紀伊路SCAPE

熊野三山を目指す人々がかつて歩いた、大阪から和歌山田辺までを結ぶ参詣道・紀伊路。この歴…

紀伊路SCAPE

熊野三山を目指す人々がかつて歩いた、大阪から和歌山田辺までを結ぶ参詣道・紀伊路。この歴史ある道を現代に蘇らせるプロジェクトが「紀伊路SCAPE」です。紀伊路を旅することで、現世の濁りを清める旅の体験記を紹介します。https://www.kiiji-scape.com/

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  • 紀伊路コラム

    紀伊路復活に携わる各界の第一人者たちが、紀伊路を歩いて感じたことなどを発信します。

最近の記事

「ハラす」から「ハレる」へ(佐々木淳/紀伊路SCAPEリサーチディレクター)

紀伊路の旅を終え、東京へ戻って、いつも感じることがある。 都市の日常に戻ると、目に見えて「謙虚さ」がどんどんなくなっていくように感じるのだ。 ここでいう謙虚さとは、身の回りの風土や環境への態度、ということにちかい。   日々の仕事に戻れば、たちまち時間と仕事に追われる。 世間の情報もひっきりなしに入ってくる。ニュースやSNS。たくさんのモノや店。たくさんの会話。時間はどんどんどんどん、こま切れになっていく。 そんな環境でつぎつぎ発生する義務や欲望、それらがひっきりなしに空間

    • 紀伊路が織りなすパラレルワールド(高橋英明/音楽家)

      古来から巡礼がなされてきた場所がある。 スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラなどが、その筆頭だ。 紀伊路も7世紀以降、熊野三山へつながる道として、あまたの人が歩いてきた。 なぜ、人は歩こうと思うのだろうか。そして、巡礼とは何なのか。 昔であれば、病気の治癒を祈念するためだったかもしれない。 若い巡礼者もいるだろうが、多くはある程度年齢を重ねて、いつの間にか澱のようなものが溜まってきた時、一度立ち止まり、振り返り、考える時間を欲するのではないだろうか。  「紀伊路を

      • 紀伊路の旅へ - プロローグ – (GOTO AKI/写真家)

        大学生だった30年前、世界一周の旅の途上で、長距離を歩く数多の旅人たちと出会ってきた。  サハラ砂漠を徒歩で横断しているという冒険家。 アフリカを南から北まで歩くバックパッカー。 「いつか自分も徒歩の旅がしたい」 長い期間、潜在意識の中に沈澱していた、長距離歩行への憧憬。 2023年1月、その思いを発酵させる話が、音楽家の高橋英明さんから不意に舞い込んだ。 「AKIさん、(旋律デザイン研究所の)佐々木さんから連絡が入ると思うけど・・・紀伊路のことを先に言っておこうと思っ

        • 「旅人を見守るDNA」を受け継ぐ紀伊路の人々(小川雅則/和歌山大学客員教授)

          和歌山大学・紀伊半島価値共創基幹の小川雅則客員教授は、田辺市役所や田辺市熊野ツーリズムビューローで勤務してきました。熊野古道における観光振興に長年携わってきた視点から、「今、紀伊路を復興させること」の意義などを語っていただきました。 ――これまでの観光行政において、紀伊路はどのような立ち位置にあったのでしょうか? 観光行政としては、中辺路へ全てのエネルギーを集約させていたので、なかなか紀伊路と中辺路の接続までは及んでいませんでした。そのため残念ながら、思い切った観光資源と

        「ハラす」から「ハレる」へ(佐々木淳/紀伊路SCAPEリサーチディレクター)

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        • 紀伊路コラム
          8本

        記事

          民俗学から見る紀伊路 川を境目に変わる文化圏(吉村旭輝/和歌山大学准教授)

          和歌山大学の紀伊半島価値共創基幹で、民俗学や芸能史を研究している吉村旭輝准教授は、これまで何度も紀伊路沿いの地域でフィールドワークを行ってきました。 2023年11月に「紀伊路SCAPE」のメンバーと一緒に紀伊路を歩いたことで、「いつもと違った視点で地域を見ることができて、地域の良さがわかりやすく浮かび上がった」といいます。見方によって異なる表情を見せる紀伊路や、民俗学の観点で見た紀伊路などについてお話を伺いました。 ――我々とは、紀伊路の内原王子神社(日高町)から叶王子社

          民俗学から見る紀伊路 川を境目に変わる文化圏(吉村旭輝/和歌山大学准教授)

          紀伊路全体を歩き通すからこそ見える、歴史やつながり(上野正芳/日本経済新聞記者)

          日経新聞記者の上野正芳さんは、熊野古道が世界遺産に登録されて20周年となる2024年に合わせて、半年以上にわたる長期連載「熊野古道を歩く」を執筆されました。熊野古道の中辺路や小辺路、大辺路を歩き通して取材し、周辺に暮らす人々の営みや、巡礼道に根付いた歴史や文化を伝えてきました。 紀伊路SCAPEのメンバーとも紀伊路を6日間歩き、その道中の一部は連載でも紹介されています。ともに歩いた紀伊路の道のりについて、振り返っていただきました。 (連載「熊野古道を歩く」の紀伊路編㊤)

          紀伊路全体を歩き通すからこそ見える、歴史やつながり(上野正芳/日本経済新聞記者)

          神聖な道を歩き、足を磨く(田中雅也/アントクエステート代表)

          2013~2023年に日本ユニストに在籍し、不動産事業部を率いてきた田中雅也さん。紀伊路SCAPEの始点となる熊野古道事業を支えてきた田中さんに、2023年1月に紀伊路を歩いた思い出を振り返っていただきました。 ――田中さんは不動産事業の責任者でありながら、日本ユニストの熊野古道事業にも長く携わってきました 不動産の経験を生かして物件を探した上で、建築関係の調整をして、宿をつくってきました。熊野古道事業が始動するまでは現地に行ったことはなかったのですが、奈良の大峯山という

          神聖な道を歩き、足を磨く(田中雅也/アントクエステート代表)

          時空がうつろう旅、紀伊路(佐々木淳/紀伊路SCAPEリサーチディレクター)

          自分はいまいったい、何をしているのだろう。 そう思わずにはいられない、どうにも「茫漠とした」時間の連なり。 そんな時間にだんだん馴染んでいくと、次第に自分の知覚や気分のほうが変わっていき、いつのまにか心身がすっかり入れ替わってしまう。  リサーチャーとして、足掛け3年をかけて紀伊路をリサーチしてきた。 大阪~田辺(~清姫)の全線踏破も3回行った。文字通り10日間連続での全行程体験だ。その上で、紀伊路の旅を偽りなく、そしてややざっくりと表現するなら、冒頭のような感じになる。

          時空がうつろう旅、紀伊路(佐々木淳/紀伊路SCAPEリサーチディレクター)