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smashing! おれとおまえのこのかんじ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗。彼は佐久間の病院の経理担当である税理士・雲母春己と、伊達の後輩・設楽泰司の恋人。

栗や松茸、ついでのトリュフなんかも獲れるウチの家の裏山。寒くなってきて紅葉も盛りを過ぎると、落ち葉の量が半端ないので、今日は手入れに入った。小さな山でもけっこう手がかかる。けど、設楽も雲母ハルちゃんも手が空くと栗やなんかを獲りがてら、下草刈ってくれたりする。

って来てみたらなに綺麗じゃんね。落ち葉がかさばる分掃除してあとは手入れたばっかりな感じ。設楽、ハルちゃんと一緒に松茸獲りました、て言ってたから、そん時だろうか。頑張ったなあ。

獣道みたいな山道を歩くと、すっかり葉の落ちた木々の隙間から眩しい光。冬でも日差しはけっこう強い、でも気温は低い。寒暖差に気をつけないと。なんかお天気兄さんみたいになってきたん。せっかく来たからいつもの広場んとこ、設置してるベンチで一休み。テント張ったりバーベキューしたりできるとこがあんのよ。俺らの他にはここ誰も来ないからすげえリラックスできる。持ってきてたマグボトルのコーヒーを飲む。なんだろね、山のこの澄んだ空気と、コーヒーの香りって合うんよね。前はこういうとこで吸う煙草が最高だって思ってたけど、吸わなくなったらよくわかんなくなった、そんなもんだよねえ。

そろそろ昼過ぎ、なんも作業してないけど腹が減った。弁当持ってくればよかった。あでも確か冷蔵庫にあったなキンパ、ブルダック風なんとか。ウチら絶賛ハンリューブームだから、そういうのしか入ってない気がする。

そうと決まれば下山下山。すぐそこなんだけどね。坂になったとこが落ち葉で滑るから用心してください、よく設楽がゆってたなあ、そう思いながら木の根の階段を一足飛びで下りてたらズルッと。あしまったこれガチで転ぶ…と思ったら、後ろからキャッチされた感。だから言ったじゃないですか、俺さ散々びっくりさせられることあるけど、こんなびっくりしたんは稀だって。なあ設楽。

おま一体どこから。迂回路から登ってきたら目の前でこけそうになったモノノフが。そうなの俺はてっきり背後霊かと思ったん。フヘッとか鼻で笑われた。何なん、でも転ばずに済んだわありがと。聞けばオガクズに寝かせといたユリ根がそろそろ食べごろだから掘り起こしに来た、と。

いいねえユリ根。ほくほくの食べたい。そういや俺腹減ってたんだったわ。戻って飯にしますか、いきなり設楽が目の前に屈んだ。背中乗ってください、だって。そりゃ楽ちんだけど何でよ、そしたら。強制的密着度MAXハグな気分なんで、なにそれ。乗らないとそこから動かない圧がすごいから仕方なくおぶってもらった。俺背負って軽やかに山道を下ってく。思うに、ここでの生活が設楽の足腰を強靭にしてるんだろうなあ。俺もけっこう筋肉質なんよ?でもガタイが全然違うんだな。背丈も10センチ差だし。

設楽の首に抱きついて、いつもとは違う目線の景色を目にする。あーこんなとこにこんなもんが、そんでなんだか、空の高さまで見え方変わってくるねえ。すいません伊達さんのせいでこれが、何が俺のせいなん、背中で微妙に動くからオレのオノレが。マジかお前ほんっと直結してんなあ。

急に設楽が立ち止まった。俺をいったん地面に下ろして手を握ると、歩道から死角になった薮の中に突っ込んでいく。待ってどこ行くんよお前、この先にオレの設営テントがあるんです。何でこんなとこに!たまに星見に来たりするんです、そしたら目の前に小振りのテントが。

半ば押し切られる形で設楽と中に転がり込んで、潰されそうに抱き締められて、息継ぎ出来ないくらいの熱に意識を持ってかれそうになる。ご飯の前にちょっとだけユリ根でも何でも作りますから大丈夫、これちょっとって力じゃないじゃんおま十代か!俺の叫びも虚しくかき消されてく。

下半身だけスースーするやつ、そんなのなんだか久し振りすぎて却って初見みたいだな、御意。もはや何言ってんだかわかんないけど、人目気にせず手早くキモチイことする。俺と設楽のは、こんな感じ。



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