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smashing! あいあふれるあいのあじ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。

毎年、ウチではバレンタインよりも重きを置かれるのは前日のバレンタインイヴ。そう、俺、喜多村千弦の生誕日だからだ。仰々しくなったが皆さんごきげんようだ。

新年から、もしくは年末から徐々に増え続ける差し入れはほぼチョコレート。駄菓子から高級なのまでバラエティに富んでいる。一緒に暮らしているこの動物病院の院長、佐久間鬼丸は甘い物が好物。とくにチョコレート。昔からバレンタインの残ったやつセールやなんかで美味しいやつを大量に買い溜めしてたようだが、今や保管場所に困るほど頂けるようになった。自分たちへの信頼や愛を頂いているんだな、そう思うと、家中に溢れるチョコレートがとても幸せなものに感じられる。

誕生日に食べたいものを教えてくれ、鬼丸が数日前から俺に打診してきている。メールやメッセージでも。文字通り打診。口にするより秘密めいてて面白い。色々考えたのち、俺は決めた。

今日俺はキッチンに出入り禁止。鬼丸が朝早くから仕込みでウロウロ。火を通してなくてもいい匂いがする。美味しいものが確定しているっていうのは、これもまたとんでもなく幸せなことだ。まず失敗がなく、買い出しに行かなくてもストックで間に合う、そして俺らが二人とも好きなもの。

「千弦、お前せっかくの誕生日なのに、唐揚げなんかでほんとによかったのか?」
「唐揚げイズマイベストパートナー」
「うん、よくわかんないけど楽しみにしてな」

愛の詰まった部屋で愛するこいつと愛の籠ったご馳走を。これが俺にとっての最っ高のバースデーだ。




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