ダダダ、ダーン!
「はっきりしないもの」を、「はっきりさせる」こと。
授業づくりの中で指導者が配慮したい視点のひとつです。
先日、これに取り組む若い先生の授業に出会うことができました。
それは、中学2年生の音楽科の授業でした。ベートーヴェンの『交響曲第5番ハ短調』、皆さんも『運命』としてよくご存じでしょう。この曲の「曲想」の変化をとらえながら鑑賞するという授業です。
若い先生が、どう取り組んだのか。
次に示すものは、この曲の「動機」となる「ダダダ、ダーン」です。
繰り返し登場するこのパターンのことを、音楽の専門用語で「動機」というそうです。私も勉強になりました。
まちがっても「ダンダダン」と言ってはなりませんね。はやりの人気アニメに子らの思考がとんで、収拾がつかないくらい盛り上がってしまいます。笑
授業の中では、この「ダダダ、ダーン」が、指定した小節の中で何回登場するかを正確に聞き取る活動もあり、子らが勢いづきました。
そして、授業の最後で、指導者が子らに見せたのが、次の映像素材です。この先生は、これを使って今日の授業のしめくくりをされたのです。子らの顔がしっかり上がっています。今日の学習で注目した「ダダダ、ダーン」を、耳と目と感覚で確かめていきました。
見えないものを見えるようにして子らの理解を確かなものにしようとする指導者のねらいは、この映像素材によってみごと達成されたのでした。
子らがYouTubeやTikTokなどの映像素材に慣れ親しむ現状があるなかにあって、視覚的なわかりやすさを持つ映像素材を活かして子らの学習を深めていく手法は、今後ますます求められていくことでしょう。
また、
この先生は、この授業の中で、「感じ」シートなるものを活用しました。これもまた、はっきりしないものをはっきりさせようとする試みです。先の映像素材の活用とよく似たねらいを持ちます。
次に示すものが、その「感じ」シートです。
子らが聴き取る『交響曲第5番ハ短調』。
「この曲を聴いて、どんな感じがしましたか?」と指導者から問われたら、何と答えたらいいか戸惑う子らもいることでしょう。はっきりと言葉にはできない「感じ」を、このシートに示された言葉と結び付けさせることによってその「感じ」をはっきりとさせていくしかけです。どの曲の鑑賞にも同じように使える点も優れています。
該当するワードに「〇」をつけていきます。いくつつけてもかまいません。「〇」をつけたものを、子らどうしで交流させます。そして、授業は、そう感じさせる( )の中の部分に目を向けさせていきます。
このように、
はっきりしないものを、映像の力を借りたり、言葉と結び付けさせたりしてはっきりさせていくこと。若い先生の工夫です。
なお、
先ほどの映像素材の出典である「NHK for School」には、よくまとめられた質の高い教材がラインナップされており、学校の指導者にはとてもありがたいものです。
私の国語科の授業では、「10min.ボックス 古文・漢文」という、10分間のコンパクトな映像素材をよく使わせていただきました。
読者の皆さんも、興味のあるものをチョイスして、秋の夜長にぜひ視聴してみてください。おすすめです。
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