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smashing! ねむるおまえのこころを

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。

日曜の朝はなるべく遅くまで寝ていたい。なんか先週もこんな感じで始まって終わったな、連休も。週末は雨で、仲間達はそれぞれ用事があって多分誰もここにはこない。と思う。珍しいと言えば珍しいが、逆にゆっくりできるいい機会。喜多村は隣でプスプスと寝息を立てる佐久間を見て思った。

以前ベッドを大きくしたら、そりゃ寝心地もいいんだが、前の小さめのより密着度が低くなったような気がする。しょうがないよな、ゆったり寝たいもんな。でも俺は暑苦しいほどの密着が好みなんだ。喜多村はあえて佐久間に乗っかるみたいにくっついて、うなされる佐久間を間近で見て楽しむ。

よほど先週の朝の「平日勘違い」で疲れたのか、明日休みだな、寝る前に何度も確認していた佐久間。おかげで全く目覚める気配もなく、喜多村という重石を受けなお睡眠続行中。そろそろ飯にしようと起きかけた喜多村のスウェットを、不意に佐久間の手が緩く掴んだ。

何かしらの思いを抱えている時に、佐久間は無意識に柔らかいものを掴んでしまっていた。一緒に暮らし始めてしばらくして、なくなったと思っていたあの癖。なにか夢でも見ているんだろうか、喜多村はその手をそっと包み込むように触れ、もう一度ベッドに横たわる。

いつか全部の「心細い」が、消えてなくなっちゃえばいいのにな、俺も、お前のも。

喜多村は外の微かな雨音を聞きながら、もう一度佐久間に乗っかるように、その体ごときつく抱きしめた。

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