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パワハラはなぜ無くならないのか?

昨今、医者の世界でもパワハラが取り沙汰され、時に世間を騒がせることも珍しくはない。「パワハラはいけないこと」という認識は確実に広まりつつある。

では実際はどうだろうか?

きっと普段こう感じているはずだ…

パワハラ全然減ってないやん、と。

医療界でもパワハラは毎日のように行われていますヽ(*^ω^*)ノワッショイ

怒号の飛ぶ臨床現場、担当医を吊し上げるだけのカンファレンス、指導の名目で行われる人格否定など、挙げればキリがない。パワハラの言い訳No.1は「指導だった」である。

何故みんなこんなに指導したがるのだろうか?ある日突然、指導大好きパワハラ星人に転生でもするのだろうか?

ここではパワハラが起きる理由について考察する。


平均回帰の法則

皆さんは平均回帰というものをご存知だろうか?

平均への回帰(へいきんへのかいき、または平均回帰回帰効果)とは、ある1つの試験結果について偏った成績(特別に良かったもしくは悪かった)の集団を対象として2つ目の試験(時間的には逆でもよい)の結果を見ると、その集団の平均成績は1つ目より2つ目のほうが平均値に近づくという統計学的現象をいう。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/平均への回帰

何を言ってるか分からないと思う(もちろん私も詳しくはわからない)。

要は「普段とは違う偏った結果が出ても、その次には元に戻る可能性が高い」というものである。

例えば、普段テストで80点を取る学生が、あるテストで30点を取った。では次のテストでこの学生は何点を取るだろうか?平均回帰に従うと、この学生が取る点は80点(この学生の平均値)に近くなる。この場合、30点というのが特別偏った結果(たまたま体調が悪かったりテストの傾向が大きく変わったなど)なだけで、普段80点取れている人なら次もまた30点でした、みたいなことはそうそう起こらないだろ、ということである。もちろん厳密には意味が多少は異なるとは思うが、このまま話を進める。

職場で例えると、普段は80点のパフォーマンスを出してくれる後輩が、ある月は30点くらいのパフォーマンス(ミスを起こした、仕事のペースが落ちた、など)だったとしても、翌月には元の80点に戻るだろう、ということになる。

この場合調子を落とした原因は体調が悪かったとか、プライベートで問題が発生したとか、たいてい本人にどうしようもない問題で、たまたま不運だっただけである。偶然の不安が連続する可能性は低いので、放っておいてもまた元に戻る。

たまたま調子を落としても
暫くすると元に戻る

因果関係の誤解

問題はここからである。

同様に部下がミスを起こすなど、パフォーマンスが一時的に下がったとする。

上司はめちゃくちゃに怒る

上司は何かしらの指導を加えるだろう。単に怒るか、マネジメントの勉強してるをしてる人ならコーチングとか、なんらかのスキルを使って改善を図るだろう。

指導した後のパフォーマンスは平均に近くなる

するとどうだろう、パフォーマンスはすぐに元に戻る。上司はきっとこう思うだろう、「自分の指導のおかげに違いない」と。

上司側がこの経験を数年繰り返したらどうなるだろうか。なにかにつけて指導、指導…指導大好きパワハラ星人の完成である。

普段ミスをしない部下がミスを起こしたとする。上司はめちゃくちゃに怒る。するとどうだろう、翌日からはミスをしなくなるのである。

なぜミスをしなくなったのかというと、「指導が良かったから」ということは1ミリも関係なくて、「そもそも普段はミスをしないから」である。本人だってミスした自覚があるわけだから、何も言わなくても自力で普段より注意する。

「人間はそもそもミスをするものなので、ミスを責めるのではなくシステムを改善しましょう」みたいな話は聞いたことがあるだろう。医療安全の講義でも言われている。だが上司側からすると理解できない。頭では理解しても、感覚的に理解できないのである。

なぜなら、自分が“指導”することで状況が良くなっている、と思い込んでいるからである。「いやいや、オレが言ってやらないといけねーんだよ」みたいな。自分の言動が周囲に影響を与えていると勝手に信じているので、実際は1ミリも役に立っていないとはまさか思うまい。

もちろんストレス発散で怒る人、単に性格が悪い人など色々いるだろうが、この現象が2024年になっても部下を怒鳴りつける上司がいなくならない理由の一つに思えてならない。

思わぬパワハラを避けるために

もちろん全てがこの通り、と言うわけではないが、あえて意図的にやっている場合や本人に問題意識がない場合などを除けば、パフォーマンスは一時的に落ちてもまた元に戻るし、大きなミスなどめったに起きないのである。

怒るではなく叱るとか、普段からの承認が大事とか、アメとムチを使い分けるとか、そんなものは全部小手先で「そもそも怒る必要がない」のである。
 
自分が行っている指導は本当に必要か?なかったとしても状況は変わらなかったのではないか?一度そう言う視点を持って俯瞰してみて欲しい。


今回の記事はこれでおしまいです。

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最後に、Amazonアフィリエイト始めたので、とりあえず僕が愛用してる水置いときます🐤