見出し画像

君の話を聞かせて 『C'MON C'MON』を観た

「20センチュリー・ウーマン」「人生はビギナーズ」のマイク・ミルズ監督が、ホアキン・フェニックスを主演に、突然始まった共同生活に戸惑いながらも歩み寄っていく主人公と甥っ子の日々を、美しいモノクロームの映像とともに描いたヒューマンドラマ。

映画.comより

「ジョーカー」の怪演でアカデミー主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスが主演。
ニューヨークでひとり暮らしをしているラジオジャーナリストのジョニーを演じる。

子どもたちへインタビューしているジョニーの顔のアップからはじまるこの映画。

これがあまりにも自然で、
あれ、これってドキュメンタリーだっけ?
と思ってしまうほど。

目の動き、声と表情の不安定さ、リズム、
どれをとっても嘘がなく、けれど無防備なわけでもなく凝縮されていて、
ジョニーがただそこにいることがわかる。
すごい映画がはじまったと思った。


彼のインタビューに答える子どもたちは、
きっと芝居ではなく、ほんとうにインタビューに答えているのだろう。

劇中にもエンディングにも流れる彼らの答えは、
わたしが大人になっていくなかですり減らされてしまったことや、
いつのまにか忘れてしまったこと、
そうやって手放すしか上手く生きて行けなかったこと、けれどほんとうはじぶんの隅っこで覚えていること、
そういうものを思い出させてくれる。

ジョニーが妹から頼まれて始まった9歳の甥ジェシーとの共同生活もそうだった。

水曜日の朝には爆音でクラシックを聴くこと、
唐突に始まる孤児のおままごと、
大人から見たらわずらわしく、理解し難い奇妙な彼の行動も、
いつのまにかわたしが過去に忘れてきた、その時の自分にとっては確かで無垢な感情からで、
純粋であることがどれほど尊いことかわかる。

劇中、ジョニーがジェシーへ目を見て謝るシーンがある。
そのときのジェシーのジョニーの言葉をまつ目があまりにも綺麗で、不覚にも涙が出てしまった。

子どもは慣れない世界で、傷ついたり、学んだり、大慌ての毎日だけれど、
大人だって、やっと慣れてきたと思ったら、
親になって子育てが始まったり、自分の理解の範囲を超えたものにぶつかったりして大混乱している。

でも、その中で、
本当に大切なことを教えてもらったり、
教えたり、
そうやって人間は世界は続いていく。

そんな風に思わせくれる、
いつかの子どもたちに会いたくなる、
そんな映画だった。

ジェシー役の新星ウッディ・ノーマン君。
本当に素敵だったなあ。


さて、今日はどんな映画を観ようか。



この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?