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smashing! こころづくしのそのあいを

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。年末29日から年始は10日までお休みです。

11月あたりから少しづつ大掃除を進め、クリスマス後すぐに注連縄も飾り、病院を掃除し塩と酒で清めて終了。あとは餅やら酒やらオードブルなんかはギリで買い出しに行こうってことに。

「千弦、俺はここから動けん」
「わかる俺もだ鬼丸」

伊達、雲母家に続き、佐久間家にも「それ」はやってきた。リビングの一部を陣取る家具調長方形コタツである。喜多村が雲母のところに差し入れを持って行った際、そこには伊達がいて、なんやかんやあってコタツの良さを刷り込まれ帰宅し、そのまま楽な天とかでポチッたのだ。設置してすぐ佐久間は大喜びでコタツに滑り込んだ。うわ十何年振りい。喜多村は佐久間に好きなようにさせながら、佐久間がほっぽった家事をさりげなく片付けてやる(スパダリ)。

そして昼過ぎから二人してずっとコタツにイン。途中からリイコも加わったが、どうやら電熱線からの温風が気に入らないようで、さっさとお気に入りの「浴室前のマット」の上に陣取ってしまった。そろそろ夕飯支度しないとなあ。丸くなったまま半眠りの佐久間を起こさないよう、喜多村がそっとコタツから抜け出そうとしたその時だった。

いきなり玄関のカウベルがガロンガロンと鳴った。あの力加減おかしい。飛び起きた佐久間と逃げ腰の喜多村は、恐る恐る玄関に近づきドアを開けた。

「鬼丸うーー!久しぶりやな元気やったか千弦くん!」
「え兄さん!ママちゃんもどしたの!」
「ごめんね鬼丸くん〜!もうさ達っちゃんが寄るって聞かなくて」

そこにいたのは佐久間の兄の達丸和尚と、その幼馴染の真々部千秋。
聞けば昨夜からスノボだかスキーだかに出かけ、その帰りにここに寄ったのだという。明日は朝から大晦日の寺の行事があるのでとんぼ帰りなんだ。雪焼けした赤い顔で笑う二人。長距離移動にも関わらず疲れを微塵も見せないおさななコンビ。最強かよ。

上がってってくれという佐久間の頼みも断り、温泉土産やらお馴染みのふるさと便コンパクト、玄関の三和土をみっしり箱で埋め尽くし、二人はお茶も飲まず笑いながら去っていった。この間ざっと20分弱。

「あっという間に帰ってっちゃったな…」
「うん、兄さん昔からああなんだ…いっぱい置いてってくれたなあ」
「開けてみよう鬼丸!すごい楽しみ!」

リビングに運び込んだ荷物の一つ一つを、二人は歓声を上げながら開封していく。数日遅れのサンタさんみたいだな。さらっと可愛いことを言ってのける喜多村に、思わず佐久間の頬が緩む。
いくつかめの箱の中、束ねられた小さな封筒があった。佐久間がそれを手にし思わず吹き出す。何?何それ?不思議そうに覗き込む喜多村に、佐久間は束をそっと差し出した。

「あ!これ全部ぽち袋じゃん!うわ万札入ってる!」
「みて千弦、俺らの全員分名前…」
【【 お年玉って書いてある!!! 】】

達丸たちはおそらく、一度でも耳にした佐久間の友人の名前を逐一覚えていて、お年玉と書かれたぽち袋にそれを書いてくれたのだ。

「鬼丸、俺、伊達さん、ハルちゃん、設楽、すぐるん、優羽…」
「あこっち…マスターのもある。あとマミたま、リウ先生(!)」
「リウ先生のことも話したっけ?」
「ママちゃんとウミノ湯行ったわこないだ」

リウ先生にお年玉渡したらどうなるかな、早速元旦に朝風呂行かなきゃ。早速、年始の楽しい予定が入ってしまったことが嬉しくて、佐久間は隣の喜多村の肩先に凭れて呟いた。

来年もすげえいい年なる気がする。

鬼丸、楽しいことで埋め尽くそう!なんたって俺もいるからね。喜多村がいつものように、ニカッと笑った。








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