「女房役」 SNS見出しに取った回数の多いメディアはどこ?
X(旧Twitter)を見ていて思わず「へぇ」と声が出た。
未だに「女房役」なんて言葉を使うメディアもあるのかと驚いた。
中には、野球において投手に対する捕手を女房役と称することに「一体何が問題なのか」と思う方もいるかもしれない。
近年、新聞社をはじめとするメディアは、性別ごとの役割分担を示す表現を避ける動きがある。ゆえに、捕手を「女房役」と比喩表現するのは適切ではない。
そもそも、単に「正捕手」や「相棒」などと表記すればいいものをわざわざ「女房役」と書く特別な理由は見当たらない。
何が問題なのか、各メディアがどのような動きをしているかについては、2023年8月22日付ハフィントンポスト「捕手を「女房役」や「正妻」と表記。夏の高校野球を報じる新聞記事に感じたこと」において、相本啓太記者が詳しく書いているのでそちらを参照していただきたい。
筆者も、相本記者の意見に賛同する立場である。
(ちなみに上記記事によると、山形新聞ではかつて「正妻」と表記した記事もあったようだ。記者はどんな気持ちでこの言葉を使ったのだろうか…)
さて。筆者はたまたま河北新報のX投稿で見かけたが、こうした「ステレオタイプな見出し」は今なお他社でも使用しているのだろうか。
気になったので、日本新聞協会加盟の新聞・通信社のうち、Xのアカウントを持つ86社を対象に、投稿した記事の見出しに「女房役」を用いた回数を調べてみた。結果はいかに。
スポーツ紙に顕著な「女房役」
画像は、各社が「女房役」をXで使用した回数をランキングにまとめたものである。
やはり、野球記事の多いスポーツ紙において使用頻度が多い。
ちなみに、ほとんどの社もXにおいて記事の投稿を始めたのは2010年代。ここ12、3年に使用された回数と捉えて間違いはない。
1位の報知新聞は109回と突出している。レトロな見出しを選びがちな雰囲気があるのかもしれない。
意外にも、サンケイスポーツは「女房役」をXの投稿に用いたことはない。ただ、同じグループの産経新聞、夕刊フジではそれぞれ使用していた。
産経新聞では野球記事だけではなく、政治記事でも「女房役」と使用するものがあった。これは他社のX投稿では見受けられないものだった。
1度以上使用している社の半数ほどは、ここ1年以内の投稿に用いていた。最も最近使用していたのは筆者が調査するきっかけをもたらしてくれた河北新報であった。
岩手日日新聞は見出しではなく、ハッシュタグに使用したものだった。
それにしても、各社、現大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手に絡んで使用しているものが目立つ。大活躍する選手に対して使用しがちな傾向があるのだろうか…?
ステレオタイプ見出しは不滅か?
今回の調査はあくまでもXのみを対象にしたもの。実際には、新聞紙面上でもっと多くのステレオタイプ見出しが溢れかえっているのだろう。
言葉づかいは、見出しをつける編成記者による。問題意識があるかないかは、その日の担当者が日頃から鋭敏な感覚を研ぎ澄ませているかにかかっている。
「先輩がこういう表現を用いてたからいいや」「語感的にも字数的にもこのワードしかないなぁ」といった、何となくの理由で、今日もステレオタイプ見出しが生成されるならば、同業者として情けなさを覚える。
重箱の隅をつついてる?
では、その見出しを読んだ読者はどのように受け止めているのか。まずは想像してみることから始めてみよう。
想像力があれば、いずれステレオタイプ見出しは消えるだろう。
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