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【育児日記】ワーママ、2本立ての毎日

朝7:50
仕事用の腕時計を腕に巻きながら、ほら、そろそろ行くよ!と、iPadでお気に入りの動画を見ている娘を急かす。

今日はどっちの靴?
「ぴんくー」
自分で履ける?
「ママてつだってえ〜」
ほら、肩につかまって、足上げて!
狭い玄関でばたばたと支度する。靴がとっ散らかっていても気にしない。とにかく時間までに家を出る。

「かぎは娘ちゃんがやる!」
電動自転車の鍵を娘に渡して、じっと待つ。
ガチャガチャやって、開けられない〜どうして〜と言い出したところで手を貸す。
また「娘ちゃんがやるの!」と奮闘する小さな人のご機嫌を損ねないよう、なんとかシートベルトを締めて、ヘルメットを被れば、こっちのもの。
びゅーんと保育園まで漕いで行く。

8:00
登園。
お気に入りの犬のぬいぐるみを抱っこしていた娘、ぬいぐるみにバイバイを言って、母とハグ&タッチして教室へ入っていく。
すれ違うほかの子どもの保護者たちと慌ただしく挨拶を交わす。
子どもを抱っこした保護者が入ってきたらドアを開けたり、さっと道を開ける。1日の最初の山場、保護者同士の無言の連携プレー。
通勤用のカバンから大きな犬の顔がはみ出ていても、ここでは誰も気にしない。

8:30
始業

15:30
退勤
のはずが
15:45
になってしまい、焦る。

大急ぎで駐輪場から自転車を出す。お、重い。
疲れているので、事故がないよう周囲に気をつけつつびゅーんと帰宅。
お迎えのあと公園に行くため、通勤用の服から汚れてもいい服に着替えて、急いで家を出る。

16:20
本日二度目の保育園。
朝とは違ってゆっくり、1日働いた身体の重さを感じながらドアを開ける。私を見つけると、かけよってくる娘。先生が髪の毛をかわいく結んでくれている。
おかえりなさーい!と先生に言われると、今日も無事にここまでたどり着けた、と思ってほっとする。

16:30
近くの公園へ。途中にある店で買った駄菓子を、公園のベンチで食べるのが娘のルーティン。
今日はパステルカラーの四角いグミのようなお菓子。爪楊枝で刺して一粒ずつ、口に運ぶ。
これはぴんく、これはみどり。
座り直した拍子に、ぽろりとひとつ地面に落としてしまった。
ああ、もうそれはお砂がついちゃったから、アリさんにあげようか。
「たべたかったあ」と眉間に皺をよせる娘。

急に、時間の流れがゆるやかになる。
久しぶりに、深く呼吸する。
娘の隣にすわって、ただぼーっとする。
小学生の男子たちが大きなバッタを捕まえて盛り上がっているのを、遠巻きに観察する。

仕事中、PCのショートカットを駆使して、トイレに行く暇も惜しんで。
そうして必死にかき集めた時間が、薄く、夏の夕方の空気に溶けながら、引き伸ばされていく。

バルバルバルバル…と音がして、頭上をヘリコプターが飛んでいく。
大きいねえ、と娘と目を細めて見上げる。


毎日、まるで二本立ての映画を観ているみたいだと思う。
例えばハリウッドのアクション映画と、
日常を淡々と描いた邦画。
かたや、地球の未来を背負って炎のなかで戦い、
かたや、春の川べりを散歩しているような。

ちょっと大げさすぎるかもしれないけれど、そのくらい全然違う世界観を、毎日繰り返している。
デスクにかじり付き、コピー機まで早歩きして働く時間と、公園のベンチに座って、子どもがお菓子を食べているのを、ただぼんやり見ている時間。
ぐわん、と時空が歪んだんじゃないかというくらい、全然違う世界観が、1日の中に共存していて、びっくりしてしまう。

まだ時計を読むこともできない小さな人にとって、今日という時間はどんなふうに流れているのだろう。
グミを一粒ずつ楊枝で刺して、慎重に口に運ぶ。
そういう時間の使い方を、大人になって忘れてしまったような気がする。
子どもといると、時々こうやって、忘れてしまったことを思い出す。

伸びたり縮んだりする時間に翻弄されながら、今日もなんとか、二本立ての日々を生きている。


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