『歌舞伎町と貧困女子』中村淳彦著
貧困シリーズも長くなる中、歌舞伎町の貧困女子は、あまりにもふつうすぎる女性も混じっていて驚いた。
しかも帯にある「Z世代の告白」とあるように、今までにない低年齢化にも。
Z世代とは、1996年以降生まれ、つまり26歳以下を指すらしい。
中村氏の代表著書の『東京貧困女子。(東洋経済新報社)』の奨学金返済のために風俗に踏み入れる大学生とか、非正規雇用の低賃金で家賃が払えない社会人とかではない。
とにかくあまりにもふつうすぎる若い女性が簡単に性を売ってしまっている。売らざるを得ないのだ。なぜ。
ここでのキーワードのひとつは「ホス狂い」。
テレビ番組でも見たことがあるので少しの知識はあるが、ハマる人は特別な人だと思っていた。
ホストに貢がれるのはとてつもない大金であることは、かかわらなくても多くの人は知っていると思う。その大金をふつうの女性が持っていることの違和感。
当然風俗に、となる。
歌舞伎町独特であろう大金の流れにかかわる繋がりのある人たち。
ぞっとするような関係があった。
地方から上京してきた若い女性はそんなことは全く見えず、仮面のイケメンホストに大金を貢ぎまくるという、当然余裕もない生活で超貧困であることが、中村氏の取材で可視化されている。
なぜ地方から上京してきたのか、
なぜ歌舞伎町に女性が集まるのか、
そこに大きな問題があるのかと思う。
渡りゆく大金を搾取されているのは誰か、搾取しているのは誰か、わかってしまうと末恐ろしさを感じずにはいられない。
余談として、ホス狂いではない女性の取材もあったのだが、ホス狂いにならない理由に大きく共感したことはここに添えておく。
9月に中村氏の『悪魔の傾聴 会話も人間関係も思いのままに操る(飛鳥新社)』が出版され、これは短期間に何度も増刷されアマゾン総合3位になった。
これまでの中村氏の取材内容に、
「捏造だろ」
「ありえない話」
というコメントやレビューが多々あったことは見ている。
が、傾聴に長けているからこそ聞き出せたことだと今なら理解する人もあるかと思う。
今回の歌舞伎町の取材内容も、意識して読んで見ると中村氏のすごさがよくわかる。
中村氏が「心のセンタリング」をするから読み手の私にも取材対象者に入り込めるんだ、と気付いた。ほかで見られるような上から目線では決してない。
私は地方に住み、今は専業主婦をしている。
この立場は、接触する人を自ら選び、選ぶために場所も選べる。
つまり自由であるがゆえに世界が狭い、そんなことを今までの中村氏の著書から気付かされた。
多分私のまわりの友人たちもそうだと思うから、これら貧困シリーズは特に取り上げて思うことを書いてきた。
色々気付かされてきたから、中村氏の取材内容にはいつも大きな興味がある。自分の知らない世界を知ることができ、貧困のテーマからは日本で起きていることが読み取れる。
これら貧困のテーマの本は、自分は貧困には縁遠いと思う人ほど読んでほしいと思う。
理解し難い現状、歪んだ構造が見える。
こう書く私は中村氏にない上から目線だ。
申し訳ない。