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へその緒は何色?

お腹の中の赤ちゃんとママは「へその緒」で繋がっているが、その色は人類共通でである。

これはおそらく、出産経験のある方なら「知っている」という人のほうが多そうな話。へその緒は白い。


先日、とある43歳の男性が「イトーさん、私はね、第二子が生まれたとき、妻が病院に間に合わなくて、私の手で赤ちゃんを取り上げたことがあるんですよ」と言っていて、え〜! そんな貴重な経験をされているんですか! それは大変でしたねぇ! と心からそう思っているリアクションをした。

彼は続けて「でね、イトーさん、へその緒ってあるじゃないですか」と言う。

私は「へその緒、ありますね」と答える。すると神妙な面持ちで質問してくるわけだ。すなわち、


「へその緒って、何色か……ご存じですか?」


この質問の意図はおそらく、

・へその緒ってよく聞くけど、何色なのかを考えたことってないですよね

・なんと、想像もしない色なんですよ

・へその緒は白いんです!

ということを伝えて「へぇ〜! そうなんですね!」というリアクションを引き出したい質問である。へその緒が白いということを私は知っていたが、彼の熱心な誘導クエスチョンに乗っかることにした。


「へその緒? 考えたこともないですね……うーん、ピンク?」

「と、思いますよね? それがですね、イトーさん、へその緒は白いんですよ! 私、この手で赤ちゃんを取り上げたとき『わ、へその緒って白いんだなぁ!』と思いましたもん! この目で見たんです!」

私はもう、眼球がこぼれんばかりに「へぇ〜! そうなんですね!」とリアクションした。知ってるのに。43歳の彼はとても満足そうだった。うんうん、満足そうなのはいいことだ。



そんな会話をしてからまた別の日、その43歳の男性が私ではない別の男性と話しているシーンにでくわした。よく会う間柄なのだ。彼は20代の男性と会話をしている。そして私がいることに気づかず、時は来たとばかりに話し出した。

「〇〇さん、私はね、第二子が生まれたとき、妻が病院に間に合わなくて、私の手で赤ちゃんを取り上げたことがあるんですよ」

まったく同じ会話の導入。見事なデジャブ。
話しかけられた20代の男性は「そうなんですか」となぜか無表情。


「でね、〇〇さん、へその緒ってあるじゃないですか」

「はい」

「へその緒って、何色か……ご存じですか?」

20代の男性は食い気味で答えた。

「白ですよね。ぼく、妻のへその緒、切ったことあります」


43歳の男性は「え? 切ったことあるんですか?」と驚いていたものの、期待通りではないリアクションに対する不満感なぞおくびにも出さず、ニコニコしていた。


プロだなぁと思うと同時に、一連の会話にずっこけそうになり「うわ、この会話劇、俺との対比! noteに書かなきゃ! ネタをありがとう!」と思ったのであった。


<あとがき>
相手が期待しているであろうリアクションにきちんと乗っかってあげるのもいいですが、20代の彼のように知っていることは知っている、というスタンスでいるほうがなんだか楽な気がします。仕事では後者のリアクションのほうがいい気はするのですが、プライベートの雑談では期待に応えてあげたくなっちゃうんだよなぁ。今日も最後までありがとうございました。

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