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起業ライダーマモル 起業のリアル 第1話『起業の壁』後編

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『必要とされているものは何か。見込み客インタビューを繰り返す』

Aさんの起業の壁を乗り越えるための挑戦が始まった。

最初に取り組んだことは自身の起業アイデアを白紙に戻すことだった。

当初の事業コンセプトであった「ビジネスマナーやビジネススキルアップなどのノウハウを、セミナーや研修形式で提供する」というアイデアはテストマーケティングの結果、集客ができないことがわかった。

そして、「顧客の求めているものはなにか」という問いに正しく答えることがなければ起業が先に進む望みはないことも分かった。何としても答えを探し出さなければならない。

Aさんは、見込み客に対する徹底的なインタビューに取り組むことを選択した。

もともと営業経験は豊富であり、相手の懐に思い切って飛び込むことは苦ではない。外国人留学生が集まる場所を探してはインタビューをする、という作業を繰り返した。

「それからはもう、とにかく見込み顧客インタビューです。自分の考えを白紙にもどし、顧客の求めているものはなにか、必要とされているコンテンツはなにか、必死になって追究しました。                そこに外国人留学生が存在すると聞けば、日本語学校や大学や専門学校のサークルや外国人向け就活説明会などへ出かけていき、お話を伺いました。                                日本企業の人事担当なども含めて、10カ月くらいの間に、合計400名くらいでしょうか。そこで見えてきたのは、外国の方が真に必要としているのは、ビジネスマナーやビジネススキルアップなどの教育セミナーではなく、もっと具体的かつ現実的な就職の見込み、ビジネスビザ発行の見込みを高める機会であり、そのための人事担当者や経営者との個別の接点を作る場でした。」

『見えてきた事業コンセプト。そして、確かな手ごたえを得る』

約400名へのインタビューを終えて見えてきた仮説に基づき、Aさんはセミナーの趣旨を変えた。

最初の事業アイデアであった、日本で働くうえで役に立つビジネスマナーやビジネススキルアップのセミナーに代わり、外国人と日本企業の人事担当者や経営者との交流会を企画した。

小さな就職説明会のような形で、お互いをよく知るためのイベントも盛り込んだ。参加者を募ったところ、今度はほぼ満員となる20名近くの参加者を得ることができた。

それだけではなく、実際に交流会を通じて就職実績も生まれ、参加された外国人と日本企業の両者から感謝の言葉を頂き、事業としての実現可能性について、確かな手ごたえを得ることができた。

「今度は回数を重ねるたびに参加者が増えました。心底ホッとしました。そして、だいぶ時間が経ってからですが、当初企画していた教育コンテンツも受注できるようになりました。」

Aさんは今、起業・経営コンサルタントとして個人事業主として独立した後、株式会社を設立、代表として忙しい日々を送っている。

当初起業を志した外国の方向けの研修セミナーも、社会人向けの研修スクールの講師としてして教育セミナーや研修プログラムを実施している。

『Aさんからのメッセージ』

「壁は乗り越えてみるまでその高さがわかりません。成果がでないうちは辛いですが、大切なのは顧客の声をしっかりと聞いて、現地・現物で実践していくことだと思います。                       いまはコロナ禍の影響で大変ですが、必死になってネットを学んでいます。この壁も、しっかり乗り越えて、また一回り成長できると、そう信じています」

Aさんはテストマーケティングでの苦い経験を通じ、顧客のニーズを正しくとらえることの重要性を自覚し、徹底したインタビューを行うことでニーズをとらえることに成功し、起業の壁を乗り越えていった。

今はコロナという新たな壁に直面しているが、起業の壁の存在を知り、それを乗り越える方法を得たAさんはこれからも前に進んでいくだろう。

・・・

『まとめ』

Aさんの経験からは、次の3つのことを参考にしたい。

1、何より、アイデアは検証しよう。

Aさんはテストマーケティングで当初の事業アイデアが的を外していたことを知ることができた。つまり、起業前に失敗の芽を摘むことができた。

もちろん、Aさんがそうだったように、テストマーケティングといえどもお客さんが来ないということは相当にタフな出来事だ。

それでも、事務所を借りてスタッフを準備し、本格的に起業してからこのような事態に陥るのとでは全く深刻さが異なる。

初期投資が多いほど、最初の数か月に顧客を獲得できないことはビジネスに重大な影響を及す。スタートダッシュの躓きを取り返そうと試行錯誤している間に運転資金が底を尽きる、ということだってあるかもしれない。

何より、アイデアは検証しよう。インタビューとテストマーケティングは起業にとって得るものしかない作業だ。起業では、許容できる失敗は成功に含まれるものと考えよう。

2、当初のアイデアを当てにしすぎない。

Aさんはキャリアも豊富で、取り組むビジネスの環境について十分な知識にもっていた。また、起業を目指す仲間からの評価もとても高かった。それでも、テストマーケティングはうまくいかなかった。

起業当初のアイデアがうまくいかず、試行錯誤した結果、当初のビジネスの形が相当変わっていた、という人は少なくない。

Aさんもテストマーケティングとインタビューの結果を謙虚に受け止め、当初のアイデアに拘泥せず、取り組む事業を切り替えたことで最初の顧客をつかみ、起業の壁を乗り越えた。

起業では、当初のアイデアを当てにしすぎることなく、検証の結果を踏まえて柔軟にビジネスを変形させよう。

3、正しいアイデアも、いつでも成功するわけではない。

アイデアについてもう一つ。Aさんは、起業してからだいぶ時間はたった後だが、教育セミナーについても再び挑戦をし、現在では事業の重要な柱として成長させている。

つまり、Aさんのアイデアは実は的を得ていた。ただ、コンサルタントとしての知名度や取引先がまだないビジネスの立上げ段階では、実績や知名度が重視されるセミナー講師のビジネスを成立させるには早すぎたのだろう。

そういった意味でも、アイデアを検証をすることは大事だ。見込み客へインタビューをすれば、ビジネスの見込みと同時に今の自分がビジネスを獲得できるチャンスがあるかも知ることができる。

特に後者については経験者でも聞いてみないとわからないことが多い。やはり、アイデアは検証するのが重要だ。

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今回はAさんの『起業の壁』をお伝えした。実は、Aさんには起業ライダーマモルも大変お世話になっている。今回の連載の趣旨をお伝えすると、自らの経験を快く共有していただいた。

もし、インタビューのやり方やテストマーケティングについてもっと詳しく知りたい方は是非コメントを送ってほしい。可能な限り回答をさせていただくつもりだ。

今後も様々なステージに立つ先輩のリアルをお届けしていきたい。先輩方のストーリーが、皆さんの起業のヒントとなり、皆さんが近い未来に先輩となってくれればこれほど嬉しいことはない。

まだまだ暑い日が続くが、体調に気を付けて頑張ろう。

皆さんの起業が成就することを心よりお祈りする。

~起業ライダーマモル 起業のリアル 第1話『起業の壁』後編 おわり