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王国のあさ

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虐待の実体験を下敷きにしたフィクションです。 ココロを惨殺されたコドモは、大人になってすべてに絶望した時どうするのか。自分自身のシミュレーションでもあります。
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#サイコパス

王国のあさ(5)

王国のあさ(5)

 藤原アケヲの告白

 …何から、話しましょうか。
 たくさんあって、どこから手をつけたらいいか、わからない片付けみたいに。
 心の中が、散らかっているんです。
 …そうですね。
 わたしの名前。
 本当は、アキラ…だったみたいです。
 男の子がほしかったので、名前はそれしか考えてなかったそうなんです。
 父は、忍という名前のせいで、女みたいだとからかわれたらしくて。
 男らしい名前をつけてやるん

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王国のあさ(3)

王国のあさ(3)

 うちに帰ったら、わたしがだめな子だからわるいんだって。
 お父さんお母さん、二人にいわれる。
 妹もたぶん、そうおもってる。
 わたしには、いていい場所がないの。
 どこにいっても、じゃまみたい。
 もう、図書館に住んじゃいたいの。
 本を読んでも、しかられないもの。逆にほめてもらえるなんて、天国みたい。
 図書館の人、やさしいんだ。
 同じ組の男の子の、お母さんだったの。
 しらなかった。
 

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王国のあさ(2)

王国のあさ(2)

 わたしの家は、鉄工場をしています。
 ギイギイとおそろしげな音をたてて、毎日青や赤の火花を散らしています。
 きれいだけど、じっとみてはいけません。
 眼球が、やけどをしてしまうから。
 父は、お面をつけています。
 ロボットみたいなお面とつなぎの服や手袋は、父を月面探査者みたいにみせています。
 知っていますか。
 お面のガラスのところは、黒いガラスがはまっているんです。
 でも、よくみると黒

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王国のあさ(1)

王国のあさ(1)

 …それは、王国。
 かつて夢見し者の、永遠の楽園。
 

 けふのうちに
 とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ
 うすあかくいつそう陰惨な骸から
 血のりはびちよびちよふつてくる
 青い葡萄のもやうのついた
 これらふたつのかけた陶椀に
 おまへがたべるあつものをとらうとして
 わたくしはまがつたはうちやうをふるひ
 ちちははのざうもつを掻きだしたのだ

 ああ 
 わたくしのけなげないも

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