vol.1「まず、やる!」ゼロから1へ。紀北町長・尾上壽一さん
この記事は、「しごとカード」に登場していただく“紀北町で働くひと達”に、地域おこし協力隊・豊川がインタビューしていくシリーズです。「しごとカード」には、企業情報だけでなく、紀北町でいきいきと働くひとが感じる「仕事のやりがい」や「紀北町の好きなところ」等も紹介します。
あなたは、どんな風に働きたいですか?どんなところで、どんな人たちと働きたいですか?あなたが、自分に問いかけ、自分の中にある答えと出会っていく。そのきっかけに、この note がなれたら嬉しいです。
平成21年に紀北町の町長に就任され、現在3期目となる尾上壽一(おのうえとしかず)さん。学生時代のエピソードを交えながら、仕事で大事にしていることや「自信がなくなった時に心の支えになっているもの」等、普段はあまり話されないようなことも飛び出しながら、楽しく語っていただきました。
大事にしていること
豊川 仕事に対して大切にしていることを教えて下さい。
町長 平成29年度にスタートした紀北町第2次総合計画では、まちの将来像を「みんなが元気!紀北町~豊かな自然、にぎわいと笑顔があふれるまち~」と定めています。その中の「みんなが元気!」の元気を、わたしは大切にしています。元気の源は、健康です。健康は笑顔をつくり、幸福の基礎となります。だから、町民の健康を大事にしたいし、わたし自身の健康も大事だと考えています。
町長 年度始め式では、いつも「明るく、元気に、前向きに!知恵を絞って、楽しもう!」と職員に話し、「このスローガンで生きていきなさい。これで仕事していきなさい。」と言っているんですよ。仕事についての話なので、ここでは「知恵を絞って」と表現していますが、心の中で「人生を楽しもう!」と言い換えてもいいですよね。「楽しみながら取り組むのが大事!」もうね、こればかり言っています(笑)。
豊川 確かに、前向きに考えるのも、楽しむのも、健康でないと難しい。だから、町長は健康と楽しむ気持ちを大切にしていらっしゃるのですね。
大切にしている言葉
豊川 好きな言葉はありますか?
町長 40歳までは「一生懸命」という言葉が好きでしたね。「なにごとも一生懸命やる!」という思いでした。今は「恕(じょ)」という言葉が好きです。40歳ぐらいの時に、何かの本で読んだんですけど、恕は、孔子先生の言葉で「子貢問うて曰く(しこうとうていわく)」から始まるんです。「人間として一生おこなうべきことは何ですか?」という子貢からの問いに、孔子は「それは、恕(思いやり)だ」と答えます。
町長 わたしは50歳頃から「一生懸命だけで人生を乗り切れるのか…」と思っていたのもあり、その本を読んだときに「これからは“恕”だ」と。そして、55歳で立候補した町長選には「すべては住民目線で、すべては住民とともに」という基本姿勢で挑みました。「すべてのことは、思いやりをもって、相手の立場をよく考えてやらなあかん。施策もそうなんですよ。」という思いを言葉にしたんです。それから「恕」という言葉を大切にしています。この話をいろんな所でしていたら、町民のかたがこれを作って持ってきて下さったんですよ。
豊川 わぁ、素敵ですね!
嫌なことから片付ける
豊川 ご自身の「長所、才能、取柄」と思うところを教えて下さい。
町長 そうやなぁ、『嫌なことでもやる』ところかな。わたしは、嫌なことを先に片づけるんですよ。嫌なことをそのままにしておくと、ずっとそのことに縛られる。だから「嫌なことから先にやっとこか!」と。例えば、60才でジョギングを始めたんです。あと、筆ペンも始めてね。昔から走ることは大嫌いで、字も汚かったんです。それを「えいやー!」で取り組み始めました。
町長 仕事の話になりますが、わたしが町長に就任した時、紀北町は、海山町と紀伊長島町の合併後の難しい時期でした。本庁舎の移転や紀北中学校の建設等の合併時の課題をまずは片づけていかなければ!と奮起しました。「積み残しを片づけなければ、前には進めない!」そう思って取り組んだので、2期目までに積み残し課題はほぼ片付きました。今思い返すと、必死でしたね。「難しいことから片付ける!」の気持ちで乗り切れたと思っています。
三日坊主が好き
町長 わたしは、大学時代に合気道と出会って、その時の恩師が「続けることが大事」とおっしゃっていたので、始めたことは投げ出さずに続けるべきだろうなと思っています。
町長 それとはちょっと矛盾するかもしれませんが、わたしは「三日坊主」が好きなんですよ。なぜかと言うと、三日坊主というのは、ゼロから1にすることなんです。1で砕けるかもしれないけれど、その1がないと、たとえ千を掛けてもゼロなんです。ゼロに何を掛けてもゼロ。だから、なんでもいいからチャレンジ!まず始めてみて1にすれば、そのあと何かが生まれていくかもしれない。
三日坊主ということは、三日はやっているよね。たとえ三日でもやってみたことは、後々に繋がる場合もある。10年経ってから「あの時やったことがあるから、また取り組んでみようか」ということもある。とにかく、チャレンジする。三日坊主でもいい。まずは、やってみるということが大事!ということで、わたしは三日坊主が好きなんです(笑)。
嫌なことから逃げずにチャレンジするためには…
町長 嫌なことから逃げずに、まずやってみるためには、元気が必要だと思います。元気がないと「よし、やってみよう!」という前向きな気持ちにはなりにくいですよね。冒頭でも話したように、元気の源は健康です。『まずはやってみよう』と思える自分でいるために、わたし自身も健康を意識しています。
運と気合で育ってきた男
●3人の師
町長 わたしの人生には、3人の先生がいるんです。1人目は小学校4・5・6年の担任の先生、2人目は高校時代の塾の先生。
わたしが高校生の頃は旺文社のテストというものがあったんだけど、そのテストでわたしは英語が4点か6点で(笑)。「これではどこの大学にも入れない…」と焦って入った塾で、その先生に出会いました。先生の教え方がわたしのツボに合ってね。夏休みが過ぎた頃には60数点になったんですよ!それで、わたしは英語の先生になりたくなって。でも、第1志望の英文科は落ちたので、合格した大学に入学しました(笑)。
町長 話はちょっと戻りますが、わたしは中学時代にいじめにあったんですよ。その体験から、自分のことは自分で守れるようになりたいと思うようになりました。中学の時に『武道をやる』と決めて、大学で合気道と出会いました。その合気道の先生が素晴らしい方でした。さっき話した第1志望の学校に落ちたからこそ、その先生に出会えたわけでね、出会いって面白いね。
●人生の根幹
豊川 これまでのお話から、合気道は町長にとって大きな影響を与えているように感じたのですが、町長にとって「合気道」とは、何ですか?
町長 合気道の部活動で培ったこと、合気道で培ったことはすべて、今の私のベースになっています。合気道は「わたしの人生の根幹」と言えます。合気道というのは、論理的にいうと、人の力を受け流したりしますので、その考え方は人との付き合い方にも表れます。
合気道は、相手といたずらに強弱は競わず、入身(いりみ)と転換(てんかん)の体捌き(たいさばき)と呼吸力(こきゅうりょく)から生まれる技によって、お互いに切磋琢磨し合って稽古を積み重ね、心身の錬成を図るのを目的としている。(公益財団法人合気会HPより引用)
町長 わたし自身、大きな影響を受けた合気道ですが、わたしが紀北町にUターン移住した時は町に合気道の団体がなかったんです。それが平成18年に、偶然、町内で合気道をやっている方と出会って意気投合して!それから町内に合気道の団体を立ち上げました。そして、今まで続いています。
豊川 すごいご縁ですね。
町長 そうなんですよ、わたしの人生は本が書けるぐらい色々と波があってね。ご縁と運と気合で育ってきた男です(笑)。
小さい頃のまま
豊川 紀北町の魅力や紀北町で好きな場所を教えて下さい。
町長 わたしは「田舎」が好きなんです。紀北町には田舎らしさがある。自分の町を「田舎」と呼ぶと卑下するように聞こえてしまうかもしれないけど、そうじゃないんです。悪い意味はなく、好意をもって「田舎」と表現しているんですよ。紀北町は、自然も全部きれい。食べ物も美味しい。人間性もいい。わたしは、この田舎独特の落ち着いた雰囲気が好きなんです。ガサガサしてないでしょ?わたしは若い頃は東京に行ってましたが、帰ってきて本当に良かったなぁと思います。
豊川 好きな場所は?
町長 やっぱり銚子川かな。小さい時からずっと遊んでました。銚子川は、わたしが小さかった頃のままで残っています。すごいことですよね。わたしは今でも土曜とか日曜は、銚子川のほとりを歩いています。季節によって吹く風が、本当に気持ちがいいんです。
心の支えになってくれる手帳
豊川 最後に、紀北町の若者たちへのメッセージをお願いします。
町長 「自分の考えをしっかり持つ」ということかな。流されるままに生きるのではなく、「自分として何をすべきか」を考えてほしいですね。
わたしは本を読むのが苦手なもので、「本を読め」とは言いません。30代から1年に1冊か2冊しか本を読まない。たくさんは読まないけれど、読んでいて目にとまった言葉を書き溜めているんですよ。
と仰りながら、手帳を取り出して見せてくれました。
町長 ほんの僅かなことなんですよ。こんな風にね、年号を書いてね、目に留まった言葉をまとめています。20年ぐらい前からやっているのかな。ずっとやってるんです。そしてね、時々、読み返します。自分に自信がなくなった時に、このメモを見ると良いんですよ。
町長 これなんか、良かったですよ。『課長 島耕作』の言葉やね。部長のときのやけど(笑)。「どこに在っても、自分のスタイルを貫き通したい」と。さっき話した「流されるままに生きるのではなく、信念をもってやる」という話やね。
その手帳には、本で見つけた言葉だけでなく、漫画のセリフやテレビでタレントが話していた言葉も書き留めてありました。
町長 これは、以前に職員の掲示板に書いたね。
朝起きたら「楽しい」を10回言おう。10回目は「楽しきってく!(ものすごく楽しい、の意・紀北町の方言)」で結ぼう。その日1日、何かが違うかも。毎日続けよう。
本をたくさん読まなくても、自分の人生の歴史の中で書き溜めてきたもの(心に響いた言葉たち)は、自分の心が弱くなった時に響くんですよ。ブレた心を戻してくれる。
豊川 自信がなくなったとき、自分で書き溜めた言葉を読み返すことで「自分は何をすべきか」という問いに答えられるのですね。それにしても、20年も続けてこられているのがすごいです!合気道の先生の「続けることが大事」の言葉がここにも活きているんですね。
町長 難しいことをやっているわけじゃなくてね、本を読みながら、気になった言葉があったら、ページの隅をちょっと折っておく。テレビを見ながら、ちょっとメモしておく。あとでまとめて手帳に整理する。そんな感じですが、この言葉メモには、わたしの心の支えになっているものが結構あるんです。是非やってみて下さい。
豊川 はい、やってみます!
町長 今日は普段喋ったことがないようなこともたくさん話したなぁ(笑)
わたしは太陽が大好きなんです。太陽の光を浴びていると元気が出ます。
とにかく「明るく元気に!」ですね。楽しみながら仕事していきましょう。
豊川 はい、「元気」と「楽しむ気持ち」が大事ですね。本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
【紀北町長・尾上壽一さんからのメッセージ】
・明るく、元気に、前向きに、知恵をしぼって楽しもう!
・三日坊主でもいい。とにかく、やってみる。ゼロから1にしよう。
・「前向きに、やってみよう!」と思える自分でいるために、健康であることが大事。
・自分の考えを持てるように工夫をしよう。自分の工夫が自分を支えてくれる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回の紀北町長・尾上壽一さんのお話はいかがでしたか?あなたの中にある仕事に対する思いや大切にしていることを感じるきっかけになったら嬉しいです。
(取材先情報)紀北町役場 https://www.town.mie-kihoku.lg.jp/
〒519-3292 三重県北牟婁郡紀北町東長島769番地1
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