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Tsutaeru

気持ちを伝えることの難しさを。


小学校のころに、「音読」という宿題があった。

嫌いじゃなかった気がするけれど、

お母さんがいつもきいてくれているのが

うれしかった気がするけれど、

ジャージャーと水を流してごはんの準備をするとき、

うるさいんだろうなぁと少し思っていた。

鬱陶しいんじゃないかなぁと。

読んでいると自然と気持ちがこもって、

気持ちを込めずに文を読むのは苦手だった。

気持ちを込められない文を読むのはもっと苦手だった。

小学校の時、音読発表会があった。

なぜか、いや立候補したのかもしれない。

相田みつをの詩を読んだ。

「だれにだってあるんだよ、

 ひとにはいえないくるしみが

 だれにだってあるんだよ、

 ひとにはいえないかなしみが

 ただだまっているだけなんだよ、

 いえばぐちになるから」

いまでもなんとなく覚えている。

そしてそれから、17歳

ある日のわたしを救ってくれたのも

相田みつをの詩だった。

起立、礼すらせずに

つっぷしていた。

悪態をついていた。

世界なんてどうでもよかったのだ。

先生は怒鳴った。

出て行けといった。

仕方なく行った保健室で、

たまたま目についた相田みつをの詩集

たまたまめくったページの詩。

母が、わたしに届けてくれたようだった。

素敵な言葉を抱えていたい。

素敵な詩集を集めていたい。

好きなものに囲まれていたい。

自分を守る必要がないように。

力を抜いていけるように。

語尾を伸ばして話すように。

そんな、いっしゅんの酸素のような

大切な言葉を残せたのなら。







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