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smashing! おいてきぼりをだきしめて・3

ー 伊達くんの携帯で失礼する。見郷だ ー

短いメッセージに、白河は数度瞬きを繰り返した。そして画面を二度見、そして三度見。明らかに覚えのある苗字。こんなのはいくらでもあると思いきや絶対ハンコは特注なやつに違いない厄介だな苗字ってやつはそういえばハルのも学校とかほんと大変だった気がす(ノンブレス)。そんな白河に痺れを切らしたように、ダイレクトで電話が掛かってきた。

「夏己だな」
「…見郷」

もー何してんのおケンケンはあ!長い沈黙を破ったのは電話口で騒ぐ伊達の声だ。

「ごめんね俺の友達なんだけど、ちょっと挨拶させろって聞かなくってね、てか先生、ケンケンと知り合い?」
「まあ、そんなところだ」

新幹線で1時間程度とはいえここまでやってくる程の所用をさらっとドタキャンした見郷は、伊達の乗るクロスバイクの後ろに乗っかって白河のマンションまでやってきた。ケンケンくっそ重いいいいい!玄関を開けた途端伊達がぼやく。でもねクツもらっちゃったん、出迎えた雲母に嬉しそうにショッパーを渡した。

「着物だから横座りしてんのに、もすっげ指示してくんの!」
「ナビと言いなさいナビと。久しぶりだねお邪魔するよ雲母くん」
「ご無沙汰しております見郷さん、ささどうぞお入りになってください」

見郷はリビングのソファーに座った仏頂面の白河を見るなり、何故か不満げに口を尖らせた。夕飯は何か良さげなのに変更します、設楽は淹れたてのコーヒーを並べながらそう雲母に伝え、キッチンへと戻っていった。

「先生ごめんね、ケンケンついてきちゃったん」
「ご苦労だったなマサムネくん、我儘だから大変だったろう」
「15年ぶりだってのにひどい言い草だな」
「お前も相変わらずだ、見郷」

見郷さんのことは僕も知りませんでした、好奇心で目をまん丸にした雲母と伊達は、壁か何かのように気配を消し二人の話に耳を傾ける。テーブルを挟んで白河と見郷は差し向かい。文字通りサシでの再会。どうやら15年前、白河が一方的に友人?関係を断ったのではという見解に。

「伊達さん僕たち、席を外した方が…」
「えーいいじゃん聞きたいい!いいよねえ先生」
「かまわない。君たちは俺の家族だからな」
「突然来たのは謝る。ただ、理由を知りたかったんだ」
「嫌いで離れたワケじゃない」
「?待て。どういうことだ?」

俺にとっての一番はあの日からハルになった。だから見郷、お前を一番にしてやれなくなった、それが理由だ。




続きます。

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