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『学習する組織』をレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの文脈で読む(11)第7章 p176〜

 第7章は、第6章の「成長の限界」や「問題のすり替わり」といった基本的なシステム原型を使ってどうシステムを診断し、改善していくのかを架空ケース(ワンダーテック社)を使って示すというものになっている。

 ストーリーは、まず(1)初期の成長、そして(2)伸び悩みの時期、(3)苦闘の時期から(4)倒産とながれる。(1)初期の成長では、自己強化型プロセスで成長する様子が描かれる。続く(2)伸び悩みの時期ではバランス型プロセスがそこに加わり、「成長の限界」のシステム原型が生じる。
 そこから逃れようとする(3)苦闘の時期には、対策が対症療法的なものにしかならなかった故に、バランス型プロセスがそこに加わり「問題のすり替わり」のシステム原型が浮かび上がってくる。こうして「成長の限界」と「問題のすり替わり」が組み合わさった構造は、適切な対処ができないままに、急成長をした企業が経営破綻に追い込まれるという(4)倒産の状況を鮮やかに説明する。

 次に、この苦境から逃れるための方策が検討される。すでに前章までで示されていたように、「成長の限界」のシステム原型が生じたときに、成長を押しとどめるバランス型プロセスがどんな要因によって引き起こされているかを見極め、対応する必要がある。今回のケースでは、(2)伸び悩みの時期に、注文に「納期」が追いつかないことが要因であった。この「納期」を絶対に守るように、「生産設備の増強」がレバレッジの高い対応策であったが、大きな設備投資は責任者に財務上の不安を感じた。結果として、このケースでは責任者は投資を渋りつづけ、結果として顧客が離れることで注文数が減り(責任者は市場が安定しないと嘆く)、皮肉にもそれによって「納期」が守られるようになるということを繰り返している。これが(3)苦闘の時期のシステム的な理解である。

 このケースでもレバレッジの高い要因の見極めはわかっているのに、その要因や動きの見極めがうまくいかないのか。センゲはその理由を3つ示している(本文では2つとして話が進められるが3つ目の(C)も語られている)。
 (A)問題が徐々に進行する
 (B)緊急の問題に気をとられる
 (C)考える情報が多すぎて圧倒される
 これらの理由を克服するために、システム思考の法則を学んでおくことが求められる。特に(C)に関しては、多いからと安易に情報を絞ってしまうと「部分を見る」という問題(第4章:以下の関連Noteを参照)に陥ってしまうことに注意することが重要である。

 そして(C)に関しては「木を見て森も見る」という詳細なパターンと広範なパターンの両方を見るという能力をつけるしかないということになる。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関連

 この章で印象に残るのは、ケース説明の手順である。このケースは比較的わかりやすいものにはなっているが、それでも、そのままシステムの全体を説明しようとすると多くの人が理解に苦しむだろう。そこで、成長から倒産までストーリーを追いながら、図を少しずつ拡張することで、全体の構造を把握しやすいようにしている。
 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでもシステムを把握し、理解させていくときも、この「ストーリーを追って」「徐々に拡張する」の2つを踏まえたファシリテーションが重要だろう。

 もう一つは、要因や見極めがうまくいかない理由である(A)問題が徐々に進行する(B)緊急的な課題に目を奪われる、(C)考える情報が多くて圧倒される、は、システム思考をマスターしない限り、日常の業務の中で対応することが難しい、すなわち「学習する組織」を作るためのワークショップを実施すべき強い理由とも読み取れる。ただし、それを採用してもらうには、決済権者に短い時間でコンパクトにそのことを理解してもらわねばならない。そのための説明の工夫が必要である。その観点から、改めて本書の第1章〜第4章あたりを読み、自分の言葉で語れるようにする必要がありそうだ。

 また、もしレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドで「システム思考」もしくは「学習する組織」へのアプローチをするならば、(A)問題が徐々に進行する、をどう扱うか考えておかねばならないポイントになりそうだ。人々の思考のなかで「時計の針を進める」もしくは「時間進行のスピードを上げて考えさせる」ことは、この「システム思考」に限らず、ワークのあり方の幅を広げることにつながりそうだ。具体的にどのようなファシリテーションや問いかけをすべきかについては、私自身蓄積が少ない。今後の探究テーマの一つとしておきたい。

 今回はここまで。この第7章で第二部は終わり、学習する組織の礎ともいえる部分は解説が終わる。次はこのシステム思考の上に打ち立てられるディシプリンを扱う、第三部へと進んでいくことになる。

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