの整備をちょこっと担当しています。
STUDIOは、CEOの石井さんもCPOの甲斐くんもデザインやプロダクトの質感について並々ならぬこだわりを持っている、なかなか稀有な会社です。
既存のWebデザインは
デザインツールでデザイン→コーディング→CMS組み込み→サーバーにアップロード
という流れです。
それに対してSTUDIOを使ったWebデザインは
STUDIOでデザイン・サイト設定→公開
なので、1プロダクトでWebデザインに関するあらゆる手間が省けます。
Web制作ツール自体は他にもありますが、STUDIOの場合はデザイン上の制約もなく、しっかりと制作すればビジュアルクオリティも担保できます。
STUDIOでのサイト制作をより多くの方に、より多くのシーンでに受け入れていただくためにどうしていくかを考えながらプロダクトをより良くしていくエキサイティングな環境です。
何のために働くのか初めて考えた年
8年仕事してきて、初めて「何のために働くのか」を考えたのが今年でした。
20代前半は、創業したデザイン会社を成長させていくことに必死で、ある種のフロー状態に入っていたと思います。何がやりたくなくて、何をやりたいみたいなところも、個人ベースで考えたことはありませんでした。
その会社を2019年3月に完全に離れてから、次は何をやろうかと考え始めたときに初めて「何のために働くのか」という問いが浮かび上がってきたといった感じです。
問いに対してぼんやり悩みながら日々を過ごすわけですが、「考えよう」みたいなスタンスになると答えが出ずに焦る→思考が硬直する→更に焦るの無限ループで答えが出ない。
なので考えるのを止めて、とりあえず未練があったことに取り組んでみたのが2019年後半〜2020年でした。
それが「自分が現場の最前線でプロダクトのデザインに関わまくる」といったことです。
未練があるなら飽きるまでやってみよう、と。
この1年、実際に手を動かしまくってみて、そこの未練は消えてきた気がします。いろいろなプロダクトに関わる中で、自分が興味を覚える対象の方向感覚もなんとなく掴めましたし、どんなことをしているときが楽しいかといった動機の方向感も分かってきた気がします。
来年の抱負
来年もデザイナーであり続けると思います。
一時期、思考が変なベクトルに向いてしまい、「自分はデザイナーでありたいのだろうか」自己否定に陥っていたこともありました。
とはいえ、そんな哲学的な問いを科学的に考えても答えは出ませんし、割と無駄だということに気づいてからはそんなことを考えなくなりました。
来年、デザイナーとして活動していく上で、2つのテーマでやっていきたいなと思っています。
・自分の暗黙知を形式知に変換していく
・量ではなく質を求める
1つ目の「自分の暗黙知を形式知に変換していく」は、これまでなんとなくやってうまく行っていたことを表出・結合・共有していくことで誰でもその知識にアクセスできるようにしていきたいといった意味です。
そうして、デザイナーになりたい人の背中を押したり、デザイナーを育成できるようになれば良いなと思っています。
このあたりはSECIモデルが参考になりそうなので、そのあたりを参考にしながらやっていこうと思います。
2つ目の「量ではなく質を求める」は、多くのプロダクトに関わるよりも、数少ないプロダクトに対して多くの時間を費やすことで、ミクロな部分のユーザー体験にもこだわっていきたいな、という意味です。
さいごに
なんとか2020年内に1年の振り返りを終わらせることができました。
2021年も振り返ったときに達成感のある楽しい1年になれば良いなと願って止みません。
今年お世話になった方には感謝の気持ちを今一度この記事を以てお伝えして締めることします。
本年もお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします!
サポートいただいたお金は他の方がよりデザインを効率よくできるための無料UI Kitやテンプレートの制作に使わせていただきます!