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レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドにおいて「問う」と「考える」のサイクルを強化する

 「考える力を伸ばす」という観点からレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを見たとき、参加者が「問い」を考えることを強化することが重要なのではないかと言うことについて以下の記事で書いた(レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとはどのようなものかについても簡単にまとめられている)。

 上記の記事で主張したのは、考える力を伸ばすには、単に「問う」だけでなく、「問う」→「考える」→「問う」→「考える」→…のサイクルを作り出すことが大事だと言うことであった。

 今回は、その「問い」と「考える」のサイクルをどう作っていくかを考えるために、まずは参加者が自分から問うことが現れるかについて整理し、そこからサイクルの作り方について考えてみたい。

問いが現れる場面① 作品を見ているとき

 まず最も「問い」が頻出する場面として思いつきやすいのが、相手の作品を見ているときである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎では、作品を作るときの問いは共有されるが、回答に相当する「モデル」については、作った本人から話を聞くまでその意味が分からない。そして、モデルを作った本人はしばしばモデルの全てを説明しない。これによって、説明されない作品の表現について問いが湧いてくることがある。
 この場面での、よくある質問のパターンとしては「そのブロックはどのような意味を持っているか」「そのブロックはなぜ○色なのか(別の色のパーツを選ぶことができたのに)」「そのブロックは作品全体のなかで、なぜその位置に置かれているのか」などである。

 作品をみているとき、「問う」→「考える」→「問う」…のサイクルが現れているといえるのか。

 結論からいえば、サイクルになっていない場合がほとんどである。

 「問い」の材料がモデルで意味が確定していない表現に焦点を当てていることから、モデルから不明な点がなくなれば問いが尽きてしまうからである。もし、サイクルが回るとすれば、「このブロックはどう言う意味なのか」→(作った人からの回答)→「そのブロックがそのような意味になるとすれば、このブロックの意味はどのようになるのか」というように、回答を受けて別の部分にさらに関心が湧き、次の質問が浮かぶという形になる場合だろう。

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの基本的なプロセスからは外れてしまうが、作り手に作品の説明をさせず、他の人からの作品への質問に答えるのみにする、と言う方法を取るならば「問い」と「考える」とのサイクルを回す状態を強めるだろう。ただし、この方法では作り手が自分の説明をできないところから始まるので、参加者の質問の内容次第ではストレスを感じる状態が生まれるかもしれない。

 そこで、少しゲーム感覚要素を入れて、まず作り手以外の参加者が作品全体の意味を推論し、その後、作り手が作品に込められた意味を話す、と言う方法が考えられる。これは実は私が考えたのではなく、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの体系で正式に認められている一つのテクニックである。この方法の方が通常の共有や質問の仕方よりも、「考える力を伸ばす」という点では理にかなっている。

問いが現れる場面② 作品を作っているとき

 さきほどの①の亜種ともいえるのが、「問い」に対して作品を作っているときである。
 作品をつくるときには、当然、参加者がブロックを組み上げていく。ファシリテーターから問いを出されブロックを組み上げていくと、組み上げが一息つくときがある。完成とはいえないが、ある程度一つの作品の姿になったときに自分の作品をみて、そのときに問いが浮かぶのである
 「このブロックの上に置かれるべきブロックがあるか(あるとしたらそれは何か?)」「このブロックはこの位置で良いのか」などを自問自答する。

 さて、この作品を作っているとき、「問う」→「考える」→「問う」…のサイクルが現れているといえるのか。

 結論からいえば、サイクルになりやすい。実際には「考える」は「作る」ということになり、作ることで作品が変化していくので、それが新たな「問い」を引き出すきっかけになるからだ。

 ただ、全ての参加者がこのサイクルを回すことができるわけではない。問いに合わせて作って終わり、という参加者もいる。そのため、ファシリテーターが問いのサイクルを意識させ、サイクルの回し方の例を示すなどの促しの工夫が必要だと思われる

 ただし、作る中で出てくる新たな「問い」は、最初にファシリテーターから出された「問い」の範囲を超えていくことは基本的にない(超えてしまうことはワークそのものの流れを崩してしまうことになる)。その点で問いを広げていき、「考える力を伸ばす」ことも限定的になるともいえる。

問いが現れる場面③ 作品の外側に目を向けるとき

 作品にはそれが占める空間がある。作品の占める空間があるということは、その外側に空間がひろがっているということである。

 このことに着目して、「その作品をさらに外側に続けて作るならば、そこに何があるのか?」と問いを投げるのである。

 人間の認知の特徴のひとつとしてゲシュタルト的知覚がある。その中の、カニッツアの三角形を考えるとわかりやすいかもしれない。

Fibonacci - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1788215による

 ここでいう2編の線やパックマン形の図形に相当するのが、ワークの中で作られたモデルだと見立てると、その間(それぞれの外側)に何かの存在を感じるのである。

 また、このような何もない空間の中に「問い」が現れてくることについては、以前に記事でまとめている。

 さて、この作品を作っているとき、「問う」→「考える」→「問う」…のサイクルが現れているといえるのか。

 結論からいうと、そのままでは「問い」の出方は単発でサイクルを作るのは難しい。ただし、その先に何があるのかを「問う」のあとの「考える」を「作って置く」に代えるとサイクルにつなげやすい。
 要は、モデルを作っては置き、作っては置き、と繰り返させるのである。

 実際にこのパターンの拡げ方の一つを私は「絵巻物展開ワーク」と呼んでいる。
(なお、以下の記事で扱っている「未来予測」のワークについては、この記事が出た後に本格的に開発し、一つのワークショップ・スタイルを作り上げた。この記事で構想されているものも一部反映されている)

 ここで、お気づきの方も多くいるかと思うが、この方法は前の「問いが現れる場面② 作品を作っているとき」で述べた一節である「実際には「考える」は「作る」ということになり、作ることで作品が変化していくので、それが新たな「問い」を引き出すきっかけになる」と同じ構造である。

  参加者に繰り返しモデルを作らせて、少しずつ空間を埋めていくという方法は「考える力を伸ばす」ためのプログラムとして有効性が高いと言える。

 ただし、「問い」が「〇〇(←具体的なモデル)の隣に何があるのか」ということの繰り返しになりやすく、〇〇の部分は入れ替わるものの、参加者が出す「問い」にバリエーションがない。

 この「問い」のバリエーションこそが、考える力にとって重要な要素だという考え方もある。

 本記事では、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドで参加者に「問い」と「考える」のサイクルをいかに組み込んでみるかについて考察した。

 次はその「問い」にどうバリエーションをもたせるかを考えてみたい。

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