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「おじちゃんは、おじちゃん。」

親戚のおじちゃん、93歳。
人に気を配り、孫が来れば遊んでー!と孫たちに囲まれニコニコ。小さい頃、私もおじちゃんがお盆に遊びに来ることを毎年楽しみにしていた。「わっはっは!」と笑い、笑顔が絶えず、いつも優しいおじちゃん。

3年前くらいから認知症の症状が出てきた。
年末からはさらに、症状が強い。
自宅での生活するのが難しくなり、入院することになった。
3ヶ月後。
症状は改善せず、施設入所が決まった。

おじちゃんは、難聴でコミュニケーションがスムーズにいかない。補聴器は持っていても全くしない派。
コロナ禍の今では家族との面会もオンライン面会、電話は受話器の声が聞こえず。

施設入所の日。

おじちゃんの入所に付き添って欲しいと相談を受け、私も一緒に行くことになった。

3ヶ月ぶりに家族と会えた昨日。
「俺は家に帰るんだよ。いつもの病院に行って、治療してもらって、調子の悪い歯も隣にある歯医者で治してもらうんだよ。ここにくることないよ。話もしてくれないし、会ってもいなくてやっと会えたらここに来るなんてどういうことだ!」

興奮しながら話をするおじちゃん。

入院前、調子が悪くなって怒ったり、言葉がきつくなってしまったり、叩こうとしていたおじちゃん。おばちゃんは恐怖を抱き、目を合わせることも、会って話をすることさえも怖くなってしまった。

「お父さんは変わってしまった。いつものお父さんじゃなくなってしまった。」

おばちゃんは悲しそうに話す。

施設入所に向けて、一旦家族と距離を置き、私と施設の方と、おじちゃんに話をすることにした。

おじちゃんは、入院中にずっと思っていたこと、考えていたこと、家族のことを心配していること、自分の歯の調子が1ヶ月くらい良くなくご飯が美味しく食べれないことなど、沢山の話をしてくれた。

話をしながら少しずつ、おじちゃんの気持ちが落ち着いていくのがわかった。

「歯医者さん、いつもの先生のところ予約しています。混んでて来週の予約になってしまったけど、調子悪かったら明日電話して早めてもらいましょうね。ご飯食べられないとつらいですよね。」
施設の方も一緒に話をしてくれた。


「いやぁ、病院に連絡してくれたんですね。そうですか...本当にすみません。お世話かけます。本当にありがとうございます。」

自分の体の不調、できていたことが自分でできなくなった苦しみ。家族への思い。いっぱい考えてきたおじちゃん。しんどかったね。

「みほちゃん、ありがとうね。遠くまできてくれてね。気をつけて帰ってね。」

優しく手を握ってくれる。

「また会いにくるね。」

「いや、もうみほちゃん来なくていいよぅー。」

冗談を言い笑いながら別れた。


やっぱり。

「おじちゃんは、おじちゃん。」




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