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THE GAZETTEを読む(43)2021年2月号 リモートミーティング2.0

 本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎(LSP)のファシリテーター・トレーニング修了者向けに書いている。
 この記事の引用元原文はこちらのURLから確認することができる。

 必要性は発明の母であり、私たちに物事の進め方を再考し、再構築する機会を与えてくれます。新型コロナがもたらした結果の一つは、対面での集まりが一時的に崩壊したことです。私たちは、リモートミーティングに埋没してしまったのです。ほとんどの人が、会議のやり方を変えようとは全く考えずに、ただ遠隔地に会議を移しているように見えます。これは、私たちがいかに会議に参加する人たちを有効活用するかということを考えず、同時に人々のやる気をなくさせるかを嘆いていることの証左かもしれません。

THE GAZETTE 2021年2月号をDeepLで翻訳・筆者が修正

 ここに書かれているように、新型コロナが本当にもたらしたのは「対面会議ができなくなった→リモートに切り替え」ではなく、会議のあり方(会議はどうあれば良いのか)を見直す機会とという見解に私も賛成だ。だから、コロナを契機に強くなった組織も少なからず存在すると思われる。みなさんの所属する組織・集団はどうだろうか。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎はブロック以上のもの

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドをオンラインでうまく使えるケースは限られていますが、このメソッドの威力は、同じ部屋にいる人々と協力して、チームの洞察、アイデア、人間関係を発展させることにあります。
 LSPファシリテーターであるRichard Gold氏は、遠隔地でのレゴ®︎シリアスプレイ®︎(LSP)を使った介入に焦点を当てるのではなく、このメソッドの基本原則をいくつか抽出し、それを遠隔地のミーティングやワークショップ用に再構築し、その作業に最適なツールを使用するにはどうすればよいかを検討しています。このようなプレイフル原則は、物理的に距離のある世界において、どのように会議をデザインし、提供するかを考える上で役立つのではないでしょうか。
- プレイフルで、生産的で、独創性がある。
- 会議疲れに対する解毒剤となる。
- 遠隔地であろうとなかろうと、「ニューノーマル」のためのミーティングのデザインとファシリテーションのスキルがある。

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 先程の会議に関する見直しと同じように、コロナ禍はレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドのあり方を見直す良い機会でもあったといえるだろう。その見直しは、LSPで使う道具やプロセスではなく、その底に眠る「あるべき状態」をより抽象化することによって得られる。プレイフル原則(Playful Principles)である。
 こうした抽象化によるアプローチは今回の話題に限らず、ある困難にぶつかった時に組織がそれをどう乗り越えるかの指針を導くワークショップの基本設計にも応用できそうだ。例えば、資金難や生徒募集がうまくいっていない学校の改革であれば「学びの原則」に立ちもどる問いを投げるということである。

プレイフル原則 - ブロックを使わずに

 Richard氏は、レゴ®︎シリアスプレイ®︎の基本原則として挙げた十数個の原則は、コラボレーションが必要なすべての会議に適用できるし、適用すべきであると主張しています。
 例えば、100/100の参加、話す前に常に考える時間を持つ、全員がほぼ同じ「発言時間」を得る、すべての対話は(モデルで表現された)アイデアについて行われる、手を使って考える、目で聞く、などです。

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 ここで紹介されている十数個の原則は14個で以下のLinked Inの記事にまとめられている。

 ここでは14個のプレイフル原則のリストをあげておく。

  1. 100/100の参加

  2. 手で考える

  3. 目で聞く

  4. ほぼ同じ発言時間にする

  5. 考える時間をとる

  6. 心理的安全性を確保する

  7. アイデアを持ち込んだ人ではなく、アイデアについての対話をする

  8. 強いアイデア、軽い気持ちで

  9. 「十分に不明瞭」な問い

  10. 今ここに集中する(フローの回廊をのぼる)

  11. ストーリーテリングで感情的なつながりがでる

  12. システム的に思考し、創発を伴うように活動をする

  13. 成果へのコミットメントへと導く

  14. 会議のトピック以上のことを得ようとする

 実際にブロックを使わずとも、これらのプレイフル原則に沿うように会議をデザインしていけば機能するというわけである。
 このうち「2.手で考える」「3.目で聞く」「8.強いアイデア、軽い気持ちで」が少しわかりにくいかもしれない。「2.手で考える」は椅子に座り続けず身体を動かすことで参加者に刺激を与えるということで、「3.目で聞く」は耳だけでなく、視覚(ノンバーバルな側面ともいえる)も使ってコミュニケーションのやり取りをしようということである。「8.強いアイデア、軽い気持ちで」は、アイデアをどんどんぶつけるが、それに固執したり他を排除するのではなく、他の人と組み合わせたりしながら、できるだけ全てのアイデアを活かすように考えていくことを大事にするということである。
 みなさんはレゴブロックを使わずにどのくらいの項目を意識して会議をファシリテーションできるだろうか。もちろん、ブロックを使った標準的なレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを使ったワークショップにおけるファシリテーションのチェックリストとしても使うのもよいだろう。

20/80ミーティングから100/100ミーティングへ

 例えば、100/100の原則を実現するために、Richard氏は、うまく進行されたLSPワークショップには、考え、反応し、聞き、探求するというエンゲージメントのリズムがあると指摘しています。そこで彼は、数分ごとに全員が何らかの関与をするよう計画し、それを期待させることを勧めています(実際、Zoomの調査によると、8分ごとに参加者に何かをさせないと、参加者が離れていってしまうという)。彼は、全員が終始考え、反応し、耳を傾けるべきだと主張し、より長くなる項目は一連のやる事と質問で構成されるようにすべきだとしています。

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 上記の太字になっている「100/100の原則」については、以下のページへのリンクが貼られている。こちらもブラウザの翻訳機能があれば簡易訳を読むことができる。

 ページ先では、100/100ミーティングと20/80ミーティングでは理解がしにくい人のために「リーンバックワードミーティング」と「リーンフォワードミーティング」という2つのコンセプトが紹介されている。
 日本語訳を当てはめれば、それぞれ「ふんぞり会議」と「前のめり会議」という感じだろうか。これらについても、実現したい会議のイメージをわかせる言葉として有効なので、上手く使って目指すべき会議の状態を活き活きと語れるようにしたいところである。

 非常に興味深い点が「8分ごとに参加者に何かをさせないと、参加者が離れていってしまう」という点で、ファシリテーターによる説明や解説は、連続で長くても5分程度に抑える気持ちでむかう、と心掛けておくべきだろう。また、一つに長く時間をかけすぎず、同時にそれぞれのしていることに関連性を持たせる、というのもワークショップ・デザインに大いに参考になる点だといえるだろう。

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