レゴ®︎シリアスプレイ®︎とクリティカル・シンキングの関係とは

 以前の記事で、「考える力」にレゴ®︎シリアスプレイ®︎を使えるかについて考察した。そこでは、「考える力」の中心は、自分ごととして学ぶ、主体的で責任ある学習となることにあった。それと並び、よく強調されるのが「クリティカル・シンキング」である。

 クリティカル・シンキングについては、少し検索すると実にさまざまな解説がでてくる。それらの差異をみながら、思い切って要約するならば、クリティカル・シンキングとは、物事の本質を見極める思考方法ということになるだろう。

 そして、その本質を見極めるためにポイントになるのが、①考える時に使う概念や問題の定義をより適切なものにすること、そして②その概念や前提から論理的に結論を導くこと、にある。

 なお、①については、(①ーA)問題をより明確に定義することと、本当にそれが問題なのか?と(①ーB)問題の前提も疑うことが重要だとされている。

 ②については、結論を支える証拠がより具体的なものであるだけでなく、(②ーA)より多くの選択肢をあげる(かぶりなく)ことと、それらを(②ーB)さまざまな観点からその選択肢の妥当性を検証することが重要だとされる。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎で「クリティカル・シンキング」を支援する

 以下では、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は「クリティカル・シンキング」を実現するのにどれくらい有効なのかを考えてみたい。

 まず、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は、問題を定義するということに強みを発揮する。人によって問題そのものの捉え方が異なりそうなあいまいな問題であればあるほど、レゴ®︎シリアスプレイ®︎を使うことが有効である。つまり、定義が難しい問題であればあるほど、①ーAについてレゴ®︎シリアスプレイ®︎は「クリティカル・シンキング」をするための支援ツールとなる。
 以下の記事の後半では、それについて指摘している。

 さらに、①ーB「問題の前提」を疑うということについても、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は役に立つ。

 「問題の前提」を疑うワークの流れの作り方について、より具体的な進め方の一例を示してみよう。
 まず「ある問題を6歳児にでもわかるように説明するためのモデル」を作らせる。そうすると、その作品は、その問題を構成する部分の集合体として表現されることになる。その上で、それぞれの部分について「それは本当に問題を構成している欠かせない部分表現なのか」を問うようにすればよい。

 もちろん、こうした思考はブロックを使わなくても考えることはできるだろうが、目に見える形で表現されていることで、より抜け落ち少なく検討できるのである。また、問題の前提を取り除いたり別の前提を入れて問題を見直すということがしやすいのも視覚的な情報を多く提供するブロック作品ならではである。

 また、思考の枠そのものが見えず(当たり前だと感じていることほど前提として意識できない)、なかなか前提を疑うのが難しいときにも、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は、有効な手段となる。以下の記事ではその方法について「アーキテクト思考」から論じている(アーキテクト思考も、広義の意味でのクリティカル・シンキングの一種であることがわかる)。

 さて、残る「クリティカル・シンキング」の要素である②ーAと②ーBについて考えてみよう。これらは共に、考えるときの切り口の多様さと、そこに出された情報の効率的な整理が重要であるという点で共通している。

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎で作品をつくってもらうと、自分が一番大事だと考えることがまず優先して現れてくる。繰り返しいくつもモデルを作ってもらうことはできるが、ワークの時間の制約を考えるとそこまで効率的ではない。逆に言えば、時間が十分にとれるのであれば、ブロックでの作品づくりはイマジネーションを引き出しやすいのでいろいろな発想を投入できる。

 むしろ、レゴ®︎シリアスプレイ®︎において、切り口の多様さの確保するなら、より多くの参加者にワークに参加してもらう方が確実である。参加者ごとの考え方の違いをしっかりと引き出せるのがレゴ®︎シリアスプレイ®︎の真骨頂だからである(以下の記事を参考)。

 出された情報を効率よく整理していくこと、その象徴ともいえるのが、MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive;もれなくダブりなく)であるが、そうした状態を保証する仕組みは、レゴ®︎シリアスプレイ®︎には組み込まれていない。
 したがって、この点については、ファシリテーター自身が「クリティカル・シンキング」を身につけ、そのエッセンスを反映した進行をすることが求められる

 また、分析に使うフレームワークが決まっている場合には、あらかじめテーブルに模造紙などを敷いて、そのフレームワークを書き込んでおき、その上に作品を配置してもらうなどの方法がとれればMECE状態を確保できる。以下の写真のように、フレームワーク上に文字ではなくモデルを置いて進める方法となる(以下はビジネスモデル・キャンパスのフレームワークとLSPとを掛け合わせたワークである。その良さについては、今後、改めて取り上げてみたい)。

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まとめ

 このように、「クリティカル・シンキング」に対し、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は問題の定義という側面において力を発揮する。
 情報の整理と分析、とりわけMECEが求められる場面においてはファシリテーターの力量次第になるものの、そこで利用するフレームワークが明確であれば「クリティカル・シンキング」の支援ツールとして役立つケースも少なくない。

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