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佐久間イヌネコ病院 luv.34 カプにみえないバカップル

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叔父から継いだ喫茶店のある商店街に引っ越してきて、一番最初に世話になったのは佐久間院長だ。その後色々な手続きや町内会やらで親身になってくれたのが、ウミノ湯の羽海野真弓さん。ぱっと見、喜多村くんに似てるんだよね。同系ていうか。

そのウミノ湯に去年、教授先生が加わった。店主の羽海野真弓さんの17年付き合いのある恋人で、なんか赤道のあたりとかインド洋らへんで働いてたとか、詳しくは知らない面々が好き勝手噂していた。教授先生=リウ先生はコーヒーが好きで、よくウチに顔を出す。キリマンジャロ、ブッシュベルドローストしましょうか、そう言うとすごく嬉しそうに待ってる。

最初、あの二人が恋人同士という事に全く気づかなかった。まるで年の離れた先輩後輩か親友同士か、そういうのかと思ってた。俺の周りのカプといえば、休みの日に昼間から酒くらってたりするあの病院関係者達と税理士、商店街公認になりつつある庭師くんと男の娘とかだ。あの人たちはあれはあれで堂々オープンで何にも動じてない。なんか新装開店みたいだな。それとは真逆にウミノ湯の二人はそういう素振りの全くない粋な兄さんたちだ。

ちょっと用事があってウミノ湯の前を通りかかったら、あの二人が隣の駄菓子屋の前で写真を撮られている。なんで盛装?和服?正月だから?デジカメを持ってるのは駄菓子屋の大将。真弓さんのお父さんだ。

「こんちわ。なんでこんなとこで撮ってんの?」
「やあ!向こうの友達に送るやつなんだよ!」
「あ、マスターちょっと待ってくれるか。佐久間くんから預かってるやつが…」

これ院長のお兄さんからだってさ。真弓さんに手渡されたのはぽち袋。え俺の名前入り…お年玉…に見せかけたこれはあれだ結納だ…なんたって院長のお兄さんからだって…院長手ずからじゃないとこがますます真実味…どうしよう着替えていまから挨拶行ったほうがいいかな…それにしてもこの場合喜多村くんとはどういう関係に…

「???マスター、言ってることがわかんないぞ」
「…ああ、3Pてことなのか」
「(スルー)正月休み、なかなかマスターに会えないっていうから、俺が預からせて貰ってた。直接じゃなくてすまんな」

じゃあ俺はもう少し撮影があるから。そう言って真弓さんは戻っていった。また店いくよマスター!駄菓子屋の大将とリウ先生が大きな声で手を振ってる。あの二人ていうか三人、ほんと仲良さそう。真弓さんはともかく、キャラも若干被ってるし。

ほんの少しだけ駄菓子屋を振り返った先で、真弓さんの手が隣にいたリウ先生のそれに触れたのを見た。指先が手の甲を掠めるように撫でて、それが本当に…艶めいて見えた。俺は「手」の微細な演技をインスパイアした映画が特に好きなんだけど、あの世界を一瞬垣間見たような。なんだ、ちゃんとあの二人もバカップルやってるんだなあ。意外なような、安心したような。

さて俺はといえば、この結納金の使い所を…もっか妄想中。




/岸志田七星
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佐久間イヌネコ病院
ひさびさの将棋教室で
たくさん差し入れをいただきました
中身 ほぼ プ リ ン
期限は脱酸素とか缶のとか
けっこう持つから大丈夫なんですが
見ると我慢できないから
俺が

(院長)

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