社会人博士課程で博士(工学)の学位を取るまで 中編

概要

2016年10月~2020年9月の期間、社会人として働きつつ、東京の東の方にある国立大学の博士後期課程に在学した。結果として博士号(工学)を取ることが出来た。世の中の誰かに役立つ可能性が僅かにあるので、こんな感じだったというのを記録に残そうと思う。

前編は入学までの話
中編は入学から学位取得までの具体的な話。
後編は学位取得後の感想的な話

学位取得の要件

・基準のガイドラインのようなものは公開されているものの、専攻によって実際の要件はやや異なる模様。
・査読付きの論文数と国際会議の発表件数により、能力はあるていど担保されるため、件数により博士論文や英語力の審査の厳しさが変わってくる模様。
・以下の申請要件と合格要件は推測。審査基準を読み、査読論文数が1件で良いのかと思っていたため、卒業直前にやや焦った。

申請要件合格要件
査読付き論文が1編以上採録されており、査読付き国際会議での発表が1件以上 (申請要件)
査読付き論文が2編以上(少なくとも1編は筆頭著者)採録されており、査読付き国際会議での発表が1件以上あること (合格要件)

また、その他の条件として以下が必要だった。
・博士論文中間発表会を実施し、滞りなく研究について発表し、参加者の質問に全て答えること
・博士論文を書き上げ、主査、副査の先生の査読を受け合格とされること
・博士論文公聴会を実施し、滞りなく研究について発表し、参加者の質問に全て答え、必要に応じて博士論文を修正すること
・在学期間中に15回以上なんらかの学会に参加し、レポートを書き提出すること

私の場合
申請時と審査時が以下であり、結果として合格となった。
査読付き論文が1編採録されており、査読付き国際会議での発表が2件 (申請時)
査読付き論文が3編(筆頭2編、共著1編)採録されており、査読付き国際会議が2件(1件発表なし、1件発表あり)(審査時)

各学年時の活動

・前編でも書いた通り、1-3年次の途中までは学費は会社に負担してもらった。その期間は業務で扱っているソフトウェアをより良いものにしたいという目的を持っていた。
・3年次の後半からその制約を捨てて、学費は自己負担に切り替えた。

1年次(2016/10-)
活動:
・フルタイムで働きつつ業務終了後(19:00-21:00)に、研究の時間をとっていた。
・一本目の論文に向けた分析内容を考えて、研究に使うシミュレータの開発をしつつ、シミュレーションをして結果をまとめていた。
・月に一度程度の頻度で研究室のミーティングに参加して、計算結果が微妙だと報告する日々。

学会:
2017/3 無線通信関連の学会の大会(査読無し)で発表
2017/7 測位関連の国際会議@フランス(査読あり)に投稿、alternate*で採録される
2017/9 無線通信関連の学会の大会(査読無し)に共著で投稿

*
参加すればproceedingsには掲載される。当日欠席者がいれば発表出来る

2年次(2017/10-)
活動:

・フルタイムで働きつつ業務終了後(19:00-21:00)に、研究の時間をとっていた。
・忙しくなり、不定期に研究室のミーティングに参加。
・少しまともな結果が出始めて国際会議/論文誌に投稿せよと言われ始める。
・一年経ってしまったものの、ほぼ成果が出ていなくて焦り始める。

学会:
2017/10 測位関連のシンポジウム@日本(査読無し)で発表
2017/10 測位関連の国際会議@フランスに参加(発表なし)
2017/? 測位関連の論文誌(査読有り)に投稿→リジェクト
2018/3 無線通信関連の学会の大会(査読無し)で発表
2018/9 無線通信関連の学会の大会(査読無し)で発表

3年次(2018/10-)
活動:
・フルタイムで働きつつ業務終了後(19:00-21:00)に、研究の時間をとっていた。
・不定期に研究室のミーティングに参加。
・そろそろ論文誌を通せとプレッシャーが掛かり始める。
・リジェクトされた論文誌のボロボロ具合が嫌になり、修正作業をしようと思っても筆が進まなくなる。
・ここまで業務に関連した研究をしていたため、なるべく会社にとって良い成果が出るように頑張ろうと思っていたが、その制約でむしろ成果が出なくなっていることに気が付き、評価の方針を変えた。

学会:
2019/3 無線通信関連の学会の大会(査読無し)で発表
2019/? 測位関連の論文誌(査読有り)に再投稿→再リジェクト
2019/5 測位関連の論文誌(査読有り)に再々投稿→条件付き採録→採録

4年次(2019/10-)
活動:

・そろそろ卒業に向けてまとめろと言われる。
・会社と交渉し、2020年1月2月時短勤務*、2020年3月4月休職、2020年5月6月時短勤務とした。
2019/10 仕事がとても忙しくて、睡眠を削って国際会議に投稿する
2019/11 仕事がとても忙しくて、研究が手に付かない
2019/12 仕事がとても忙しくて、睡眠を削って国際会議の準備をする
2020/1 仕事がとても忙しくて、睡眠を削って国際会議の準備をする
2020/2 仕事がとても忙しくて、研究が手に付かない
2020/3 休職し大学に毎日通い始める。卒業に向けて、論文誌を書き始める。研究室に泊まり込みの日が増える。
2020/4 コロナ禍で大学に入構規制が掛かり入れない。もう一本論文誌を書き始める。徹夜の日が増える。
2020/5 復職して時短勤務で仕事をしつつ、学位審査の申請をする
2020/6 時短勤務で仕事をしつつ、博士論文を書き始める。リジェクトされた論文誌の修正対応をする。
2020/7 フルタイム勤務しつつ、博士論文を書きあげて投稿する。コロナ禍で手続きが変わっていて分からない。
2020/8 フルタイム勤務しつつ、博士論文公聴会を実施する。博士論文の指摘事項を粛々と修正する。徹夜の日が増える。書類一式を提出する。
2020/9 学位審査結果が出る。学位論文を製本して主査、副査の先生に挨拶回りをして、学位授与式に参加すれば全て完了。

*時短勤務:9:00-16:00勤務

学会:
2019/10 測位関連の国際会議@米国に参加(査読あり)に投稿→採録
2020/1 測位関連の国際会議@米国に参加(査読あり)に参加(発表)
2020/3 無線通信関連の論文誌その1(査読あり)に投稿→リジェクト
2020/4 無線通信関連の論文誌その2(査読あり)に投稿→採録条件付きリジェクト
2020/5 海外のOpenAccessの論文誌(査読あり)に共著で投稿→採録条件付きリジェクト
2020/8 海外のOpenAccessの論文誌(査読あり)に再投稿→採録
2020/8 無線通信関連の論文誌その2(査読あり)に再投稿→採録

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後編(学位取得後の感想的な話)へ。

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