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レゴ®︎シリアスプレイ®︎で「優秀さの再定義」に貢献する

 ハーバードビジネスレビュー日本版の2021年12月号は「これからの人事」と題された特集だった。人事という仕事をめぐるいろいろな課題が論じられている。

 その中で私が考えさせられたのが、組織変革を成功させる重要要因の一つとしての「優秀さの条件を再定義する」というくだりである。

 「優秀さ」の定義が確立されると、それは人事評価基準になり、その基準で昇格の選抜や研修が組み立てられることになる。
 その評価基準が適切である間は、その基準に合致しようと人々が意識するので、多くの人々は少しずつではあるが、会社が定める「優秀さ」に近づいていく。

 しかしこの定義が厄介で、その定義を強調しすぎると、評価される人々は評価に沿って行動することになる。社会や状況が求める人材とはズレていても、その組織が掲げる評価基準が優先されるのである。

 何をもって優秀とするのかという悩みは、今に限ったことではないであろう。
 立場や役割によって「優秀さ」が異なってくるだけでなく、時代や状況変化とともに「優秀さ」は異なることは、人事の専門研究者でなくとも気づくことである。

 冷静に考えればその中で一律の基準をもって評価すること自体に限界があることは明白なのだが、評価基準を廃止することに踏み込まないのは、そうしたズレ以上よりも「基準がない」ことのほうが避けるべき状態だということなのであろう。

 おそらく、多くの組織は人事評価基準それ自体を適切なタイミングでアップデートしていく仕組みを持っていない。だからこそ上記の号に収録された論文の中で「優秀さの条件を再定義する」が項目で挙げられるのだろう。この優秀さの再定義について、どうすれば良いのか悩む組織は多いのではないか(多くの組織は一度作った基準に安穏として悩みさえしないのかもしれないが)。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎で「優秀さ」を探る

 このような、皆が解決のヒントをもっているが、なかなかはっきりしない問題に対してこそレゴ®︎シリアスプレイ®︎を使ったワークは力を発揮する。

 想定できる進め方も非常にシンプルで「あなたが感じている優秀さ」「優秀な結果を出すことの条件」を作品として作ってもらうのである。手を動かして作品を作ってもらい、作品と共に語ってもらうことは、項目を事前に決めなければならないアンケートや、言葉のみに頼る半構造化インタビューを仕掛けるよりも効率的で、多くのことを引き出せる。

 また、レゴ®︎シリアスプレイ®︎を体験している人ならわかると思うが、同じ部所に所属していても人によって作品を通じて語ることはかなり異なる。何らかの社会的に共有された基準があっても、人々は(それを受け入れつつも)多様な視点を失うことはない。レゴ®︎シリアスプレイ®︎は、そうした現場の実感に基づく「優秀さ」を掘り起こすために、非常に強力な技法である。

 そうした人々の間での考え方の差異を取りまとめようとするならば、モデル間の関係性をテーブルの上で表現するワークが効果的である。

モデル間の関係性を表現することで、バラバラなものが一つの大きな説明のもとに置かれる

 もう一つ、レゴ®︎シリアスプレイ®︎を使う大きな利点は、ワークを通じて人々が「優秀さ」について考え、そこで出された結果に基づいて行動しはじめるということである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎は自分の考えも相手の考えも100%受け入れつつ結論をめざすので、そのワークの結論に参加者は大きくコミットするようになるのである。

 そもそも人事評価や「優秀さ」の基準を探ることの先に、そのような基準を満たすために組織のメンバーが動き出すことが目標としてあるのであれば、レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークショップに参加させることのほうが、組織的に「基準」を作りその点から「評価」して「行動を促す」よりも時間も短くて効果的だといえよう。

 「優秀さ」の基準については、誰が優秀なのかを昇格のために評価するために評価基準、その場合「今」の優秀さではなく「昇格後」の想定される優秀さに基づいて選抜なければならない。つまり、役職別に「優秀さ」は定められる必要があって、それを考えていくためにも、レゴ®︎シリアスプレイ®︎によって作られた作品と引き出された語りは大きな貢献をもたらすであろう。

 「人事評価制度」が一度できてしまうとそれを手放すことには大きな抵抗があるとは思うが、「優秀さ」の再定義のタイミングで、レゴ®︎シリアスプレイ®︎を使ったワークは取り入れる価値がある。

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