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起業で生き抜く「つくしの法則」

日本には、約359万社の企業があるといわれている。

東京ドームの収容人数は、55,000人。

単純計算で、東京ドーム65個分のビジネスが存在するということだ。

日本の企業数は減少傾向にあるが、359万社の企業がひしめき合う市場で、新たに起業し、生き残っていくのは並大抵のことではない。

生き残りの戦略として、経営の教科書にはマイケル・ポーターが提唱した「差別化」というワードが登場する。

簡単に言えば「競合他社の製品・商品・サービスとの違いを打ち出す」という意味だ。

なぜ差別化が必要かというと、お客さんに競合他社ではなく、あなたから買いたいと思ってもらう必要があるからだ。

では、いったいどうやって差別化をして「自分だけの色」を出したらいいのだろうか?

教科書通りに競争戦略を学んで考えるのも一つの手だが、シンプルに3つの切り口で考えることもできる。

それが「つくしの法則」だ。

この法則は、ビジネスアイデアのブラッシュアップやマーケティング作戦、事業の生存戦略を考えるうえで、大切な「差別化」のポイントを3つに分けて、頭文字をとったものだ。

「つ」、突き抜ける。
「く」、組み合わせる。
「し」、勝負の土俵を変える。

それぞれ見ていこう。


1.突き抜ける

自分の商品・サービスを磨きあげ、他に類をみないほどの境地に達しているビジネス。それが、「突き抜ける」状態だ。

世の中には、自分のやりがいや関心をとことん追究した結果、たくさんのお客さんに受け入れられ、お金を支払ってもらえるレベルに到達しているビジネスが存在している。

例えば、プロのアーティストやスポーツ選手がその代表例だ。

ビジネスの世界でも、

・有名ブランドのデザインを手掛けるデザイナー
・オリジナルブレンドの手淹れ珈琲を提供するカフェ
・独自の筋力強化法を使った、会員制のトレーニングジム

など、上手くいけば「天職」と言えるようなビジネスを展開することができる。

自らの趣味や特技、時を忘れて夢中になれることを生かして商品・サービスを生み出し、それがお客さんの幸せと購入に結びついたら幸せだ。

もしキミが、特別に思い入れのある「何か」を持っているなら、その分野で「突き抜ける」という起業もあるだろう。


2.組み合わせる

では、自分の夢中になれることで「突き抜け」、それがお客さんに支持され、ビジネスになっている人は、身の回りにいるだろうか?

もしかしたら、友達の友達くらいなら居るかもしれない。

現実的に、そこまで突き抜けられる人はごくわずかだ。1,000人に1人。いや、1万人に1人かも知れない。誰もが、そのレベルまで到達するわけではない。

かといって、諦めるのはまだ早い。一つでは力を発揮できなくても、何かと組み合わせると一つ以上の価値を生み出せることがある。

それが、「組み合わせる」だ。

「10000×1」と「100×100」は、同じ価値ではない。でも、同じ総量で戦うことができる。

具体的には、複数の強み、持ち味、得意分野を組み合わせて、利便性や独自性をアピールする、

・「FP資格」+「行政書士資格」で個人の資産運用から法律相談まで対応できるコンサルタント
・「税理士資格」+「社会保険労務士資格」で会社の法人税申告から雇用支援まで対応できるコンサルティングオフィス

など、資格の組み合わせを生かした展開もあるだろう。

・「子育てママ」+「デザイナーとしての経験」で着脱が容易かつオシャレなオリジナル子供服のネットショップ
・「ITエンジニアとしての経験」+「家族の介護経験」でIT技術を活用した介護支援事業

など、独自の経験を組み合せるといった展開もある。

上手くいけば、自分の持ち味を生かしつつ、お客さんのニーズにヒットする「あわせ技一本」を狙うことができる。

もしキミが、いくつか得意技を持っていて、それを組み合わせて新たな付加価値を生み出せるなら、お客さんにとって貴重な事業になるかも知れない。


3.勝負の土俵を変える

突き抜けることは簡単ではない。組み合わせるにもなかなか手札がない。

そんなときは、最後の切り札「勝負の土俵を変える」だ。

同業種やライバルが物理的に少ないような、たとえば郊外や地方、極端な話、海外でビジネスを興すことで、商品・サービスの独自性を手に入れるという考え方だ。

競合他社のいない(少ない)
・地方でリフレクソロジー店を開業
・海外で焼肉食べ放題店を開業

など、物理的な立地を変えるという展開もあれば、

・有人店舗が当たり前の生活雑貨店で、無人店舗を開業
・物理店舗販売が当たり前のオーダーメード靴業界でネットショップを開業

など、業界の常識をズラして勝負するといった展開もあるだろう。

「勝負の土俵」となる立地や環境を変えることでオリジナリティを発揮し、その界隈のお客さんにアピールする。

なにしろ競合他社がいない、もしくは少ない場所だから、競合で溢れているような場所とは違って、お客さんにその存在を認知してもらいやすく、最初の「試し買い」も得やすくなる。


以上が、「つくしの法則」だ。

優れたビジネスには、選ばれる理由がある。差別化は、避けては通れない。

「つ」、突き抜ける。
「く」、組み合わせる。
「し」、勝負の土俵を変える。

どこなら自分の強みを生かせるか、ぜひ考えてみて欲しい。

そして、世の中は生き物だ。

一度決めた差別化で、一生生き抜くことは難しい。

起業の最初だけでなく、追い風が突然向かい風になったとしても、起業家として生き残れるように、差別化の味方として「つくしの法則」を役立ててもらえると嬉しい。

■終わり