THE GAZETTEを読む(13)2015年1月号 信頼の溝を埋める
本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎のファシリテーター・トレーニング修了者向けに書いている。
この記事の引用元原文はこちらのPDFから読むことができる。
今号のテーマは「信頼」である。この「信頼」という概念はなかなか複雑で人によってイメージが異なるため、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを使ったワークショップでもときどき、問いの一つとして使われることがある。
ここではビジネスにおける「信頼」の重要性を調査データから述べている。
最近のデータがないかと少しWeb検索をしたところ、以下のようなページがヒットした。
上記では「信頼」を築くための要因に「データ保護やサイバーセキュリティ」が強く強調されるなど、時代の変化によって変わっている部分もあるだろうが、ビジネスにおいて「信頼」が重要であることは全く変わっていない。「信頼」は「ブランド」や「社会的責任」などとも関わってくる企業における中心的な概念であるだけでなく、集団形成・人間関係の基盤でもあるので、あらゆるワークショップにおいて常に意識しておきたいキーワードである。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎で信頼について理解する
600名以上の回答を、しかもモデルという方法で集めたということに驚きを隠せない。これをベースに要素分析をしたら大変貴重な調査になるのではないだろうか。同じようにイメージの傾向が読みにくい重要なキーワードについて多くのモデルを作ってもらい、そこにでてきた表現を分析するという方法は調査研究の一つのパターンとして有効そうだ(同時に集めた情報をデータベースにする作業を想像するだけで気が滅入ってしまうが)。
Q1~Q3のそれぞれの問いに対する調査結果の概要がまとめられている。このうち、credibilityという単語が出てきており、今回は「信用」と訳した。trustの訳語の「信頼」と非常に似ているが、Web辞書によれば、credibilityは素質や人間性と絡められる言葉ということである。
上記の答えに合わせて横のコラムでは以下のように「信頼」モデルの写真にコメントが添えられている。
信頼の溝を埋めるには
レゴ®︎シリアスプレイ®︎をすることそれ自体が、信頼関係を深めるという主張は私も大いに同意する。他者とのやりとりのなかで、お互いを受け入れ合えないのではないかという不安をレゴ®︎シリアスプレイ®︎では徹底的に排除するようにコア・プロセスが設計されているからである。
私はレゴ®︎シリアスプレイ®︎には、いくつもの教育効果があると普段から強く感じているが、その一つがお互いに信頼を構築しやすいコミュニケーションの取り方をプロセスに従って学べることである。
まずは自分の意見をわかりやすく整えたうえで(モデル作りに相当)話すこと、一人一人平等に時間をとって話を聞き、その人ではなく語られたアイデアに対して質問をすること(全員がモデルを見て対話することに相当)などは、少なくともそのテーマで話している間はそのアイデアそのものを否定しない(モデルをテーブルから取り除かない)こと、などは、まさに理想的な信頼を積み上げるコミュニケーションである。
検証はしていないが、レゴ®︎シリアスプレイ®︎を数回体験したのちには、学生たちの普段の話し合いは信頼を構築しやすいものに変わっていくと感じている。
テーマを掲げて、それについて考えを深めたり問題を解決する方向性を見極めるという点もワークショップでは当然重要であるが、レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークショップでは、それに加えて参加者間に信頼関係を構築でき、メタ的に振り返りを入れればコミュニケーションの取り方にも変化を与えられる。まさに一石三鳥のメソッドだといえるだろう。