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THE GAZETTEを読む(39)2020年4月号今こそイマジネーションが必要だ

 本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎(LSP)のファシリテーター・トレーニング修了者向けに書いている。
 この記事の引用元原文はこちらのURLから確認することができる。

 Harvard Business Reviewの4月号では、パンデミックや戦争などの社会的危機が、しばしば新しい態度、ニーズ、行動を生み出し、それを管理する必要があるという記事が掲載されています。
 著者達は、イマジネーションーつまりまだ存在していない物事や状況のメンタルモデルを創造し、進化させ、活用する能力ーこそが、新しい機会を捉え、創造し、成長への新しい道筋を見出すための重要な要因であると考えています。そのような企業は、大きな価値を得ることができるのです。不況期や景気後退期に、歴史的にも競争的にも突出している14%の企業は、新しい成長分野に投資していると指摘しています。例えば、アップルが最初のiPodを発売した2001年は、米国経済が不況に見舞われ、同社の総収入が33%減少したのと同じ年です。

THE GAZETTE 2020年4月号をDeepLで翻訳・筆者が修正

 この2020年4月号(実際には4/5月号)に掲載されていた論文がどれであるかは特定できなかったが、「予期しない出来事」への対応はもう20年以上、企業が抱える重要課題であり続けている。「予期しない」という表現が表しているように、事前に具体的な対策を用意しておくことには限界がある。
 予期しないとはいっても、地震や台風などの災害のように、ある程度の幅の変化で繰り返し発生しているものは計画にもっていきやすいが、未経験であったり十分な情報を前もって収集しておけないことには対応がしにくい。したがって、そこでの対応策は前もっての「対応計画」ではなく、状況に直面した時の「思考の切り替え」の技術となる。その思考の切り替えに重要な影響を及ぼすのが今回のキーワードである「イマジネーション」である。

適応するのではなく、形にする


 イマジネーションは、プレッシャーの中で生き続けることが最も難しいものの一つでもあります。しかし、イマジネーションがあれば、単に新しい環境に適応するだけではありません。新しい環境に適応するだけでなく、それを形作り、新たな機会を生み出すことができるのです。
 レゴ・グループの創業者であるOle Kirk Christiansen(オーレ・カーク・クリスチャンセン)は、デンマークの小さな町で大工として働いていました。1932年、彼は木材を使った製品を作る会社を設立し、はしごやアイロン台を販売することで主な現金収入を得ていました。しかし、30年代の危機的状況下で、需要は激減しました。
 Ole Kirk Christiansenは、自分のビジネスを救う方法を考えなければなりませんでした。そして、経済的に厳しい時期でも、木のおもちゃの需要は安定していることに気づき、それに乗り出しました。

THE GAZETTE 2020年4月号をDeepLで翻訳・筆者が修正

 冒頭の「イマジネーションは、プレッシャーの中で生き続けることが最も難しいものの一つ」という指摘はよく覚えておかねばならない。苦境に立てば立つほどイマジネーションを働かせていくことが難しくなる。
 経営者がイマジネーションに溢れ、ストレスをものともしない特質を持った人間であるか(皆がスティーブ・ジョブズだったら話は早い)。苦境の中であえてプレッシャーのかかりにくい場を作るか(レゴ®︎シリアスプレイ®︎のピンポイントでの導入はこれに直接寄与する)、平時からイマジネーションを発揮する機会を持ち続けてストレスに身を慣らしておくかである(組織文化づくり。レゴ®︎シリアスプレイ®︎の継続的導入はこれに寄与できるだろう)。

 なお文中で登場するOle Kirk Christiansenを創始とするレゴ社の初期の物語は、以下のYoutubeビデオで見ることができる。同時翻訳の字幕機能を使えば日本語訳もつけて見ることができる。

イマジネーションを未来につなげよう


 イマジネーションとは、まだそこにないものを見る力です。イマジネーションを働かせるには、3つの方法があります。1932年当時、Ole Kirk Christiansen
は3つの方向から想像力を働かせることができました。
I:大工仕事、木材、同じ製品にこだわり、より競争力を高める方法を想像する
II:大工仕事と木材にこだわり、新製品と新市場を想像する。
III: 今あるものをすべて捨てて、まったく新しいビジネスの方向を想像する。
 多くの企業がそうであるように、プレッシャーがかかると、安全で快適な I のアプローチに集中したくなるものです。というのも、安全で、自分たちのコンフォートゾーンの中にあるからです。II や III に飛び込むには、より多くの努力やリスクを必要とします。しかし、世界が大きく変化するときこそ、新しいチャンスが生まれるときであり、そのチャンスを生かすには、II と III のイマジネーションを働かせるしかないのです。

THE GAZETTE 2020年4月号をDeepLで翻訳・筆者が修正

 Ole Kirk Christiansenによるレゴ社の事例はこの3つの段階のイマジネーションの切り替えにピッタリと当てはまっている。

 イマジネーションを活用したワークショップを展開するために3つのタイプのイマジネーションをうまく使って参加者の思考の切り替えを助けることが必要だ。特に横のコラムに書かれていることは、ワークショップのクオリティを高めるためのヒントを示している。

人間は、自分の好きなイマジネーションのアプローチを持っている傾向があります。ですから、「イマジネーションを働かせなさい」と言われたとき、それは通常、I、II、IIIのいずれかを意味し、そのすべてを意味するわけではありません。多様なイマジネーション・アプローチを持つチームを持つことが成功の鍵なのです。

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上記の文に添えられていた写真

 このコラムでは2つのことが示されている。参加者のイマジネーションの癖をみてファシリテートすることと、ファシリテーターが参加者に指示を出すときにどの種のイマジネーションを要求しているのかをしっかりと伝えることである。この2つがワークショップのクオリティを引き上げる大きな鍵となっている。

組織のイマジネーションを維持するために


 ハーバード・ビジネス・レビュー誌の記事では、組織のイマジネーションを高めるための7つの実践方法が紹介されています。そのうちのひとつが、「遊び心」を持つことです。
 私たちの著書『Building a Better Business Using the LEGO SERIOUS PLAY Method』では、イマジネーションを発揮して漸進的イノベーションと根本的イノベーションの両方を生み出すさまざまな方法について、より深く掘り下げて説明しています。

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 文中の「漸進的イノベーション」と「根本的イノベーション」はそれぞれ前者が主に Ⅰ を使って進むのに対し、後者がⅡもしくはⅢを使って進められると考えることができる。これに関する詳細な議論については『Building a Better Business Using the LEGO SERIOUS PLAY Method』の第9章で扱われているのでぜひ読んでおきたい。

 「遊び心」とレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関連については以下のNoteにも書いているのでよければ読んでみていただければ幸いである。


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