見出し画像

smashing! おれはおまえのせんぞくの

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。

梅雨は明けたはずなのに毎日雨が続く。幸いウチはだだっ広いので干場には困らないけど、洗濯物に占領されたリビングはなんだか野戦ビョーインみたいだよな。見たことないけども。

朝診が終わって昼食採って、しばらく休憩で横になったりしてると、鬼丸が見つからないんだ。どっかのソファーか床の上にごろ寝してるはずなんだが。昨日雲母ハルちゃんがくれたクイニーなんとかをおやつに出そうとしてるのに。

鬼丸クイニーなんとかだぞハルちゃんのくれたやつ。するとズリズリと妙な音がして、足元に鬼丸が這いずってきた。ありがとな千弦。二人して床に座ってクイニーなんとかに齧り付く。ものすごく美味いけどこれ歯にくっつくなあ。部屋が冷えてるので温かいコーヒーの入ったマグを渡してやる。

甘いのと苦いのがいいかんじに混じり合う。こういう取り合わせ大好きだ。寝転がってたせいか湿気のせいか、もふもふくしゃくしゃの頭。湿気含むとふくらんじゃうんだよな。くしゃっと髪を梳いてやると鬼丸が擽ったそうに笑う。いいなあ千弦の髪は天気関係なくて真っ直ぐで、って。

俺の髪は一見そんな感じだけど黒くて硬くて実は剛毛だ。ああ髪の毛の話です大丈夫大丈夫。短くするとタワシかハリネズミだしパーマ全然かからないし、そんでオールバックとかさっとまとめるしかない。毛先けっこう凶器だぞ硬いしな。でも俺は千弦の髪大好きだ、頬やら顎のヒゲやらにパンくずつけた鬼丸が俺の髪に触れた。

とここで本来ならば(セーヨク)魔神降臨するのが定番だが、今日はド平日でしかも洗濯物が乾いていない。乾燥機にも限界がある。ということは風呂等までお預けだ。鬼丸と暮らすようになって頑張って我慢を覚えたんだからな。俺はやるときはやる奴だ。(そうか?)

そんな俺を知ってか知らずか、いや気づいてるとは思うけど、鬼丸の手玉に取られてるような気もしなくはないな。日中はよほどのことでもなければ、俺が襲ってこないのを知ってるから。鬼丸が目元で笑って、じゃあここ一緒に片付けよっか。鬼丸が俺の手を握って立ち上がる。あ、そうだな洗濯物も片付けないと。

日常のなんだかんだで忘れ去られそうな俺のセーヨクも、ちゃんと鬼丸は覚えていてくれてて、俺が忘れたころに実にわかりにくいアプローチがやってくる。そして俺はすぐ察することができる。だって。

俺は鬼丸専属のセーヨク魔神だからだ!嫌そうな顔されるけどな!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?