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麗しの国、ウルグアイ【バトンリレー企画】異文化カルチャーシェア活

 私がブラジルサンパウロに移り住んで27年の月日が流れ、これまでにもこちらの暮らしのあれこれを、note記事でお伝えして来ました。今回は趣向をちょっと変えてブラジルを飛び出して、南米の別の国について熱く?語ってみたいと思います。その国の名前はウルグアイです。ウルグアイが南米大陸のどこに位置するかというと。。(息子の地図帳をご参照。)

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 ウルグアイ東方共和国(República Oriental del Uruguay)、通称ウルグアイは、南アメリカ南東部に位置する共和制度国家である。北と東にブラジル、西はアルゼンチンと国境を接しており、南は大西洋に面している。スリナムに続いて南アメリカ大陸で二番目に小さい国である。(出典 Wikipedia)


 ブラジルの下方にある、オレンジ色の部分ですね。(改めて見るとブラジルって大きい!)国の広さは日本の半分ほど、人口は約350万人。人口のほとんどは首都のMontevideo(モンテビデオ)に集中しているそうです。(これは後に登場するウルグアイの方から聞いた話です。)

 国旗は(隣国アルゼンチンと紛らわしいのですが)こんな感じ。サッカー好きな方は、ウルグアイ代表チームのユニフォームを連想されるかもしれませんね。写真は首都モンテビデオから約180km西にある、コロニアデルサクラメント(Colonia del Sacramento )という街で撮影したものです。後ろに見えるのは、アルゼンチンとの間に流れる巨大な川、ラプラタ川(Río de la Plata 「銀の川」)です。

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 前置きが長くなりました。私がこの南米の小さな国を知ったのは、新卒で入社した勤め先(メーカー)での配属先が、中南米向けの海外部門だったためでした。就職試験の面接で、

「海外部門を希望されているそうですが、具体的にどの国の担当したいですか?」

と訊かれた時に、

「海外部門であれば、担当国はどこでも構いません!」

と若さゆえの無鉄砲ぶりで応えたところ、そちらの部署への配属となったのでした。あの時の面接が私の人生を大きく左右したのだのだろうなぁと今更ながらに思っています。

 私が部内で配置されたのは、量販品を販売するラインでした。私と同じような年頃の女性の先輩社員も数人いて、部内では一段と華やいだ雰囲気でした。

 入社してどのくらい経った頃か、ライン内の仕事の分担の改革があって、下積み時代?を終えた私にも担当国が充てがわれました。それが私にとっては未知の国、ウルグアイだったのです。

 仕事内容は割と単調でした。量販品が対象なので、システムのような大きな金額での受注があるわけではありません。小さな国が相手なので、それは尚更のことです。客先(販売代理店)に数ヶ月先までの計画(フォーキャスト)通りに注文してもらい、受注手続きをします。そして物が出来上がったら出来るだけ早くに倉庫に搬入させて、輸出部門から連絡のあった出荷スケジュールを速やかに客先に連絡します。

 技術的な質問やトラブルがあった場合は技術部門と繋いで回答を流す。当時はメールはありませんでしたから、そんなやりとりをテレックスやファックスで行っていました。南米諸国との時差は半日。日本時間の朝にお客さんから入電があり、昼間に関連部門とのやりとりをして、1日の終わりに回答する、そんな流れで1日が慌ただしく過ぎて行きました。

 ウルグアイの担当の方と仕事を続けるうちに、その真面目な仕事ぶりに、南米人のイメージ(底抜けに明るい、そしてちょっといい加減⁉︎)が徐々に払拭されていくのを感じていました。こちらからの問いかけにはすぐに反応してくれるし、時に無理なお願いにも応じてくれていました。

 いつもコンタクトをとっていた担当の方はGalimberti(ガリンベルティ)さんという方でした。代理店のいわば責任者。当時40代と思しきガリンベルティさんの、神経質そうだけれど真摯な様子を一度写真で拝見したことがありました。白人で口髭の、スマートで上品なおじさまでした。一度もお会いしたことは無かったのに、そのお人柄ともどもすっかり隠れファンになってしまいました。

 ガリンベルティさんとのやり取りで、忘れられない思い出があります。あれは残業で遅くなり、クタクタになったある晩のことでした。時計の針は9時を回っていたと思います。いつものようにガリンベルティさんに回答を、とファックスの受話器をとってあちらの番号をプッシュ。いつもなら呼び出し音の後、国際回線特有のピッという音が聞こえた後に、ピー、ヒョロヒョローという音が聞こえるはずなのに、永遠と呼び出し音が鳴るばかり。おかしいな?と思っていたら何と電話のように人の応答がありました。

「あれ、そちら〇〇社ですよね⁉︎ファックスを送りたいのですが。。」

「どちら様?」

そんなやりとりが続いて、どうやら電話の相手はガリンベルティさんだと分かりました。そして彼から衝撃の発言があったのです。

「あなたたちがファックスの納期を遅らせたせいで、自分たちのファックスをお客さんに貸し出してしまったんだよ」

 と、怒鳴るわけでもなく、流暢な英語で粛々と訴えて来ました。こちらの落ち度は充分にわかっていました。私が送ろうとしていたその文書にも、納期遅延の言い訳が書いてあったはずですし、色々奔走した上での残業でした。

 自分の未熟さをなんとも不甲斐なく思いました。でも、遠く離れた小さな国でお客様のためにと懸命に頑張っている様子を知ることが出来て、胸が熱くなりました。そして、ますます「ウルグアイの人」に親近感を覚えるようになっていたのでした。あの時の出来事は、これから先もずっと忘れることはないでしょう。

 そのあとしばらくして、ガリンベルティさんのところから若い技術研修生が派遣されて来ました。彼の名前はHeber(エベル)さんと言って、20代半ばくらいの、物静かな青年でした。私にとって初めてお会いしたウルグアイ人でした。

 技術研修の場は勤め先とは離れていて、日常的にはお会いすることはありませんでした。でも、他国の研修生と一緒の食事会や、週末の鎌倉散策などで数回顔を合わせる機会がありました。

 鎌倉散策の時に話してくれたのが

「ウルグアイの国土は日本の半分ほどで、人口は約300万人(当時)、そしてそのほとんどが首都のモンテビデオに集中している。もしかしたら人より羊の数の方が多いかも⁉︎」

という情報でした。エベルさんは南米人にしては大人しく、自分から話しかけてくるタイプではありませんでしたが、こちらが質問したことにはきちんと丁寧に、時にユーモアをまじえて答えてくれました。

 ちょうど梅雨時で、時折土砂降りの雨となるような生憎のお天気でした。でも紫陽花の花がとてもきれいに咲いていて、習いたてのスペイン語を使ってみたくてエベルさんに話しかけてみました。

「この花は日本語では紫陽花と言うのですが、あなたの国の言葉(castellano)では何と言うのですか?」

「Hortensia」(オルテンシア)

との答えでした。

「きれいな響きですね。女の子の名前に良さそうな⁉︎」

「そういう名前の女性もいますよ」

 会話が成り立ってなんとも嬉しかったことを覚えています。オルテンシアはブラジルでもHortênsiaと言います。こちらに来て、女子バスケットボール選手にHortencia(スペルが若干違いますが)という方がいると知った時にハッとしました。紫陽花はHortênsia。私は英語名のHydrangeaより先に覚えたかもしれません。。

 エベルさんが帰国して暫くすると、それまでガリンベルティさんの名前で来ていた技術質問が、エベルさんと、上司であるガリンベリティさんの連名で送られて来るようになりました。日本で研修を受けたことが彼の自信に繋がったのかな。彼をサポートして良かったな、と心から思えた瞬間でした。

 それからというものの、私のウルグアイ愛がますます加速していき、ガイドブックはもちろん、こんな本を購入しては読んでいました。(年季が入っていますがお気に入り。ブラジルに持って来ました。)

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 サッカーのトヨタカップ(南米とヨーロッパの優勝国同士が競い合って世界一を決める大会)でウルグアイとオランダが闘えば、手に汗を握りながらウルグアイを応援しました。

 結局会社を退職してこちらに来るまでに、ウルグアイを訪れる機会には恵まれませんでしたが、数年前に家族とアルゼンチンのブエノスアイレスを旅をした時に、ラプラタ川を船で渡ったウルグアイ側の観光地、コロニアデルサクラメントに行ってみることにしました。

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  コロニアデルサクラメントは、古い石畳が美しい長閑な街で、アサード(焼肉)が美味でした。サンパウロの喧騒を離れて、久しぶりに魂が洗われたような、リラックスした気分になったものです。

次回はぜひ、大航海時代の航海者が彼の地を指して

「Monte vide eu!」(我、山を見たり)

と思わず叫んだという、Montevideoにも行ってみたいという気持ちがまた沸々と湧いて来ました。

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 昨日自宅のベランダより撮影したもの。今では飛行機も結構飛んでいます。国境を超えられるようになるのももう間近なのでしょうか。

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 いつも素敵な小説を書かれているハゲのタイタンさんからお声かけをいただきました。お陰様で、書こうかどうか迷っていたエッセイを、無事に?書き上げることが出来ました。背中を押してくださりありがとうございます♡ 

 バトンリレーはチェーンナーさんの企画です。機会をいただいたことを光栄に思っております。ありがとうございました!

 次の走者をお願いするのは、かのんママさん。「推し」のイラストを描かせたら、その実力はピカイチ☆ご自身の素敵なイラストと共に、新旧ライブレポートを公開されています。

 NYのジャスピアニストの大江千里さん繋がりのお友達(千友さん)で、千里さんのイラストももちろんそっくり。アイコンが写真のようだと評判です。ぜひご期待下さいね!

 ついつい熱くなり過ぎて、長い記事になってしまいました。最後までお付き合い下さいましてありがとうございました!


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