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【飲食店向け】新型コロナウイルス対策下の資金繰りについて知っておくべきこと【2020/7/9更新】

 新型コロナウイルス対策のための外出自粛要請が続き、外食産業に甚大な影響が生じています。
 大変残念なことに、資金繰りが間に合わず閉店を余儀なくされているお店も出てきてしまっているようです。
 主に飲食店の皆様を対象として、新型コロナウイルス対策に伴う資金繰りについてまとめました。今後の対応にお役立てください。
 一日を争う状況なので、記事公開の早さと読んだ分かりやすさを優先しています。特に営業許可(免許)や融資の手続については、所管の省庁や専用窓口に相談しながら進めるようにしてください。
 追加情報があれば随時更新していきます。ご意見や情報をお寄せください。
【2020/7/9更新】
 2020/7/14から家賃支援給付金の申請受付が開始します
 受給要件を簡単に説明すると、2020年5月~12月のうち、売上が①前年同月比で50%減、または②連続する3か月の合計で前年同期比30%減です。
 賃料の3分の2程度の金額の6か月分が、法人に最大600万円、個人事業者に最大300万円支給されます。
 持続化給付金よりも大きな支援が得られる可能性がありますので、積極的に検討なさることをお勧めします。

1 支出を減らしたい

(1)家賃
 家賃の減額や支払いの猶予を、オーナーに申し入れることから始めましょう。
 その際は、お店の売上がどれだけ落ちているのか、お店がどういう状況にあるのかを、できるだけ資料を添えて説明してください。
 テレビやインターネットの情報だけでは、オーナーがお店の窮状を正しく理解できていない可能性があるからです。
 また、漠然と「減額」をお願いするのではなく、たとえば「2か月間に限り、50%の減額」とか、「当面の間、家賃の半額については支払いを猶予」いうように、期間と金額をなるべく具体的にして申し入れたほうが、オーナーも応じてくれやすいはずです。
 オーナーが家賃の減額や支払いの猶予を了解してくれたら「覚書」等の書面を取り交わすことが望ましいですが、難しければメールやLINEでも構いませんので、必ず、後に残るかたちで保存しておいてください。
【2020/4/2更新】
 国交省から不動産関連団体を通じて、飲食店等のテナントオーナーに対して賃料について支払いの猶予等の実施を検討するよう要請がありました。強制力はありませんが、影響はあると思われます。

 オーナーがどうしても了解してくれない場合、家賃を支払えなくなってしまうことがあるかもしれません。
 食材を仕入れられなければそれこそ売上を得られませんから、支払いに優先順位をつけざるを得ない場合もあるでしょう。
 でも諦めないでください。
 家賃を1回滞納したからといって、すぐに退去を命じられることはありません(法律上「信頼関係破壊の法理」といいますが、説明は省略します。)。
 この状況ですから、2、3か月分くらいの家賃をやむなく一時的に滞納してしまったとしても、後から支払うことで何とかなる(退去を命じられずに使用を継続できる)可能性が十分にあります。
 ただし、誤解のないように強調しますが、家賃を支払わなくて良いということではありません。この緊急事態に、お店を閉店させることなく、ギリギリで生き残るための方策です。
 状況が落ち着いたら、分割払いであっても、きちんと支払うようにしてください。 

(2)人件費
 営業時間の短縮や臨時休業に伴って従業員を休ませる場合、休んだ従業員に対しては、原則として休業手当の支払いが必要です。
 ただし、休業手当に対しては雇用調整助成金が支給される場合がありますので、確認してください。
 また、事業主ではなく従業員個人に対する補償については、今後の政府発表を注視してください。

(3)税金
 確定申告の期限が2020年4月16日に延期され、振替納税日は所得税が5月15日、消費税が5月19日に延期されました。
【2020/4/8更新】
 申告期限がさらに延長され、柔軟な対応がとられるとのことです。
 また、新型コロナウイルスの影響で事業に著しい損失を受けた場合には、納税の猶予が認められる場合があります
 その他にも多数の制度が用意されています。詳しくは最寄りの税務署に相談してください。


2 収入を増やしたい

(1)テイクアウト/デリバリー
 飲食店がお店の厨房で調理した食べ物をお客様に直接テイクアウト(持ち帰り)させたり、デリバリー(配達)するときには、原則として特別の許可は要りません。ただし、初めての試みとして行う方も多いでしょうから、食中毒やアレルギーには特に注意してください。
 また、パン、ケーキ、アイスクリーム、ハム、チャーシュー等の食品をテイクアウトさせるときには、特別の許可が必要ですので注意してください。詳しい分別は省略しますが、「すぐに食べずに置いておかれてしまう可能性のある食品(食中毒を引き起こすリスクが大きい食品)」は注意が必要です。
 集客の手段については、テイクアウトの注文アプリやデリバリー代行業者の活用を検討しても良いかもしれません。
 また、飲食を愛する人は皆、今の状況を心配し、自分達に出来ることがないかと考えています。遠慮なくSNSで告知したり、馴染みのお客様には直接連絡してもいいと思います。
 なお、テイクアウト/デリバリーの場合の消費税率は、10%ではなく8%になります。
【2020/4/6更新】
 第2弾の記事に詳細をまとめました。

(2)アルコールの販売
 食べ物とセットで飲み物も販売して売上をさらに増やしたいところですが、注意が必要です。
 「飲食店営業許可」で認められている店内でのアルコールの「提供」とは違い、アルコールの「販売」には「酒類販売業免許」が必要とされます。
 開栓したボトル、飲みかけのボトルを持ち帰ってもらうような場合でも、基本的には「販売」とみなされ、免許が必要です。
 無免許でのアルコール販売は処罰の対象となりますので、アルコールの販売を検討する場合には、所轄税務署か、専門家に問い合わせたうえで、慎重に行うようにしてください。
 なお、アルコールではなくソフトドリンクのセット販売は問題ありません。
【2020/4/14更新】
 国税庁において、飲食店が資金確保のために在庫のアルコール類を消費者に販売することを特例として認める「期限付酒類小売業免許」を付与することになりました。
 具体的な対応方法については「【飲食店向け・第2弾】新型コロナウイルス対策下におけるテイクアウト営業について知っておくべきこと」をご覧ください。

(3)出張料理/ケータリング
 料理人自身がお客様の自宅等に出張してサービスを提供することについては、特に免許や許可は必要とされていません。ただし、移動経路や出張先での新型コロナウイルス感染の可能性、抵抗力の弱いお客様がいらっしゃる可能性も想定して、普段以上に衛生管理を徹底してください。
 調理済みの食べ物を持参するような場合(ケータリング)には、食べ物の種類に応じた営業許可が必要になることがありますので、注意してください。
 
(4)予約金/食事券
 当面の売上を確保するために、少し先の予約を受けて予約金を受け取ったり、そのお店だけで使える食事券を販売する方法も考えられます。
 小規模のもので、お客様が納得していれば基本的には問題ないのですが、予約がキャンセルになったときには返金する必要が生じるかもしれませんし、この状況が想定以上に長引いたときや、万が一営業を継続できなくなってしまったときには大きなトラブルになりかねません。
 有効期限を明記する、お店の側も販売履歴をきちんと管理するなどの対応によりトラブルを回避することができるかもしれませんが、融資を受ける感覚で予約金を受け取ったり食事券を販売することは、なるべく控えた方が無難でしょう。

(5)クラウドファンディング
【2020/4/7更新】
 食事券の販売に近い方法を幅広く、かつシステマチックに行える仕組みとして「クラウドファンディング」を活用しているお店も増えてきています。
 複雑な法規制もありますので、お店独自で仕組みをつくるのは難しいかもしれません。
 今は多数のプラットフォーム(クラウドファンディングサービス業者)がありますので、何ができて何ができないか、どのようなリターン設定が効率的かなどについて、担当の方とよく相談して進めるようにしてください。


3 融資・給付金の支給を受けたい

(1)返済計画の見直し
 既存の借入金の返済が厳しいときには、まずは取引先の金融機関に相談してみましょう。
 現在の情勢に鑑みて、銀行も返済計画の見直しや返済の猶予にはかなり柔軟に応じてくれるようになっています

(2)新型コロナウイルス感染症特別貸付
 日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付として、一定の条件を満たせば3000万円以下の金額を3年間は実質無利子で融資してくれる制度等が設置されています。当面の運転資金を調達したい場合は、この制度の利用を検討することをお勧めします。
 他にも状況に応じた多様な制度が整備されています。かなり複雑なのでここでの説明は省略しますが、よくご検討のうえ、ご自身の置かれた状況に合った(使える)制度の適用を受けてください。
 今後相談が一層集中すると思われますので、早めに取引先金融機関か中小企業金融相談窓口に連絡してください。

(3)持続化給付金
【2020/4/15更新】
 経産省が、「感染症拡大により、特に大きな影響を受ける事業者に対して、事業の継続を下支えし、再起の糧としていただくため、事業全般に広く使える給付金を支給します」として、個人事業主で最大100万円、法人で最大200万円の「持続化給付金」の制度を発表しました。
 「電子申請の場合、申請後、2週間程度で給付することを想定しています」とのことですので、極めて迅速な給付が受けられる見込みです。
 詳細は未定ですが「申請に必要な事項の詳細等については、4月最終週を目途に確定・公表します」とのことですので、注視してください。

(4)東京都の感染拡大防止協力金
【2020/4/23更新】    
 東京都は、2020年4月11日午前0時以降、飲食店の営業時間を朝5時から夜8時までとし、アルコール類の提供は午後7時までとすることを要請しました。
    要請に協力した事業者に対しては感染拡大防止協力金」として、1店舗の事業者には50万円、2店舗以上を持つ事業者に100万円を支払う制度が決定しました。
    協力金の支給要件・支給方法についても発表されました。少なくとも4月16日から5月6日までの期間中、休業や営業短縮に応じた事業者を対象にし、テイクアウト営業は除く(営業しても給付対象となる)とのことです。
    また、東京都として飲食店のデリバリーをサポートする仕組みも作っていくとの発言もありましたので、ニュースや公式ホームページに注目してください。


4 詐欺・窃盗に注意

 新型コロナウイルスの混乱に乗じた詐欺事件が報告されています
 今後、飲食店の窮地に乗じた犯罪被害が発生することも懸念されます。
 たとえば無担保貸付、助成金、義援金などに見せかけた詐欺や投資詐欺、自治体職員や委託先を装った店内への侵入窃盗です。
 こんな状況で「美味しい話」はあり得ませんし、「公表されていない情報」があなたにだけ知らされることもあり得ません。
 身元がはっきりしない人との間で、大きな金銭のやり取りをすることは絶対に避けてください。
【2020/4/14更新】
 案の定、飲食店向きの詐欺事件が多発しているようです。
 例えばお店に「緊急融資」等と書いたFAXを送信してきたり、業務用消毒薬・マスクなどを売りますと宣伝してきたりするようです。
 窮地につけこむのが詐欺の常套手段です。くれぐれもご注意ください。
 融資は公的融資を受ける、身元の分からない先と取引しないということを徹底してください。

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