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「オレの起業コンセプト」誰に・何を・どのように 編

起業に欠かせないコンセプトのまとめ方を、「起業ライダーマモル」の事例を元に紹介するこの連載。今回は、コンセプトの大本命「誰に・何を・どのように」のまとめ方を深堀していく。

※この記事から読む方へ。連載初回の記事はこちら『「オレのコンセプト」動機 編』。

早速、「起業ライダーマモル」の「誰に・何を・どのように」を紹介しよう。

(1)誰に
個人でできるビジネスでの起業を考える、20~30代の男性

(2)何を

①起業に必要な基礎知識
②起業アイデアのまとめ方
③起業行動の後押し

(3)どのように

①AIチャットボットが24時間365日、無料で相談に乗る
②スマホでアイデアをまとめられる
③利用者の状況に合わせてサポートメッセージを配信

どうだろう。読んだだけで、パッとサービスがイメージできただろうか?まぁ、出来についてはそっとしておいて、どんなことを意識して作成したか、個別に紹介していく。


1.「誰に」

誰には、言い換えると製品やサービスを利用してもらう「顧客ターゲット」のことだ。「こんな人」と言語化したとき、頭にその人のイメージが思い浮かぶのが理想だが、そこまで洗練されたターゲット像をいきなり想定するのは、簡単ではない。(正直、オレはできなかった。)

そこで、思っているターゲット像を一般的な型にあてはめて考えることから始めた。型とは、ターゲット設定を考えるのに役立つ要素のことで、「年齢、性別、職業、生活環境、住んでいる地域、心理状態」などだ。(詳しくは「なるほど!起業のコンセプト」で解説中)

最初に作った文章がこれだ。

年齢は20~30代、性別は男性、職業は…、生活環境は学校に通ってるか働いている、住んでる地域は全国、心理状態は起業したいけどどうしたらいいか悩んでいる。

埋まらない項目があったり、対象が全国になっていたり、なんだかターゲットが定まっていない感じがする。でも、最初はそれで問題ない。製品・サービスによって必要な項目は異なる。ピックアップした要素を素材にしてターゲット像を言語化していくことが大切だ。

オレは、年齢、性別、心理状態を今回ターゲット設定の要素にして言語化した。もし、言語化しにくいときは、この公式にあてはめてみると考えやすくなるかもしれない。

<公式>
(年齢と立場)(場所)に住んでいて、(気持ち)と思っている、(ライフスタイル)な人。

ただ、型に頼ると長文になってしまうというデメリットもある。短い言葉で表現できるならその方が理想だ。「そういう人いるよね」となる「誰に」なら、細かい要素を入れる必要はない。

例えば、タピオカミルクティーで有名なティーカフェの「ゴンチャ」のターゲット設定がとても参考になる。

「コーヒー嫌いのスタバ好き」

出展:日本経済新聞「スタバ客の浮気を狙え 大行列続く台湾茶カフェの勝算」)

オレも、こんな解像度の高いターゲット設定ができる力が欲しい、と思わず思ってしまった。


2.「何を」

「何を」は、どんな内容の製品・サービスを提供するかを考えていく工程だ。「誰に」と「ニーズ」を意識しながら考えていくことになる。つまり、この人には、これを提供したら喜ぶだろうな、と想像力を働かせて考えていく。

オレの場合は、ベンチャー企業というより個人で始められるビジネスでの起業を目指す人で、起業や経営に明るくない人がターゲットだった。だから、「基礎知識の提供」が「何を」の一つの要素になった。

これがもし、上場するようなベンチャー企業を目指す人が対象だったら、そうはいかないだろう。きっとめちゃくちゃ起業の勉強をしていて「そんな基礎的なことに答えられても…」なんてことになりかねない。

他にも、アイデアを上手くまとめられないというニーズから、事業計画書より気軽にアイデアを整理できる機能を考えたりした。

こんな感じで、製品・サービスを届けたい相手をイメージしたりしながら考えると、「何を」が明確になってくる。

あと、まとめる時にもう一つ意識したことがある。

それが、「野菜よりニンジン」だ。

野菜と聞いたとき、人それぞれイメージするものがバラバラになる。でも、ニンジンと聞けば、形は違えど誰もがオレンジ色のあのニンジンを思い浮かべるはずだ。誰が聞いても同じイメージで理解できる「何を」を考えると、何をしたいのかが分かりやすくなる。


3.「どのように」

最後に、「どのように」は、これまで決めた「誰に」「何を」を元にどうやって製品・サービスを提供するかを考える段階だ。ここでも大事になってくるのが想像力だ。

・起業の相談はなかなか人には言いづらいこともあるから、人よりロボットの方が気軽に話せるかな。

・20~30代が対象だから、インターフェースは日常的に使っている可能性が高いLINEがいいかも。

・肩の力を抜いて考えられるように、スマホにメモする感覚でアイデアがまとめられたら、起業の準備が進みやすくなるかもしれない。

なんてことを考えながら、「どのように」をまとめていった。

ここまでは、「提供方法」をどうするかを考えたが、「どのように」には、もう一つ検討しなければいけない要素がある。

それが「価格」だ。

オレの場合、公的な支援ということもあってまずは無料でサービス提供をしている。でも、ビジネスには必ずどこかで収益を上げる仕組みが必要になる。

そして、この価格を「いくらにするか?」「いくらで提供できるか?」がお客さんの購入や利用に大きく影響を与える。

もちろん、安ければいいという話ではない。ロバート・B・チャルディーニ著の「影響力の武器」に、面白い話が紹介されている。

ある宝石店での話。店は繁盛していたが、なぜか商品が売れなかった。なんとか宝石を買ってもらおうと、あの手この手を試すが上手くいかない。頭にきた店主は「全部価格を1/2にしておいて」とメモを店員に残し、買い付けの出張に出かけた。数日後店に戻ってきたとき、陳列ケースの商品はすべて売れていた。しかしその後、驚くべき事実を知ることになる。メモを受け取った店員は、殴り書きされた「1/2」を「2」と読み間違え、商品を倍の値段で販売していたのだ。なのに、宝石は完売していた。
(参考:「影響力の武器」)

宝石は安ければいいというものでは無い。それなりの値段がするものでなければプレゼントをしにくい。やはり、想像力を働かせて、ターゲットがどんな気持ちで製品・サービスを買うのか、利用するのかを考えることが大切になってくる。


コンセプトの核となる「誰に・何を・どのように」は、全体のつながりも重要だ。3つの要素をまとめることができたら、子供が聞いても分かるくらいのシンプルさと理解のし易さを意識するといいかもしれない。

なんてことを偉そうに言っておきながら、自分のコンセプトに「AIチャットボット」という専門的な言葉を入れていることを、今猛烈に反省している。

おわり■