社会人博士課程で博士(工学)の学位を取るまで 前編

概要

2016年10月~2020年9月の期間、社会人として働きつつ、東京の東の方にある国立大学の博士後期課程に在学した。結果として博士号(工学)を取ることが出来た。世の中の誰かに役立つ可能性が僅かにあるので、こんな感じだったというのを記録に残そうと思う。

前編は入学までの話
中編は入学から学位取得までの具体的な話
後編は学位取得後の感想的な話
大多数の人に意味のある内容は、中編だけだと思います。

学生時代の話

東京のやや西にある私立大学の工学部の機械工学科に入学して、学部では画像処理関連の研究をして、修士課程では数値流体解析の研究をした。
3年次までの単位取得で機械加工、材料力学などの機械工学の花形分野に挫折したので、あまり機械っぽい研究はしていない。

学部の研究 画像処理関連
ロボットとか統計的推定をするやや情報系寄りの研究室に入った。
画像処理関連の新規テーマが与えられ、学部生が自己流で一人で作業して出せる成果をまとめて、卒業論文を書いて学会のポスターセッションに参加し終わり。学部で卒業する場合、景気が悪そうだったのと、研究が楽しい気がしていたので、修士課程に進学することにした。

意欲が低いと放っておかれる、わりとゆるめの研究室だったため、
・どのように先行文献を調査するのか
・論文の書き方
・学会発表用の原稿の書き方
あたりの研究の基礎的なことはあまり身につかなかった
(大学生であるので本来は自分でどんどんやるべきであり、指導教官が悪い訳ではない。意欲が高い学生は学会などにも多々参加していた。)

修士時代の研究 数値流体解析関連
研究室で一人の先生が指導出来る修士の学生の人数に制限があり、自分よりも成績の良い同級生でその枠が埋まったため、流体力学の研究室に移籍した*。
割り当てられた研究は、ゼネコンの技術研究所との共同研究で、修士課程在学中は10:00-17:00でほぼ毎日共同研究先で研究を進めた。
それなりの数値解析プログラムを作り上げて、数値解析を実施して、無難に卒業した。守秘義務があったため、修士課程在学中は学会発表は出来なかった。

なお、学部、修士と在籍した大学では博士課程進学者は学科で一人程度であり、指導教官に
「進学するにつれて、レベルの低い大学の人の割合がどんどん減るので、進学するならもっと良い大学を受験した方が良い」
と言われ、進学する選択肢は頭から消える。

*ちなみに、翌年からその制度は廃止された。

社会人時代の話

画像処理や数値流体解析をやっている「○○研究所」的な名前の会社を見つけたので、雰囲気で入社を決めた。
折角なので新しいことをやろうと思って、通信関連のソフトウェア開発をやっている部署に配属希望を出して、配属された。

入社後5年くらい
通信関連のシミュレータ、通信関連のエミュレータ、通信関連の実験装置、通信制御ソフトウェアなどを開発していた。
ソフトウェア開発に飽きてきた頃に、無線通信の研究機関への出向者募集があったので、応募した。

入社後6~9年
無線通信の研究機関に在籍して、総務省系の競争的研究資金を使った、無線通信の研究をやり始めた。後半は大学との共同研究で測位の研究をやり始めた。
年に1~2件、無線通信の学会の大会(査読無し)で発表して、特許出願して、1回だけ国際会議(査読あり)で発表して、任期満了した。

入社10年~
出向から帰ってきて、通信関連の部署ではなく電波関連の部署に配属された。研究機関でやっていた測位関連の研究を元にしたシミュレータを商用化したいと思い、開発を始めた。
この部署で測位関連の学会とか、無線通信関連の国際標準化会合に参加する機会が増えた。

シミュレータを商用化したところ、妥当性について聞かれる事が多くなり、
年に1~2件、測位に関連するテーマの学会(査読無し)で発表しはじめたが、評価した内容についても、査読付きの研究で発表した内容なのか問われることが増えてきた。
社内に専門家が誰もおらず独学で進めるのに限界を感じたため、以前より付きあいのある大学に、進学することを決めた。

入学関連の根回し
シミュレータの妥当性を上げるという名目だったので、会社負担で学費が捻出される可能性もあると聞き、偉い人と交渉をした。
結果として学費は会社負担となり、2016年の10月入学で準備をした。
(なお、紆余曲折あったがシミュレータの妥当性はかなり上がった。)

・入学試験は社会人特別選抜だったため、書類と面接審査。
・英語の試験はTOEICの点数で免除されたのかもしれない。
・入学試験で最も苦労したのは、修士論文の原文の調達と入学書類に合わせた要旨の作成、面接に向けた内容の思い出し。

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後編(学位取得後の感想的な話)へ。

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