読書感想文~アル中の、アル中による、アル中のための本~

アル中ではないです。環です。

みなさんは、中島らもさんをご存知ですか？
作家や俳優など、多岐に渡り活躍し、
ご友人とお酒を飲んだ帰りに階段から転げ落ち、52歳で亡くなった方です。
今回する小説は
そんな、まるで小説の一部のような最期を遂げた、中島らもさんが書いた小説です。

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

今夜、すべてのバーで　/中島らも　著

下記、わたし的解釈に基づく概要です。

アル中にならないように、アル中の知識を豊富に持ちながらも、それでも良いと酒を断てず、35歳で入院することとなった主人公。
生死、依存症というヘビーなテーマを持ちながらも、主人公を囲む個性豊かな入院患者や医者、親友の妹のと会話はクスッと笑える場面が多く、
かと思えば不意に泣かせる場面も。
作者・中島らもの実体験に基づく小説。
吉川英治文学新人賞受賞作品。

忘れられない作品。
それほど衝撃的な作品でした。
アル中の話ってまず中々ないし、たぶんこの主人公、単なるどうしようもないアル中じゃない。
自身や周りを客観的に分析し、主治医相手に時折小生意気な口もきく。
霊安室で、主治医とお酒を酌み交わす場面が印象的でした。
生死を見つめ、依存症について考える主人公の格言にはなるほどと納得させられ、
普段あまりお酒を飲まないわたしには、見られない世界を垣間見せてくれました。
これって読書の醍醐味の一つだと思います。

この小説を読むと、依存ってそんなにいけないことなのかと少しおかしな疑念を抱いてしまいます。
そう思えるのは、中島らもさんの卓越した文章力に他なりません。