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トランスフォーメーション・ビジネスをレゴ®︎シリアスプレイ®︎で支援する

 ハーバード・ビジネス・レビュー日本版の2022年7月号の特集タイトルは「顧客体験を変える」。その中で今後、有望な領域として「トランス・フォーメーション・ビジネス」があり、そのためのポイントを指摘する論文が掲載されている。

 「トランス・フォーメーション・ビジネス」とは、企業が消費者をパートナーとして扱い、対象者の生活の基本的な部分を改善し、「新しい自分」を実現するための後押しをするビジネスと定義される。単なる商品やサービスを通じて機能的価値を提供することとは一線を画す、より大きな変化をもたらすものとして位置付けられる。ダイエットのために、機能性食品を売るとか、運動器具を売るとかではなく、実際にダイエットが成功し、顧客の生活スタイルひいては人生が変わるようなレベルでの変化を支援するビジネスである(論文では取り上げられていないがライザップなどはその域にいるように思われる)。

顧客の願望を認識させ障壁を明らかにする

 この「トランス・フォーメーション・ビジネス」を手掛けるには、まず、顧客の人生における望みを深く理解しなければならない。その望みは、今のままではかなえられないことは顧客もわかっているので潜在的な願望として心の中に深く沈められていることになる。それを実現可能な目標として企業は顧客に認識させ、そのためのロードマップを描き、手段を提供しながらゴールまで伴走していくことになる。

 そのビジネスの扱う領域にも寄るだろうが、その顧客の人生における望みを掘り起こすことがまず、必要である。これに関して、人間の感情や記憶について深く内省させるために、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は役に立ちそうだ。同時に、望みだけでなく、現状はそれ以上に把握しなければならない。自身の現状についても、一歩離れて顧客に見つめてもらうことについてもレゴ®︎シリアスプレイ®︎のメソッドは使うことができるだろう。そして「望み」と「現状」の間に横たわるいくつかの障壁についても可視化することができるだろう。

 ただ、現状と望みとのギャップおよび障壁がモデルになって明確になったあとに、それらを一つ一つ乗り越えていくための方法(顧客が変化に向けて行動できるように)を、総合的かつ実践的に提供するには具体的な製品やサービスが必要になるだろう。顧客を製品やサービスへとスムーズに連結し、行動をモニタリングできるようにするためには、レゴ®︎シリアスプレイ®︎のファシリテーター単独では難しく、製品やサービスに詳しい伴走型コーチとタッグを組む必要がありそうだ。

現在の自分(左)と望む自分(右)とその間の障壁(中央)の展開イメージ例

「望む自分」がより根源的で魅力的であればあるほど、ワークの対話のなかで障壁はいくつも見つかってくるだろう。複数の障壁がどんな関係にあり、それぞれどのような対応が必要かについてもファシリテーターはワークの参加者に考えさせる。そこに製品やサービスに詳しい人がいればその人も巻き込んだ対話の場をつくることになるだろう。

ビジネス設計の素材を掘り起こす

 そのようなビジネス実行の環境設計が難しければ、「トランスフォーメーション・ビジネス」の全体設計するプロセスでレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを使う方法もありそうだ。
 論文では、その設計の際の顧客理解のために、顧客の「ジョブ(片付けるべき仕事)」を4つの観点から整理することが重要だとする。すなわち、①機能的ジョブ(達成したいゴール、避けられないタスク)、②情緒的ジョブ(高めたいと思う感情や弱めたいと思う感情)、③社会的ジョブ(他の人からどうみられたいか、どう他の人と関わりたいか)、④願望的ジョブ(なりたい自分や人生をかけて満たしたい価値)だという。これらのジョブのいずれの側面も、レゴ®︎シリアスプレイ®︎で問いを立てて掘り起こすことができる。その中でも感情や願望については、語りはもちろん、レゴ®︎ブロックでの表現(形や色)から得られる情報も多い。
 より多くの人からこの4側面を掘り出すリサーチ的なワークショップを行えば、「トランスフォーメーション・ビジネス」の設計のための素材をたくさん集めることが期待できる。

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