花譜という歌手はやばいという話

花譜はバーチャルシンガーである。日本のどこかにいる17歳の少女だ。 
3年前のある日、彗星のごとく現れて私の心をつかんでいった。

一番最初に投稿された歌の動画がこれである。当時14歳にしてすでに完成されている。個人的には、本当に人生を変えうる音楽を初めて聴いた時には即座に受け入れるというよりは戸惑いを覚えるのだけど、花譜はまさにそうだった。簡単に言うと衝撃を受けるということだった。
独特なハスキーな歌声も、今にも泣きだしそうな声の震えも、鋭い高音も、すべて自分のものとして音楽を体現している。そこには技術的な巧拙を超越した花譜にしか表せない音楽と魅力があふれている。

というわけで私が花譜に魅了されるのにはさほど時間を要さなかった。他では替えが利かない世界をみせてくれるのだから仕方がない。

ここまでウダウダとゴタクを並べてきたのだけど、とにかく聞いてほしいので花譜の歌を紹介する文章にしたい。

『またねがあれば』
最初期のカバー。まだ比較的感情の表現がアッサリしている時期だったりする。14才でこの失恋ソングを歌いこなせるってどうなってるの。それだけ歌への感受性が優れているのだろう。

『想像フォレスト』
想像するに、花譜が最もインスピレーションを受けたカルチャーはインターネットに投稿されるボーカロイドの文化であるから、こういうボカロ曲をよく歌う。自分はあまりボカロ曲に明るくないのだが、思うにストーリーの潜む世界観が印象的である。ちなみにこの曲ではhihi-H(シの音)という五線を突き抜けた高音が要求されるのだが花譜は危なげなく歌いこなしている。ポピュラー音楽で女声にこれほどの高音を要求するのは珍しいのだが、これにより花譜の歌唱が高い技術に裏付けられていることを証明されるのだ。

『透明少女』
令和の高校生がナンバーガールを歌ったことに驚いた。基本的に花譜は自分の好きな歌しかカバーしないらしいが、どうやって彼女がナンバーガールを知りえたのか気になるところである。こういうアップテンポな曲でノリノリになる花譜というのも新鮮である。かわいい。

『愛の才能』
ちょっと花譜、こっちに来なさい。お父さん知らないぞ。どこでこんな破廉恥な歌をならったんだ。教えなさい。ちょっと、花譜。きいてないぞ。お父さんねえ、花譜をそんな子に育てた覚えはないぞ。ちょっと花譜きいてるのか。おい、ちょっとどこに行くんだ。

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冷静になって筆者が選ぶ花譜のカバー曲3選とオリジナル曲3選を紹介したいと思います。

カバー曲編

『美しい棘』
GLIM SPANKYのファンである自分としては花譜がこのカバーを出したことに驚いた。花譜の歌声はスモーキーで中低音に厚みのあるパワフルな松尾レミの歌声とは正反対のものであるといってよい。しかし、あくまで花譜は自分を変えることなく、しかし原曲のパワーを損なうことなく歌い上げた。
もうひとつ特筆すべきはブルーノートスケールの扱いが極めて自然な点である。ここまで自然に音程を下げられるひとも希少ではなかろうか。このあたりはクラシカルなロックやブルースとの親和性の高さを感じさせるので、そういう曲をもっと歌ってほしいと思ったりする。

『五月雨』
崎山蒼志の歌というのはメロディとか音程とかいう要素は本質的な問題にはならないもので、つまり崎山蒼志が歌わなければ意味がないとさえ思われる音楽である。それをあえてカバーするというのは相当な覚悟がなければできないはずだ。花譜の歌の中でも特に感情の発露が激しく、やはり音程の正しさとかいうものを些細な問題に変えてしまうほどの表現力を示している。

『うつくしいひと』
これに関してはどう説明していいのかわからないがとにかく涙が流れた。
ハ長調の白さの上に乗せられた残酷な歌詞。それが花譜の声で歌われたというだけで十分だった。

オリジナル曲編

『雛鳥』
受験に伴う休止から復帰して最初に発表した曲。これはどちらかというと花譜というVsingerの在り方にかかわる問題なのだが、『雛鳥』は花譜が今もなおひとりの人として成長を遂げる過程にあることをVtuberやVsingerの物語に落とし込んでいることを象徴する曲なのである。


『未確認少女進行形』
とにかくかわいい。すべてがかわいい。特にダンスのところで手足とか全体的にちっこいのが分かってなおのことかわいい。初めて見たときにはこういう路線も行けるのかと芸域の広さに感心した。一方でこの歌が内包する孤独や必死を歌声に乗せていて、エモーショナルな歌として完成させているあたりはシンガーとしての力量の高さを感じる。


『心臓と絡繰』
2作目のオリジナル曲。Youtubeに投稿されるや否や100万再生を突破し花譜の人気を大きく押し上げるきっかけとなった。この曲に関してはもはや筆者の個人的な感想でしかないのだが、要するに本格的に花譜にのめり込むきっかけとなった曲なのである。不完全な存在。不完全な歌。それがどれだけ心を震わせただろうか。この曲を聞いたときにはじめて花譜という存在が私の眼前に現れたのだ。


長くなってしまいましたが。とにかく言いたいことはひとつです。

花譜はいいぞ。







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