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vol.3 「間違ってもいいから自分の意見をしっかり伝える。」株式会社ディーグリーン代表取締役 東 城 さん

「きほくる|紀北町魅力ナビ」にお越しいただき、ありがとうございます。

今回の「しごとカード」インタビューは、田舎から『オモシロイ!』をデザインするをミッションに掲げるデザイン会社・ディーグリーン代表取締役 東 城(ひがし じょう)さん。

東さんは、高校卒業後、東京にあるアメリカの大学やロンドンでデザインを学び、その後、紀北町に戻って個人事業主として起業。数年後に法人化し、株式会社 ディーグリーンの代表取締役になられました。

「Uターンのきっかけは?」という質問には「(就労ビザが取れず)海外に住めなくなったから」とのこと。熱い思いを胸に突き進んできたのかと思いきや、「そういう流れだったんですよね」と静かに語る東さん。

冷静でありながら、ディーグリーンを含めて5つの事業に携わる東さんの「仕事に対する思い」や、思いが仕事になっていくコツなどを語っていただきました。

この記事は「しごとカード」に登場していただく“紀北町で働くひと達”に、地域おこし協力隊・豊川がインタビューしていくシリーズです。「しごとカード」は、企業情報だけでなく、紀北町でいきいきと働くひとが感じる「仕事のやりがい」や「紀北町の好きなところ」等も紹介します。

あなたは、どんな風に働きたいですか?どんなところで、どんな人たちと働きたいですか?あなたが、自分に問いかけ、自分の中にある答えと出会っていく。そのきっかけに、この note がなれたら嬉しいです。


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1.知っている人がいないところに行きたい。


ーー東さんの紀北町での仕事は、どんな風に始まったのですか?


東さん(以下、敬称略) 僕は、名古屋・東京・ロンドンなどで暮らしたのですが、都会から紀北町に帰る度に「デザイン性があるものを持ち込めば、この町はもっと面白くなる。」と思っていたんです。


ーーデザインには元々興味があったのですか?


 子供の頃から、絵を描いたり見たりするのは好きでしたね。小学校時代の将来の夢はマンガ家、実際にマンガも描いていました。「デザインの仕事がしたい」という思いは、割と小さい頃からあったと思います。


ーー小さい頃からの夢に向かって突き進んだ結果、今のお仕事になったのですか?


 突き進んだというよりは、「そういう流れだった」という感覚です。僕は、小学校から中学校まで不登校だったんです。当時は勉強もできなくなって周りの人間関係がすごく嫌で、「知ってる人がいないところに行きたい」とずっと思っていました。

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「赤いリギ山」ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー


ーー小さい頃から絵を描いたり見たりするのが好きだったとのことですが、好きな画家や作品は?


 マルク・シャガールやジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーが好きです。シャガールは、小学生の時に父と一緒に三重県立美術館で作品を見て、好きになりました。作品名は全く覚えていないんですけどね。あとは、パリのオペラ座の天井画もすごく印象に残っています。ターナーは、川や海など水辺や船が描かれている画風が好きです。


ーー高校生の頃はどうでしたか?


 高校時代にサッカーを好きになって「サッカーならヨーロッパが面白いんだ!」と分かり、小さい頃から好きだった絵もヨーロッパから始まっていると分かって、海外やヨーロッパに興味をもち始めました。「海外に行ってみたい、住んでみたい」と思い始めたのが、その頃です。


ーー気持ちが海外に向いていったのですね。


 はい。そうなると「英語を話せるようになりたい」と思って、一度諦めた大学受験に、20歳のときに再チャレンジしました。いきなり海外留学するのは怖かったので、日本にあるアメリカの大学を受けました。そこで英語漬けの毎日を過ごしながら英語を習得し、ロンドンにあるアート系の大学に留学して、絵とデザインを学びました。


ーーその時その時の好奇心や欲求が、ひとつの道筋になったのですね。ロンドンには何年ぐらい居たのですか?


 4年弱、滞在しました。就労ビザが取れなかったので学生ビザが切れて帰国となり、一旦実家に戻りました。その後は、ロンドンで学んだことを活かしたかったし、お金もなかったので「まずは働かないと!」と思って、三重県松阪市にあるホームページ制作会社に就職しました。でも、社長と大喧嘩して退職して、また紀北町に戻りました。


ーー仕事を辞めてしまったのですか?!


 そうなんですよ。でも、その頃は「SOHOで仕事をしよう」という動きがあって、インターネット上に求人情報があったんです。おかげで、地元にいても都会からの仕事がどんどん舞い込んできて、そのまま地元で仕事が始まりました。振り返ると、今流行りの『テレワーク』ですね(笑)。

SOHOとは、Small Office / Home Office の略。パソコンやインターネットを活用して、自宅など小規模のオフィスで仕事をする形態。


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2.きっと、一生で何回もあることじゃないし。


ーー地元にいながら、デザインの仕事が始まったのですね。

 タイミングがよかったんでしょうね。そうこうしているうちに地元の人からの仕事も増えてきて、「勉強したい」という人たちがオフィスに遊びに来るようになりました。当時は個人事業主として活動していたのですが、オフィスに集まってくる人たちにも仕事を割り振るようになって、「しっかり形を作らないと、このままじゃダメだな。」と思って、法人化に至りました。


ーー「僕は会社を興すぞ!」みたいな流れじゃなかったんですね。


 そうですね。地元での仕事は自然に始まったし、法人化も自然な流れでそうなりました。自然な流れではあるけれど、もちろん、しっかりと決意しました。それまで『一度全部やめて都市部に出ようか…』と思ったこともありましたが、「会社を立ち上げるって、一生できっと何回もあることじゃないし、やってみようか!」と思って、法人化を決めました。

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ーー『dgreen(ディーグリーン)』という社名の由来を教えて下さい。


 個人でやっている時は、“スマートフロッグ”という屋号でした。『屋号=東城』というイメージが定着していたので、法人化をきっかけに心機一転し、「みんなの会社」として成長していきたいという思いを『dgreen(ディーグリーン)』に込めました。

「d」は3つのd。digital・development・design。「green」には、緑で木や森のように若くて成長するというイメージが込められています。そんな流れで始まった個人事業から18年経ちますね。法人化してからは14年目になります。


ーー東さんにとって、この仕事の魅力・喜びは?


 HP制作やデザインの仕事の僕の喜びは2つあって、1つは、作ったものがお客さんにとって結果が出た、とか、お客さんから「いいものになったよ」と言って貰った時はすごくうれしいです。もう1つは、当たりかハズレか分からないけれど想像して作り上げていくというプロセスで、自分たちがすごく考えて作り出したものに対して結果が出るという喜びがあります。

僕は今は経営者なので、現場の仕事は少なくなってマネージメントが主ですけど、ものづくりや企画の仕事はやっぱり好きですね。

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3.死ぬわけじゃないなら、やってみたらいい。


ーー自分の“思い”が仕事になっていくプロセスで、大事なことは何ですか?

 そもそも、その思いが本物かどうか、『本当にそれをやりたいのかどうか』が大事だと思います。ひとから悩みを相談されるときって、「それ、本気でやりたいと思ってる?」っていう話が多いんです。「本気で思ってるなら、やればいいのに」って思います。

僕に持ちかけられる相談の内容をきいてみると、やってもいないのにすごく悩んでる人が多いんですよ。「〇〇さんから聞いて…」「本を読んで…」とか「ネットの情報を見たら…」とかね。「いやいや、それはネットの情報でしょ?本読んだだけでしょ?(実際に)やってないやん?!」みたいな、ね。


ーー確かに、やってないですね(笑)。


 僕はね、悩まずに「まず、やってみたら?」と思うんですよ。死ぬわけじゃないなら、やってみたらいい。死に至ること、莫大な借金を抱えることは止めたほうがいいですよ。あとは、信頼を失くすこととか。でも、それ以外のことはやってみたらいいと思うんです。

やってみると「あ、これはやっちゃダメだな」とか「やってもいいことなんだな」って、選択ができるんですよね。だから、「やればいいのに」って思うんです。僕は、とりあえずやってみます。

そして、最近気づいたんですけど、僕はそういうところがひとと違うんですね(笑)。周りに囚われず、本当にやりたいと思うことなら、やればいい。やれることはどんどんやる。そうすれば、思いは実現していくと思います。

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4.聞かれたら伝える。


ーーひとから誘われたり、自分の周りに人が集まりやすいようにするために、なにか意識していることはありますか?


 いやぁ、そんなのは無いですよ。こう見えて、僕はイベントは好きじゃないし、実は社交性もそれほどないんです。電話もすごく苦手だし、メールするのも嫌。LINEするのもすごく面倒臭い。できれば、ひとりでずっとボーッとしているのが好きなんです。

でも、知らないと損することもあると思って、誘われたら、なるべく行くようにしています。誘われることは有難いことだし、行ったら自分が知らない話も聞けるしね。僕は、知らない分野のことを知ることが好きなんです。すごく好奇心があるし、行動する。広く浅く、いろいろ知りたいんです。

ひとが僕を誘ってくれる理由ですか?僕にはよく分からないけど、あるとしたら、僕はいろいろな所に行ったりいろんな人と会ってるから「そういう話を聞きたい」というニーズは、あるかもしれないですね。ビジネス的にも。

僕は(守秘義務があること以外は)隠し事はしないようにしています。自分からは言わないけど、聞かれたら伝えます。僕の好奇心で見聞きした世界の現状とか面白い話題を、みんなに伝えることが楽しいんですよ。セミナーとかは苦手だし、お金をもらって伝えたいとは思っていません。ビール一杯でもおごってもらえたら嬉しいな、みたいな感覚で、楽しく話せるのがいいんです。そんな感じでいるだけなんですけど、周りに人が集まってきてくれるんです。ありがたいですね。

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5.だから、ここにいる。


ーー紀北町の好きなところや好きな場所は?

 紀北町の好きなところは、ごはんが美味しい!場所は…どこでも好きなんですよ。最近は、自転車で走っている時に見える町並みとか好きです。港町とか、アルファ橋の上から見る町とか、すごく好きです。だから、ここにいるんです。嫌いだったら居ないので(笑)。

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6.二十歳の頃の自分に。


ーー二十歳の頃の自分に、今、声をかけてあげられるとしたら何と言ってあげますか?

 「もっと自信を持ってもいいんじゃない?」と言ってあげるかな。二十歳の頃って、自分の方向性が全然定まっていなかった頃で、「これから僕はどうなっていくんだろう?」って、すごく考えていました。進路も明確でなくて、将来を想像できないような状況。なにをやりたいわけでもない。

それに加えて、住んでいるのが田舎なので「自分の意見を言いすぎてしまうと嫌われるかなぁ」とか、ひとの顔色を見ながら動いていたんですよね。今、振り返ると、それは必要なかったなと強く思います。

その後、東京やロンドンで、変わったひと(ユニークな人)にたくさん会いました。自己主張しないと埋もれてしまう世界、黙っていると自分が嫌になってしまう世界にいました。そこで、自分の意見をしっかり伝えて、相手の意見も聞いて、尊重しあいながら話し合っていくことが重要だと痛感したのです。

だから、二十歳の頃の自分には「もっと自信をもってもいいんじゃない?」と言ってあげたい。喧嘩になるようなことはダメだと思うけど、間違ってもいいから、自分の意見をしっかりと伝えていくことが大事だよ、って。

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7.趣味です。


ーーディーグリーンさんでは、魚を使った離乳食の事業もあるんですよね?

 はい、mogcook(モグック)ですね。この事業は、僕の後輩からの働きかけがきっかけだったんです。

その後輩は東京にいて、子どもが生まれてから『子どもに美味しい魚の離乳食を食べさせたいけれど、市販の離乳食に使われている魚は、どこで獲れたのかよく分からない。地元では美味しい旬の魚がすぐに手に入ったけれど、都市部では難しいし…』と困り、『だったら、そういうサービスを作ればいい!』と思って、美味しい旬の魚の離乳食サービスの企画書を作ったようです。

その後輩は紀北町内でその企画をやってくれるような事業者さんを探したんだけど、見つからず…「(この企画を)やってくれるのは、ディーグリーンしかない」と言って、僕のところに話を持ってきたんです。

その頃、僕も『自社サービスで何か運営していきたい』と思っていたし、それまでに僕のところに「何とかして魚を売れるようにしてほしい」という案件が幾つも来ていました。「売れる魚の商品づくりをやりたい。どうしたら魚が売れるのか?」と考えていたのもあって、『これはいいタイミングだ!』ということで始まったんです。

商品づくりに関しても、パッケージングを変えるとか表面的なものではなくて、本質的なアプローチができないかと考えていました。魚の離乳食の企画を見たときに「小さい頃から美味しい魚を食べてもらって魚好きになってもらえば、ずっと魚を食べてもらえるから魚の需要も増えていくんじゃないか?」と思って、「これは面白いプロジェクトだ!やってみよう!」となりました。

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ーーデザインの仕事やモグックの他にも、事業をやられているとか。


 はい。今年から梅農家のお手伝いを始めました。他には、日本法人でミャンマーと提携している法人の代表でしょ。そして、亡くなった父の会社を継いで少し休業していたのを、今年からちょっと動かしていきます。あともう1つ、全く違う業種の社長就任の依頼がきていて…全部で5つです。


ーー5つですか?!


 もう、趣味ですよね、ほんとに…(笑)。

趣味でしかやれません。これらを「仕事」と思ってやっていたら疲れるだけなので、趣味だと思ってやってます。楽しみでしかないですね。


ーー「とりあえず、やってみる」の信条どおりのチャレンジ!今後の展開が楽しみですね。貴重なお話をありがとうございました。

【株式会社ディーグリーン 代表取締役 東 城さんからのメッセージ】
・死ぬわけじゃないなら、やってみたらいい。
・やれることは、どんどんやる。
・間違ってもいいから、自分の意見をしっかり伝える。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今回の 株式会社ディーグリーン 代表取締役 東城さんのお話はいかがでしたか?あなたの中にある仕事に対する思い大切にしていることを感じるきっかけになったら嬉しいです。

(取材先情報)株式会社ディーグリーン
https://www.dgreen.jp/
〒519-3204 三重県北牟婁郡紀北町東長島2399-1 Tel.0597-47-2337


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