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THE GAZETTEを読む(4) 2013年2月号 5つの世代の知恵を結集させることを助ける

本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンであるTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎のファシリテーター・トレーニング修了者向けとして書いている。
 この記事の引用元原文はこちらのPDFから読むことができる。

 『2020年の職場』の共著者であるJeanne Meisterは、「私たちはまもなく5つの世代を同時に職場に抱えることになるでしょう」と述べています。なぜなら、職場に関する研究により、労働者の各世代は特定の仕事上の嗜好や個人の価値観を持っていることが明らかになったからです。フォーブス誌の記事によると、世代間の嗜好は労働者が交流するために必要なツールや慣習に影響を与えるということです。現在の多世代が混在する環境は、多様性という大きな課題を提示しています。Meister によると、米国の労働者の年齢の中央値は36.7歳です。中国やインドなどの新興国では労働者の年齢の中央値は26歳に近いといわれています。

THE GAZETTE 2013年2月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 私たちが日頃から触れるテクノロジーの変化は、その間に育った世代の感覚を変えていく。日本でも、1980年代にはテレビゲームが、1990年代にはインターネットが、2000年代からは携帯電話・デジカメ・携帯メールが、2010年代にはスマートフォンやiPad、さまざまなSNSが、その時代に生まれ育った人たちの生活習慣や価値観を形成していると感じる(私自身、その影響を詳細に研究したわけではないが何か影響はあるだろうと強く感じている)。主流なテクノロジーが10年単位で変化すれば、世代間の差が大きくなるのは必然ともいえる。
 レゴ®︎シリアスプレイ®︎がその差を埋めるとともに、逆に多様性から創造性やパワーを引き出すという考えは、現在でもワークショップ設計や企画提案にとって有効な観点でありつづけている。

ミレニアル世代とは

 Y世代は、ミレニアル世代とも呼ばれ、X世代に続いて労働市場に参入する人口層である。ミレニアル世代は、1980年代初頭から2000年代初頭までに生まれた人々である。
 2015年までに、このミレニアル世代の最年長は35歳になる。中間管理職のポジションに就く人もいれば、エグゼクティブ・リーダーシップ・チームのメンバーになる人もいるでしょう。ミレニアル世代は、コラボレーションツールの使用を推奨する職場環境を期待しています。そして、ミレニアル世代は顔を合わせての交流を大切にし、知識が共有され、テンポが速く、新しいアイデアがオープンに求められるオープンで信頼できる仕事上のコミュニティを求めます。
 ミレニアル世代が世界を動かしている10年、20年後には、LSPやその他のコラボレーションをサポートするツールは一般的になっていることでしょう。革新的な企業は、この新しいトレンドに先手を打つことを望むでしょう。今日の職場でLSPを使用することは、多世代のチームが互いの視点や考え方を大切にすることを学ぶのに役立ちます。さらに、ベテランの社員が新世代のリーダーを巻き込み、指導し、自信をつけさせ、その洞察力を評価することもできます。

THE GAZETTE 2013年2月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 ここでの記述は、主にアメリカを中心とした世代論であると思われる。日本についてはどうだろうかということで検索したところ、以下の記事にあたった。

 上記の記事の分析においては、Y世代とミレニアル世代を区分している。日本のY世代は「おおむね1970年代後半から80年代半ば生まれの世代」と位置付けられている。インターネットの影響を受けつつ、就職氷河期も経験してロスジェネともいわれた世代になるという。厳しい環境を生き残るために自分という個を重視する傾向があるようだ。
 一方、日本のミレニアル世代は「1980年代半ばから90年代半ばに生まれ」と上記の記事では位置付けられている。「ゆとり教育」の世代ともされ、つながりや空気読みが重視される世代だという。
 そして上記記事では、THE GAZETTEの記事では触れられていない(10年前の記事なので当然ではある)、「1990年代半ばから2000年代半ばくらいまでに生まれた層」としてのZ世代にも言及がある。スマートフォンが当たり前にある世界で、さまざまなSNSとYoutubeに代表される動画に浸かった世代で、顔を知らない人とでも交流することに抵抗がない世代のようである。また、2011年の東日本大震災をはじめ、気候変動による風水害、近年のコロナ禍までさまざまな災禍が連続して襲ってきている時代で育ってもいる。
 組織全体に目を向ければ、さらにY世代の上に働き盛りのX世代(1960年代後半から1970年代前半までぐらいに生まれた)と会社の重鎮であるシニア世代(1960年代前半より前に生まれた世代)がいるわけなので、THE GAZETTEの記事通り、まさに組織は5層構造である。そして改めてそれぞれの世代で起こってきたことを概観すると、日本では海外よりもその断絶がより強いのかもしれない。

 この記事の横のコラムには、まとめ的に以下のような写真とコメントが添えられている。

ミレニアル世代は職場環境がコラボレーションツールの使用を奨励することを期待しています。そして、ミレニアル世代は顔を合わせての交流を大切にし、知識が共有されるオープンで信頼できるワークコミュニティを求めます。

 ここで示されているように、日本においても、ミレニアル世代の世界観そしてZ世代の世界観とレゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークが作る世界観は重なるのかもしれない。そして、上記の世代論があっているとすれば、お互いの結びつき方の表現は、Y世代はAT3 ランドスケープ、ミレニアル世代はAT2 共有モデル、Z世代はAT4~5 コネクション/システムが感覚的に合うのかもしれない。
 もちろん、これはあくまで世代論とその感覚をレゴ®︎シリアスプレイ®︎の応用テクニック(AT)と重ねてみただけであり、Y世代に使うのはAT3に限定するということはない。目的や狙いに応じて適切な応用テクニックを使い、参加者は安全にそのプレイから学べるのがレゴ®︎シリアスプレイ®︎の真価である。

職場の外で世代間の理解を深める

 また、ここ数年、同じ家族の中で世代を超えてLSPを利用することへの関心も高まっています。

THE GAZETTE 2013年2月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 ここからは事例が2つ紹介される。

事例1:目的志向のリーダーシップに特化した年次会議であるLeadership Forum of Silver Bayのオープニングセッションでは、レゴ®︎シリアスプレイ®︎という方法が効果的に使われました。参加者は、60代から70代のシニア男性経営者が中心で、家族全員でフォーラムに参加しました。そのため、LSPのワークショップには、同じ家族の複数の世代が参加しました。その中で、"私にとってのリーダーシップとは何か "を考えるという課題が出されました。この質問は、年齢に関係なく参加者全員が答えられるように、意図的にオープンエンドにしたものです。プログラム終了後、エグゼクティブたちは、奥さんや子どもたちの知恵や洞察力に驚いたというエピソードを次々と披露してくれました。(LSPを使うまで気づかなかったのは、少し残念なことなのですが!)

THE GAZETTE 2013年2月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 ここでは「リーダーシップ・フォーラム」という枠組みであるが、同じようなプログラムで、家族経営の事業承継問題にアプローチすることにも使えるかもしれない。

事例2:才能ある子供とその両親のためのサマーキャンプでは、1週間のプログラムの一部として、レゴ®︎シリアスプレイ®︎を使った1日がありました。家族で将来の夢を共有する機会を得たのです。ワークショップの参加者は、通常2人の親と5歳から15歳までの2〜3人の子どもたちです。家族たちは、LSPに基づくプロセスを通じて選ばれたさまざまな夢に取り組みました。夢には「家族全員にとってより良い毎日とは」「一緒にすごす次の休暇」「一緒にすごす理想の週末」などのテーマが含まれていました。

THE GAZETTE 2013年2月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

こちらは「親子LSP」といったところで、子供たちのことを親がより深く理解して、よりよい教育環境をつくることに貢献できる取り組みだといえる。この記事から10年がたった今の日本でも、このような枠組みでの取り組みの必要性はますます高まっているといえよう。

 この文章の横には、以下のような写真とメッセージが添えられている。

得られた教訓:レゴ®︎シリアスプレイ®︎という方法は、5歳の子供も含め、すべての人に共通する言語となります。そして、この方法を通じて、子どもたちは、しばしば賢明で深い、私たちが通常年齢で判断するよりもはるかに優れた知恵である考えや洞察を共有することができます。私たちは常に、子どもたちから学ぶことができるのです。

フェラーラ イタリア 3月20日~23日

 文化遺産と環境遺産の修復と保存のための見本市、Restauroでレゴと一緒に遺産を探検する4日間。

THE GAZETTE 2013年2月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 この号の最後にでてくるのが、上のイベント記事である。Restauroは今でも行われている。どのようなプログラムだったのだろうか(レゴの使われ方については、リンクが切れているので知ることができない)。よりよい遺産の扱い方や活用についてモデルで作るのだろうか。遺産を探検するともあるので、見学や解説を聞いた後に考えたことをモデルにして対話するのだろうか。いろいろと興味は尽きない。

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