マインドセット論を意識したレゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークの組み立て方・進め方とは

 あらゆる状況に対して準備のできている人はいない。そして、想定しないあらゆる状況が起こりうるのが現代の社会である。いや、昔から変わらずそうだったのかもしれない。

 そんな状況の中で私たちが生き残っていく一つの条件は、学び成長し続けることである。そのためには人間の能力に対する心構えが大事だと指摘した本が以下の『マインドセット「やればできる!」の研究』である。

 著者のドゥエックによれば、能力に対する心構えは大きく2つに分けられるという。

 一つは「硬直マインドセット(fixed mindset)」と呼ばれる。このマインドセットをもつひとは、人間の能力は固定されたものとして見る。能力は固定されていると考えているので自分よりも結果を出していない人に対して優越感をもつ。自分の能力の限界を知るような失敗をすると絶望的な気持ちになる。その一方、能力は固定されているので努力はしない。気を紛らわすために自分よりも下の人を探し、その人との比較の中で優越感に浸る

 もう一つは「しなやかマインドセット(growth mindset)」と呼ばれる。このマインドセットをもつひとは、人間の能力は伸ばせるものとして見る。能力は伸ばせるものと考えているので、自分よりも結果を出していない人を励ます。自分の能力の限界を知るような失敗をしたときには、それを克服しようと努力する。うまくいかなくても、他の成功した人との比較の中で良いものは自分に取り入れようとする

 上記の説明からもわかるように、「硬直マインドセット」と「しなやかマインドセット」では成長の度合いが異なる。「しなやかマインドセット」のほうが圧倒的に成長するのである。

 ここまで読めば誰も「硬直マインドセット」にはなりたくないと考えるだろう。そのときは、自分がどちらのマインドセットであるかに気づくことが大事だドゥエックは述べている。それは例えば、以下のような質問である程度あきらかにできるという。

・人から冷たい仕打ちを受けたときの自分の反応や対応はどうだったか。
・どのような人と一緒に過ごしていたいか。
・引っ込み思案になるときはどのような理由でそうなるのか。

 いずれも診断のポイントは「他者から高い評価を受けたい」「能力を称賛されたい」という気持ちがそこにどれだけ強く絡んでいるかということである。

マインドセット論からレゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークへの示唆

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークの中においても「硬直マインドセット」の人と「しなやかマインドセット」の人が混在していると想定するのが普通であろう。そして「しなやかマインドセット」の人であれば、さまざまな問いと対話の中で自分を成長させていこうとするために、ワークは非常にやりやすくかつ建設的になるはずだ。

 問題は「硬直マインドセット」の人である。まずファシリテーターは参加者の会話に耳を傾け、「硬直マインドセット」を持つ人の存在に気づくことから始めなければならない。「上手につくれる/つくれない」に敏感になっている人は要注意だ。

 その人に対してはどうすればいいのだろうか。ドゥエックによれば「硬直マインドセット」の人も、少しずつではあるが変えられる。

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークに即して言えば、まずは「優劣や才能の値踏みの場」からその人を解放することである。わかりやすい対策としてはワークの進行にあたって「この場は他の人に向けて自慢できるような素晴らしい作品を見せる場ではありません」と言ってしまうことだ(私の尊敬するベテランファシリテーターが、そのようなスライドをわざわざ入れていたのを思い出した!)。

 また、ファシリテーター自身が、作品の作り方の技術的な巧みさに着目したり言及しないようにすることだ(私も過去を振り返ってついやってしまったときもあると思ったが、マインドセット論からいうと百害あって一利なし)。大切にすべきは、作品に込めた意味であり、そこから語られるストーリーを受け止める(評価せず、傾聴する)ことである。

 また、問いの立て方にも注意を払いたい。自己や他者の評価や判断を求めるような問いは話し手の「硬直マインドセット」を過度に刺激してしまうかもしれない。もし、それを問うにしても、そこからの成長やプロセスの改善を探求する問いと必ずセットにしておくべきである

 ただ、成長や改善も目に見えるほどになるには時間がかかることも確かである。ドゥエックは成長やプロセス改善を求めるだけでなく、実際に行動を起こすことが大事だという。

 この点に関して、レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークでは(多くのワークショップに共通しているともいえるが)、その場で行動をさせることはなかなか難しい。作品の中で大きく成長を描かせると共に、ベイビーステップの表現・宣言につないでいくことが大事になってくるといえるだろう。

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