なんにもない町だけど君が好きそうだよ

 私の育った町はなんにもない場所でコアなお寺好きがネットの海の中で市内の数少ない観光地を発見して来ることはあれど知名度が低い。私が育った湖南市には湖南三山という前市長が観光地化のために括りを作った三寺と雨乞い三社という山の奥にある観光地と呼ぶには少々行きにくい場所に存在する三社ぐらいしか観光地がない。例えば他の市の人に私が湖南市に住んでいたことを言ったら隣町の甲賀市にある水口という地名が出てくる。両町の中心部は10キロ離れていないにせよ全く別の場所である。名物は弥平唐辛子と下田ナス──どちらも市内の下田という地域の土がないと美味しく育たないと祖母から聞いた──それから市内の人でも知る人は少ないが芋つぶしという郷土料理もある。
 さて、この町の魅力に気づいたのはこの町を巣立って別の町に一人暮らしし始めてからだ。引っ越した先は近江八幡市、本当に様々な観光地があり、町の中から山の上まで観光地は数多く名物は頬が落ちる美味さだった。でもそこには慣れ親しんだ家族友人はおらず毎日通った神社もない、故郷というのは離れて初めて良さに気づく。
 湖南市には石部という辺りの町の至る所に愛宕神社があったり甲西富士と呼ばれる菩提寺山や信楽行きの山の入口付近にある不動の滝、三つ目の龍がでたとされる龍王の峰など色んなものがあって有名じゃないけれど良い場所やものというのは沢山あった。住んでいると当たり前で忘れてしまう良さが地元にはある。

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