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THE GAZETTEを読む(3) 2012年12月号 レゴ®︎シリアスプレイ®︎の取り組みが、メキシコのビジネス文化に変化をもたらす

 本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンであるTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎のファシリテーター・トレーニング修了者向けとして書いている。
 この記事の引用元原文はこちらのPDFから読むことができる。

 今後12~18ヶ月の間に、レゴ®︎シリアスプレイ®︎(LSP)メソッドは、2000以上のメキシコの企業のビジネスツールキットに不可欠な要素となります。このビジネスパフォーマンス向上のための大規模な投資は、経済長官を通じてメキシコ政府によって支援されています。
 メキシコでは、零細企業、中小企業を支援することが、健全で持続可能な経済を作るための基本であると考えています。この包括的な経済開発プログラムの戦略的要素として、メキシコ全土に配置されたメキシコ・エンパブリック・センター(MECs)のネットワークがあります。MECは、中小企業や起業家に融資、助言プログラム、研修、コンサルティングサービスを提供し、より良い経営を行う企業やより良い雇用を創出することを目的に、ワンストップショッピングを提供しています。
 メキシコには400万以上の零細・中小企業があり、全企業の99.8%を占め、78.5%の雇用を創出し、国民総生産の52%をもたらしています。MECが支援するのは、こうした企業です。
 MECは、メキシコのビジネスコミュニティにレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを導入するためのインフラを提供することになりました。

THE GAZETTE 2012年12月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 この号はレゴ®︎シリアスプレイ®︎の世界的な広がりについての紹介が中心となっている。メキシコ政府がバックアップするプロジェクトになったというのは驚きである。

 革新的なツールを身近なものに

 メキシコでは、グーグルやケロッグのような国際的に成功している大企業が、すでに「レゴ・シリアスプレイ・メソドロジー」を戦略立案や意思決定に活用しています。中小企業はこの革新的なツールに気づいていないのです。
 このような状況から、最終的にグローバル・マネジャーズと、経済長官と連携する中間組織であるEspacio Empresarial SA de CVが協力し、「金持ちや有名人」(GoogleやKellogggなど)のツールや戦略を一般の中小企業にも利用できるようにして、LSP手法を使用して中小企業の成功を支援する総合プログラムを設計・提示することになったのです。

THE GAZETTE 2012年12月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 大企業では潤沢な資金があり、それだけにレゴ®︎シリアスプレイ®︎の導入もチャレンジしやすい。しかし、本当にそのツールを必要としているのは中小企業であるというのは日本でも同じだと考えられる。
 大企業よりも中小企業の方が環境の変化から受ける影響は大きく、環境変化を察知して、より素早くビジネスの重心や自社の立ち位置を転換していく必要がある。そのためにリアルタイム・ストラテジーというプログラムがあるが、少なくとも2日間ほど時間を要するため、コスト的に中小企業はその実施を躊躇する傾向にある。そこを政府として支援しようという狙いということだ。

 上記の文章には、以下のような写真(Youtubeビデオへのリンクだが、現在は非公開になっている)とキャプションも添えられている。

 Juego SerioとLucio Margulisを代表するメキシコのコンサルタント会社Global Managersが2011年から2012年にかけてシカゴとメキシコシティで行った3回の会議とLSPワークショップを通じて、経済長官にLucio MargulisによるLSP手法が紹介されたのです。

 Lucio Margulisは、世界の数少ないファシリテーター養成トレーナーである。トレーナーとしての力もさることながら、経済長官にレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを紹介する機会を作ったということに刮目させられる。1年近くかけて複数回、見せていることもこの文章から分かる。相手にレゴ®︎シリアスプレイ®︎を理解してもらうためには、それだけの周到な準備と努力が必要なのだと強く感じさせられる。

 2012年8月、このプログラムは承認され、実施へとうつることができました。2012年12月3日までに、100名のファシリテーターを養成するプログラムの第一段階を終了しました。
 ファシリテーター・トレーニングは、Robert Rasmussenと共同トレーナーのLucio Margulisが担当しました。ラスムセン・コンサルティングは、4日間のトレーニングプログラムを4回実施したほか、トレーニングを受けたファシリテーター全員にトレーニング教材とビジネスコンサルティングの「スターターキット」を提供するための物流と発送も担当しました。

THE GAZETTE 2012年12月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 2000社を対象としたプログラム

 また、メキシコ政府は、新たに研修を受けたファシリテーターが、エンプレンデ・センターが支援する中小企業を対象に、4時間のLSPワークショップを4回開催する費用を負担しています。各ワークショップには、少なくとも5社の代表者が参加します(参加は1社につき2名まで)。現時点では、新しいLSPファシリテーターはすでに50社以上で4時間のワークショップを終えており、年末までには約100社に到達する見込みです。フェイスブックでその事例を見ることができます
 「2000社プログラム」の終了後、Grobal Manager社とEspacio Empresarial社は、コンサルタントがレゴ®︎シリアスプレイ®︎の方法論のトレーニングと経験を積んだファシリテーターのネットワークを作り、メキシコ中の多くの企業がLSPツールを使って創造性と戦略立案、問題解決能力を向上できるよう支援します。

THE GAZETTE 2012年12月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 トレーニング終了後にすぐに実践の場が用意されているということは、本当に恵まれている。私も別の機会に4日間のトレーニングを受けたが、4日間は手法と背景知識、参加者として各種の標準プログラムを体験するところまでが精一杯で(それだけのボリュームがある研修となっている)。4時間のワークショップをそつなく行うには、トレーニング修了者が、そこから練習・実践の場を数多く持ってファシリテーション・スキルを上げていく必要がある。
 つまり、ファシリテーター同士のスキル向上のためのネットワークと支援体制が非常に重要となる。この10年の間にレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドはより深くかつパワフルになったが、同時にそれを吸収するための支援の必要性はますます高まっている。

 ちなみに上記の引用文にあるフェイスブックのリンクを踏むと、承認制のコミュニティへとつながる。参加しないと投稿内容は見れないが、コミュニティの概要では、700人近くのメンバーがいることが確認できる。グループ名も地域は「メキシコ」ではなく、「ラテンアメリカ」となっていることから、着実にネットワークが広がっていることがうかがえる。ちなみに日本のフェイスブックのコミュニティメンバーは700人を超えていて、ラテンアメリカ地域以上のコミュニティとなっている。

 この記事の脇に、以下のような写真とメッセージがある。

考え、問題解決し、意思決定し、互いを尊重し合いながら仕事をするLSPモードは、メキシコのビジネス文化に1社ずつ徐々に浸透しています。

 上記の写真には「他の事例を見る」と文字が重ねてあるが、バックナンバーからは残念ながらリンク切れになっている。

 本号について読み、メキシコでのプロジェクトのようなことを日本でも起こせたらと想像すると興奮と心配が混ざったなんともいえない感情がわいてくる。いざ、そのような機会が巡ってきたときには、確実に、大きな成果を生み出すワークショップを提供できる体制をしっかりと整えておくことが求められるからである。そして今回の事例の規模になれば、それは一人ではなく、レゴ®︎シリアスプレイ®︎のコミュニティに属するファシリテーターのチームで成し遂げなければならない。
 コミュニティ・オブ・プラクティスと、そのマネジメントについて理解し、実践することの必要性を、コミュニティの一員として感じさせられている。


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