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「タワーを立てる」を巡る学び レゴ®︎シリアスプレイ®︎

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークにスムーズに入ってもらうために「タワーを立てる」というワークが定番で行われる。

 この「タワーを立てる」というワークは、単純そうに見えて実際に単純なのであるが、学びの源泉としては、かなり豊かなワークである。

 まず、皆にタワーを建てさせてみると、同じブロックを使っていても間違いなく異なるタワーのデザインになることがある。これはレゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークショップに参加した人ならわかると思うが、「違う」もみなさんの想像以上に違うデザインになる。

 上記のワークから、他らなぬ私たちの存在そのものがナチュラルに多様性の源泉であること(逆にいえば同じような意見しか出てこないとしたら相当に文化的な同調圧力が作られているということ)、私たちはお互いのことを分かっているようで実は分かっていないこともそこから学ぶことができる。

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 さらに、他の人と比較することで、より自分自身独自の感覚が浮き彫りになる。それに関するよくある自分の感覚の気づきとしては、「高く作りたい」「かわいい感じを大事にする」「左右対称につくりたい」「色合いを統一したい」「安定感が好き」などがある。もちろんこれはほんの一例なので、もっと他のパターンもある。

 他の人の作品を褒め合ってもいい。それによって、自分と他者の感覚の差を浮き彫りにできるからだ。自分がそんなに評価しないところを意外と他者は評価してくれるものだ。そこから、自分で価値を決めることの良し悪しを考えると面白いだろう。

 さらに他の人と一緒にグループを組み、それぞれ作品を寄せ合ってみるのも楽しい。ちょっとした都市風景が浮かび上がる。どのような配置が面白かったりハイセンスと感じるだろうか。大事なのはなぜそれが面白いのか、ハイセンスと感じるかである。自身の感覚を言語化することは、その感覚をさらに磨いたり発展させる礎になる。

 一旦崩して、繰り返し作ることも学びの源泉になる。1回目と2回目では違うものができる。なぜその違いがでたのか、確認してお互いに気持ちを説明し合ったりするのがいい。無意識のうちに他の人の影響を受けていたり、前回の自分自身の作品が今回の作品のもとになっていることがわかるかもしれない。それは「学び」とは何なのか、どうやって起こるのかを考えるための格好の材料となる。

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎のメソッドではないが、チームでひとつのタワー作りに取り組むのも学びの源泉になる。実施時に制限時間を設けてもよい。大事なのは終わった後の振り返りである。「チームワークとは」「個人と集団とどちらが良い結果を出しやすいか」など問いかけてみよう。

 「タワーを立てる」というワークは単純な取り組みだが、いろいろな展開の引き出しがある。中学や高校の授業など40分〜50分で一区切りになる環境下でも(本来ならば2つ、3つと連続で時間を確保する方がいいが)、参加者の気づきや考えるための機会をたくさん提供できる。

 このように「タワーを立てる」にしぼることで、敷居を低くすることもできる。多くの人に学びの楽しさを提供するための手段の一つとしてもいいのではないかと私自身は、考えている。

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