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タンノイの音

自分のロゴマークにも使用しているが、僕はタンノイのスピーカー(古いモデル)が好きである。見た目ももちろんだが、その音は本当に本当に素晴らしいからだ。

初めてタンノイを聴いた時、なんだこの箱鳴りは!とびっくりするが、その音のトリコになると本当に止められない。

世に「タンノイファン」のこれだけ多いことがよ~くわかる。
特に弦楽器が良い。チェロなどはもうムシャぶりつきたい艶のある音がする。ダブルベースの胴がなる感触や、弓の擦れる音は本当にセクシーだ。もちろん、録音のクオリティに左右されるのだが、そもそものタンノイの鳴らし方がぴったりしっくりくるのだ。

管楽器は、オーボエ、クラリネット、ファゴットなどリード系が変な響きが乗らなくて、美しい。オーボエなどはスピーカーやシステムによって変な響きが付き、全く偽物な音が聴こえることがないだろうか?僕はそれを聴くと非常に残念なので、その点タンノイの発音はベストなのだ。


ジャンルは変わって、エレキギター、ドラムの音も良い。ライブでは絶対聴けない、スタジオでアーティスト、エンジニアがこだわった部分が忠実に聴こえてくる。とにかく定位が良いので、スタジオを覗いて聴いているような気になる。
ジャズ、ロックのライブでの音響は、良いジャズクラブなどを除いて、僕にはあらゆるレベルを上げ過ぎにしか聴こえない。ライブに期待する部分がそもそも違うので仕方ないのだろうけど。
僕はドラムセットはスネアのワイアーやヘッド、タムのチューニングへのドラマーのこだわりをもっとわかりやすく客席に伝えて欲しい。ベースも低音のレベルが高すぎて音の動きが客席からほとんど追えない。とにかくすべてがくぐもった音に聴こえる。マスキングされているのだろうか。大音量と広い会場で、どこにポイントを合わせるのかで調整が難しいのは分かるが、僕には酷すぎて聴けない。ただ騒ぎたいだけに行くのなら良いが。
野外フェスのジャズもそこまで大音量にする必要があるのかと思えるものも多く、あまり期待しないようになった。ストーンズのライブも明瞭に聴けたのはミックの声とチャーリーのリズム(音色ではない)だけだった思い出がある。音響関係者はライブの客席に届く音質についてどう考えているのだろう?

話がそれたが、ロック系は気持ちの良いサウンドはCD、レコードからしか聴けないものだと諦めて聴いている。タンノイは60年代の濃厚なサウンドも、80年代初頭の賛否のあるあのサウンドも実に気持ちよく聴ける。60年代のレコードなど、何度も何度も繰り返し針を戻して、なかなかB面に移れない時も多い。

ピアノは難しい時もある。モノによって非常に平板で奥行がなかったり、音色のパレットに乏しく聴こえることがある。新しい録音では理想的な響きのものも多いが、60〜80年代のコンチェルトなどはパッとしない響きによく出会う。僕のタンノイとの相性もあるのだろう。昔からピアノをオーディオで本当に気持ちよく鳴らして聴くのは難しいとよく言われる部分は納得かも。

モノラル録音のものもとても良い。僕は変な癖だが、ステレオの音源でも時々右側のスピーカーのまん前で聴くのが気持ち良いことがあり、これが特にモノラルだと、理屈にも合っている部分があり、非常にハマる。

モノラルの音はステレオ録音とは違う次元の一つのジャンル、音世界を持っていて、音場が狭いにもかかわらず、その音楽が運ぶ感情、奏者のパッションを全て含んでまるごとぶつかって来る。リアルではないが、リアリティがリアルを超えるのだ。モノラルにハマると、もうステレオ録音がいらなくなるくらいの気持ちになる。

タンノイの音は生の音らしくはないだろう。他のメーカーのようなダイナミズムや、フラットさや、艶やかさもないかも知れない。しかし、それらをすべて捨ててもタンノイにしかない美しさや響きの魅力が、もう僕を虜にしてしまい、他への欲を奪われ、完結してしまうのだ。家で聴く音楽はこの音で聴きたい!と素直に思ってしまうのである。


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