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smashing! きみはきみそれでいい

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。病院の経理担当である税理士・雲母春己。その雲母の元後見人はフリー弁護士・白河夏己。彼が最近お試しで付き合い始めたのは、設楽の兄・ライターを生業とする泰造。

「先生、泰造さんがお見えです」
「ああわかった、通してくれ」
「あと…ンフ、見郷様もいらしてます♡」
「通してくれ…って、なんであいつが来るんだ?」

穏やかな元旦の午後。正月休みを一緒に過ごしませんか?秋口くらいに言われていた設楽泰造からのお誘い。白河はそのために年末年始のスケジュールを組んだ。雲母にもヘルプを頼み美味しい食事や家事を任せた。すると白河の元カレが突。このイレギュラーっぷりである

「賀正!夏己、俺正月ここで過ごすから」
「…見郷、お前パートナーは」
「友達と海外旅行行っちゃったんだもん」
「…お邪魔します先生」

夏己い風呂どこお?ズカズカ上がり込んで勝手にバスルームに向かった見郷。白河と雲母、知った顔とのハッピーホリデーだったはずが、知らない兄さんが加わってしまったことで緊張する泰造。白河は頭が痛くなった。

「すまない泰造くん、あいつはな昔からああで」
「いえ俺は大丈夫です。ていうか先生、あの方は?」
「所謂、元カレだ。なに、昔のことだ」
「…元カレ」

リビングのいつものソファーは見郷の荷物が占領、泰造は見るからに遠慮してしまっている。コーヒーをお淹れしましょう、キッチンに向かった雲母の後ろ姿を見つめながら、白河は泰造に声を掛けた。

「すまないな泰造くん、だがあいつとは本当に何もないから、君が気遣う必要などないんだ」
「だ、大丈夫です、俺はちょっと人見知りで…」
「せっかくの休暇なんだ。君と楽しみたい」
「…ありがと、ございます」

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「それ入れちゃう?泰造くんはチャレンジャーだな」
「なんかいける気がします、先生を喜ばせたい」

小一時間後。すっかり「知らないお兄さん・ケンケン」に懐いた泰造は、二人でキッチンでなにやら奮闘していた。お二人ともとても絵になりますね、いつ何時も録画を怠らない雲母も加わり、ナントカズキッチン収録みたいになっている。あオリーブオイルはやっぱり遥かな高みから垂らすんですね。

「お前たち、いったい何を作ってるんだ?」
「だめだめ!夏己は向こうで待ってなさい」
「先生もう少しで完成します!」

料理は美味いが休日のお父さん並みに大雑把。そんな見郷と料理苦手な泰造が、雲母と白河のために夕食を作った。リビングに運ばれてきたのは、大皿で具沢山すぎて全貌が見えないが、おそらくあんかけ焼きそば。そして箸休めにとこっそり雲母がゆず大根を添えた。白河の好物である。

「材料のチョイスは泰造くんだ。味見したが美味いぞ!」
「お口に合うかどうか…」
「とても美味しそうですね、さ先生、頂きましょう」
「なんかこういうの、学生の時を思い出すな」

二人の作ったあんかけ焼きそばにはベーコンやチコリ、謎のさつま揚げ等がIN。闇鍋気味だが不思議と全てがマッチしいい味を出していた。よかった大成功ですね、泰造は焼きそばを頬張る白河を見て嬉しそうに笑った。このレシピを解読できないでしょうか、雲母は具材の記録に余念がない。

「よかったろ夏己、泰造くんが具を選んだんだ」
「でも、麺を炒めたりあんかけにしてくださったのは見郷さんで」
「ふん、こいつは焼きそばオンリーだったからな」
「待て、そんなことはないぞ雑炊だって」

白河と見郷の掛け合いに、泰造はふと我に返る。白河はこういう明るくて強引な相手と付き合っていたのだ、内向的な自分との差に少しだけ寂しさを覚えた。急に黙り込んだ泰造に、見郷がその顔を覗き込むように話しかけた。

「なんだなんだ、元気なくなっちゃったな?お腹いっぱいになったか?」
「あ、はい、焼きそば美味しいです。ていうか、俺が見郷さんみたいだったらと思ってしまって」
「…何を言う。こんなのが二人もいたら」
「焼きそばが美味しくなっただろう?いろんな具材をまとめたら」

実は世界ってのはそうなってるんだ。そうだな、優しげに微笑む白河と雲母に、泰造は幼稚な自分を少し恥じた。見郷の大きな手が泰造の癖っ毛をわしわしと撫ぜた。

「そういえば泰造くん、君は受…ネコなんだな?」
「あ、そうです」
「夏己と付き合うんなら、それはそれでいいと思うぞ?」
「お前何を言い出すんだ」
「まあまあ。さっきも言ったろ?それぞれいろんなカタチがあっていいって。ていうことはだな」

百合っぽい仲ってのも大ありだ。大真面目に語る見郷に、白河と雲母は飲んでいたほうじ茶を吹きそうになったのだった。






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あけましておめでとうです!

さあ2024年ですね!
昨年は中の人の事情で
佐久イヌ140が主に大活躍
連続テレビ小説な感じで
楽しんでいただけたかと
そしてコラボな一年でした!
最高なトリップでした!

今年もネタが尽きないようですので
いっぱい読んでいただきたいなと
思います
絵も描きたい!

喜々


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