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一番のアウトサイダーは自分。櫛野展正の誰にもマネできない企み。

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「企画でメシを食っていく2019」、今回のテーマは「キュレーションの企画」

ゲスト講師は、知的障害者福祉施設職員として働きながら、広島県福山市鞆の浦にある「鞆の津ミュージアム」 でキュレーターを担当。2016年4月よりアウトサイダー・アート専門ギャラリー「クシノテラス」オープンのため独立。日本唯一のアウトサイダー・キュレーター、櫛野展正さんをお迎えしました。

常に作り手の真横にいる、伴走者でありたい。

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そもそも「キュレーション」という言葉に馴染みのない方も多いのではないでしょうか。キュレーションとは「情報を集めて整理し、新しい価値付けをおこなう」こと。

学芸員資格を持っていない櫛野さんですが、キュレーターの語源になったラテン語のCURARE(クラーレ)が「世話をする」という意味があり、知的障害者の福祉施設で16年働いてきた感覚と近いのではないかと言います。

櫛野さんは大学卒業後、福祉施設に就職。しかし、施設で暮らす人が手を引いてもらってお風呂に入るなど、受け身の生活をしていることに違和感を覚えたそうです。

そこで施設の人が自己主張できる場所や機会が必要なのではないかと思ったときに、主体的にできることはアートか音楽ではないかと考えます。

そんな時、自閉症の人の文字を研究することで、施設の中でただ一人読めるようになりました。

その画像はこちら。

冒頭の「8月25日」はなんとか読めるものの、その先は…?

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「8月25日月曜日晴れ 純天堂にいきました。洗車をしました。大掃除をしました。終わり。」と書いてある。)

よくわからないで終わらせず、その人が何を書いたのかを知りたくて、一文字一文字解読していったといいます。

そこには、「作品を伝えたいのではなく、人を伝えたい」という櫛野さんの姿勢がありました。

「他のキュレーターの人はおそらく対象者がいて、その人が作家で作品をつくっている人だったら遠くから双眼鏡でながめているくらいの距離感だと思うんですけど、僕は常に作り手の真横にいる感覚なんです。伴走者でありたい。

半径3メートルの幸せを越えて

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ほとんどの職員は自分の担当する人のことしか考えていない。しかしこの半径3メートルの幸せではなく、世の中全体を大きく変えるようなことをしなければと思い、2012年「鞆の津ミュージアム」を開きます。そして、ヤンキー文化や死刑囚の絵画の展示にも踏み出した櫛野さん。

そこから生まれた意外な出会いも・・・

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心臓に障害がありほとんど外に出ることも出来ない中、30年間で800台ものデコトラを紙で作っている伊藤輝政さん。伊藤さんは、中でもデコトラ(デコレーション・トラック)の「常勝丸」という車が大好きなのだそうです

実物を見せてあげられないかと櫛野さんが考えていたところ、たまたま『ヤンキー人類学』の出展者に「常勝丸」のデコトラチームの方がいて、デコトラショーをやってくれたのだとか。

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アウトサイダー・アートという文脈でつながり、二者が出会った瞬間でした。

面白いのは、自然発生的に改造車を作っている人が集まったこと。

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人が人を呼び、テレビの取材まで来たそうです。

伊藤さんはその後、引越し会社のトラックの作品をつくっていたことがその会社の従業員の目にとまり、なんと会長にまで話がいき、そのご縁で入社。今、伊藤さんは、企業に所属しながら作品を作り続けています。

また櫛野さんは、本来は外にある「アウトサイダー・アート」を美術館に持ってくると途端に現場感が失われるということから、展示とは別にツアーも開催しています。

「ツアーをやることで、制作当事者も自分の作品が社会に対してどう思われているのか知ることができる。参加者も一人では行きにくい場所をアテンドしています。路上にもいい作品は沢山ありますよ。僕としてはずっと『福祉』をやっている感覚なんです。」

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前代未聞と言われるのが勲章

これまで色々な方と出会い、向き合ってきた櫛野さん。今年の4〜5月に東京ドームシティ内で行われていた『櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展』の話をしてくださいました。

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(多くの企画生が展示を見に行きました)

「意図的に賛否両論巻き起こすために、自分の顔をわざとメインビジュアルのセンターに置きました。やるなら史上最大規模で見に来てくれる人の分母を増やしたい。また、アウトサイダー・アートの中に美大を出た方も入っていただくことで、アウトサイダー・アートとは何かの議論を巻き起こしたいと考えていました。

いかに事件を意図的に起こすかが大事で、前代未聞と言われるのが勲章という櫛野さん。展示期間中、勝手に作品を置いていく人やワークショップを始める人もいたのだとか。

しかしこれも想定内。あえて企画に余白を作り、色んな人を巻き込んで、ハプニングも企画意図に落とし込んでいくのが櫛野さん流の企画なのです。

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『アウトサイド・ジャパン展』であまりのエネルギー量に圧倒されたという企画生からは、「アウトサイダー・アートに触れていて、自分の気がおかしくなることはないのか?」という質問も。

それに対して「多分僕が一番アウトサイダーなんだと思います。サーカスの団長みたいなものですね。」と櫛野さん。

「普通は喋るなり文章を書くなりで自己表現できるけれど、そういう人たちはコミュニケーションが苦手だから自分を表現する手段が一つしかない。だから強烈なんです。」

(なるほど、、、!)

またアウトサイド・ジャパン展中に行われたクラウドファンディングで、クシノテラスに常設展示が開設されました!見逃した方はこちらでご覧になれます。

いかに常識を解きほぐして見せていくか

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そんな櫛野さんにとって企画とは何でしょうか?

「常識をアップデートしていく企み」。

「みなさんステレオタイプ化した固定観念を持ってると思うんですよ。それをいかに覆していくか。展覧会なり、ツアーなり、トークなりで示していきたいんです。いかに常識を解きほぐして見せていくかということを続けていくという感じです。」

世の中という大きな舞台を見据えながら、常に一人ひとりの伴走者として走り続ける櫛野さん。今後の櫛野さんの企画にも大注目です!

キャリアハックでの記事はこちらからどうぞ…!

ライター:市川怜美
サムネイルデザイン:小田周介
写真:加藤潤

▼糸井重里さんをお招きして開催した「企画メシ」の特別イベントのレポートはこちら↓

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