見出し画像

注入!ボラギノールA!

きっかけはなんだったかわからないが、痔になっている気がする。いや、間違いない。切れ痔である。

肛門を傷つけるような行為は特にしていないと記憶しているのだけど、ある日うんこをしていたら「あれ? なんだか少しだけ痛い気がするボラギ」と思った。

それから何回うんこをしても少しだけお尻の穴が痛い。悶絶するほどではない痛みなのが心憎い。奥歯にアスパラのカスが残っていることに気づいたときくらいの違和感。





過去、このnoteに書いたかどうかも覚えちゃいないが、いつだったか「切れ痔」になって肛門科にいったことがある。

そのときは病院にお世話になるほど痛くて、看護師さんが見守る中、おっさんの先生に「それじゃイトーさん、ズボンを脱いでもらって」と言われたときには、へいよろこんで、と喜び勇んでズボンをおろしたものである。

それで先生が小型カメラとともに、指を私の下半身唯一の穴に突っ込み、私の肛門アスタリスクをリアルタイムで見せながら「イトーさんね、これ、見えるでござんしょ?」と言うので私は身をよじって「え、ええ、見えますな」と言う。

先生は少し間をおいて「イトーさん……これはね」と言うから「ど、どうですかね?」と聞くと「切れ痔ですね」と言うので、私は心の中で、それはわかってんねんとツッコむ。



そんな過去を持っている私です。

だから先日妻に「なんかケツの穴に違和感がある気がする。これはもしかするとキレてるかもしれん」と言うと妻は「え? 再発?」と言うが、私は「いや、再発未遂だな。病院にいくほどじゃないよ」と爽やかにニコリ。

妻は「でも、めんどうなことになる前にボラギっといたほうがいいんじゃない?」というボラギノールアドバイスをしてくれる。

過去の切れ痔のときにもお世話になったボラギノールであるが、我が家にすでにボラ在庫はない。私としては現状を変えることがめんどうだから「まぁ、必要になったら買ってこようかな」とつぶやく。


こういうときの自分がいやになる。医療行為や保険にも通底するが、おおごとになってからでは万事おそいのだ。必要になってから考えようかなではトロすぎる。

というわけだから、私はボラギノールを近所のドラッグストアーで購入することにした。ちょうど今日の日中の話である。




札幌市内中心部、みなさんお馴染み狸小路たぬきこうじ商店街にあるサツドラに向かう。

サツドラとは北海道民御用達のドラッグストアーである。正式名称は「サッポロドラッグストアー」で、ほぼ全員が「サツドラ」と略す。

よく晴れた晴天の中、まもなくサツドラに着くぞ、これぞボラギノールだ、というタイミングで、たまたまお取引先の男性に会った。「あ、どうも!」と会話を交わす。

繰り返すようで申し訳ないけど、私の肛門は「少しだけ」痛い。ちょっとした違和感であるから、切羽詰まっているわけでもない。この方との会話を「あ、すみません」と言って早々に切り上げる必要もない。肛門が完全に裂傷する前に予防したいだけ。

男性は「お、イトーさん、こんな日中に! これから商談ですか?」と聞かれたので「いえいえ、実はここのサツドラで買い物の用事がありまして。ボラギノールを1個買うんですわ」と言うと先方は「あら、それは大変」とニヤリとしていて「それじゃまた〜」とセイグッバイ。



それからサツドラの中に入るんだけど、普段私はドラッグストアーで買い物をしないから、目的のボラギノールがどこにあるのかわからない。トイレットペーパーなら大きいからすぐにわかるけど、ボラギノールは小さいからどこにあるのかすぐにわからない。


なのでサツドラの店員さんをとっ捕まえて聞いたわけ。


「ちょっといいですか? ボラギノールってどこにありますかね?」


店員さんは若い女性だったのだけど、とても丁寧に接客してくれて、さすがサツドラクオリティーだぜ、なんて思いながら私は「ボラギノールA 注入軟膏」をゲットしたわけ。

この芸術的なデザイン


それで買い物を済ませて妻にLINEで「ボラギノールライフ、再び」なんて報告したくらいにして狸小路商店街を歩いていたのだけど、ここでイトー、思ったのである。



……私も大人になったなぁ。


若いころだったら、ボラギノールをドラッグストアーで探すなんて恥ずかしくてできなかった。店員さんに「どこですかボラギ?」とも絶対聞けなかった。

それがいまはどうだろう。背筋をピンと伸ばして、まるで内閣総理大臣に任命されたときのような荘厳さで「ボラギノールはどこにありますボラギか?」なんて聞けるようになっている。


ボラギノールがどこにあるかを躊躇なく店員さんに聞けるようになったら、こじらせていない大人の仲間入りをしたと思ってもいいのかもしれない。

とにかくお尻が少しだけ痛い。


〈あとがき〉
若いころは自尊心が高すぎて、ボラギノールをしている自分がきっと許せなかったと思います。初めて切れ痔になったのはいつだったっけ、とすっかり忘れてしまいました。現在、円座クッションなどの類は必要なく、いたって普通の日常生活を送れていますが、トイレにいくと、ボラギノールを私の中に注入して心の平穏を保っているところでございます。今日も最後までありがとうございました。

【関連】肛門にまつわる話はこちらも

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?