【飲食店向け】新型コロナウイルス対策下のテイクアウト営業について知っておくべきこと【2020/5/28更新】
緊急事態宣言を受け、飲食店を取り巻く環境は悪化・長期化が避けられない状況です。一定期間の閉店や、テイクアウト営業を開始している飲食店も増えているようです。
飲食店の方々からいただいたご相談を踏まえ、飲食店向け記事の第2弾として、テイクアウト営業について知っておくべきことをまとめました。
テイクアウトしてはいけない食品、営業許可、食中毒対策について注意すべき点が多数ありますので、すでにテイクアウトを開始されている方も、検討中の方も、ぜひご一読ください。
なお、第1弾も本記事も、記事公開の早さと読んだ分かりやすさを優先しています。特に営業許可(免許)や食中毒対策については、必ず保健所に相談してください。
追加情報があれば随時更新していきます。ご意見や情報をお寄せください。
【2020/4/23更新】
東京都が新たにテイクアウトやデリバリー、移動販売を始める飲食店経営者向けに100万円を上限として助成する制度について追記しました。
【2020/5/12更新】
気温や湿度が上昇し、食中毒リスクが著しく高まっています。メニュー、調理工程、デリバリーの方法、お客様への注意喚起には十分な配慮をしてください(具体的な注意点や対策については、自治体などの情報提供も充実してきていますので、そちらをご参照ください。)。
【2020/5/28更新】
外食業の事業継続のためのガイドラインが発表されました。
店内営業を再開される際には必ず参照し、可能な限り導入してください。
※重要※
記事の内容について保健所窓口で確認したところ「調理方法や設備、地域差もあるので、一般的な回答は難しいです。安易なテイクアウト営業が行われてしまうことには問題があります。個別に対応するので、飲食店の方は遠慮なく管轄の保健所に相談してください。」との回答がありました。
記事の内容については可能な限りの調査をしておりますが、保健所の了解やお墨付きを得たものではないことにご留意ください。
1 テイクアウト営業に必要な許可
営業許可を受けている飲食店の調理場内で調理した料理を、店頭でテイクアウトとして対面販売する場合、基本的には特別の許可は必要ありません。
提供する料理の量や数にも制限はありません。1個からの注文販売でも大丈夫です。
しかし、たとえばシェフの自宅で調理した料理を店頭で販売することは認められません。店内の調理場内での調理に限った営業許可だからです。
また、次に説明するとおり、飲食店営業許可だけではテイクアウトが認められない食品が多数ありますので注意してください。
2 テイクアウトできない食品
飲食店営業許可だけではテイクアウトできない食品について、主要なものを挙げて説明します(これに限られませんので注意してください。)。
簡単な区別としては、すぐに食べずに保存される可能性のある食品(食中毒が起こりやすい食品)は注意が必要と考えてください。
これらの食品を安易にテイクアウトしてしまっている例が数多く見受けられ、実際に保健所から指導を受けている例もあるようです。
調理工程や設備、地域によって判断が異なる場合もあるとのことですので、管轄の保健所に相談してから販売するようにしてください。
(1)食肉製品
食肉製品を販売するためには、特別の許可が必要です。
食肉製品とは、ハム、ソーセージ、ベーコンのほか、焼き豚、ローストチキン、コンビーフなどをいいます。
食肉を50%以上含むハンバーグ、ミートボール、テリーヌなども含まれます。
ただし、サンドイッチにハムを挟むとか、チャーハンに焼き豚を入れて別の料理に調理して提供するような場合や、スライスしてオードブルとして提供するような場合には、特別な許可を必要としません。
(2)冷凍食品
出来上がった料理を真空パックして「冷凍」して販売すれば、保存が効いて便利ですが、冷凍食品を販売するためには特別の許可が必要です。
冷凍食品は長期間保存される可能性が高く、お客様自身が行う再加熱の調理工程も管理できないためです。
また、カレー、シチューなどの液体の多い料理を真空パックして「冷蔵」で販売する場合であっても、特別の許可(惣菜製造業許可など)が必要とされる可能性があります。管轄の保健所に確認してください。
(3)パン
お店で焼いた後で加工や調理をしていない食パン・菓子パン(食パン、バケット、あんパン、カレーパンなど)を販売するためには、菓子製造業許可が必要です。
仕入れた食パン・菓子パンをそのまま販売する場合には、基本的に特別の許可を必要としません。ただし、小分けにして販売する場合や、調理パンを仕入れて販売する場合には許可が必要とされることがありますので保健所に確認してください。
サンドイッチやハンバーガーといった調理パンを自ら調理して販売するときは、基本的に特別の許可を必要としません。
(4)菓子
お店で作ったケーキやクッキーを販売するためには、菓子製造業許可が必要です。クリームを使用していても、使用していなくても同様です。
ロールケーキ、プリン、ゼリー、チョコレート、ようかんなどを販売する場合も同様に、菓子製造業許可が必要です。
(5)缶詰・瓶詰
ジャムや食べるラー油、つくだ煮などを缶詰・瓶詰にして販売するためには、特別の許可が必要です。瓶詰なども長期間保存され、その間に食中毒の危険性が生じやすいからです。
プラスチック容器(たれびんなどのポリ容器)の場合には、基本的には特別の許可を必要としません。
(6)ソース類
焼肉のたれ、ケチャップ、果実ソースなどを、販売のみを目的として製造するときには、特別の許可が必要です。
もっとも、焼肉弁当にたれを付属させる場合など、店頭で小分けして販売するときには許可は不要とされています。
3 アルコール類の販売に関する特例
原則として、飲食店営業許可で認められるのは店内での提供(ボトルキープも含みます。)に限られており、販売はできません。
アルコール類の販売には、酒類販売業免許が必要です。開栓済みのボトルの販売や、飲み残しの販売であっても同様ですし,販売価格が安く、仮に仕入値以下の販売であっても認められません。
しかし、このたび、新型コロナウイルス対策下における特例として、飲食店が資金確保のために在庫のアルコール類を消費者に販売することを認める「料食店等期限付酒類小売業免許」を付与する措置がとられることになりました。
措置の概要は以下の通りです(国税庁ウェブサイトから引用)。
〇 料飲店等が、新型コロナウイルス感染症に基因して、在庫酒類の持ち帰り用販売等により資金確保を図るものについて、迅速な手続で期限付酒類小売業免許を付与します。
〇 令和2年6月30日(火)までに提出のあった免許申請書に限ります。
〇 免許には、免許付与から6か月間の期限が付されます。
〇 自治体等から各種の要請等がある場合、これに従うことを条件とします。
(注)
1 今般の期限付酒類小売業免許についても、一般の酒類小売業免許と同様に、酒類の仕入れ、販売について帳簿に記帳する義務が課されるほか、販売数量の報告等を行う必要があります。
2 今般の期限付酒類小売業免許を付与された料飲店等は、既存の取引先小売業者との取引が引き続き可能です。
3 今般の期限付酒類小売業免許で販売できる酒類は、既存の在庫をはじめ既存の取引先からの仕入れの販売に限ります。
4 今般の期限付酒類小売業免許を付与された料飲店等が、料理に併せるなどして酒類を宅配することは可能ですが、インターネット等を利用して、2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として酒類を販売することはできません(別途、通信販売酒類小売業免許を取得する必要があります。)。
5 今般の期限付酒類小売業免許を取得する場合においても、販売場ごとに、酒類販売管理者を選任する必要があります。
【2020/4/10更新】
税務署に確認したところ、手続については次の通り説明がありました。制度が始まったばかりで流動的と思われます。手続に不備があると免許付与が遅くなりますので、お店を管轄する税務署に事前にご確認ください。
・酒類販売業免許申請書(「期限付酒類小売業免許届出書」ではないので注意!)と添付書類を用意して、お店を管轄する税務署に原則として郵送で申請する
・酒類販売管理者は、本来は研修を受講している必要があるが、今回は研修不要で責任者を指定すればよい
・申請件数にもよるが、できるだけ迅速に処理するよう指示が出ているので、概ね1週間以内には免許付与できると思われる
【2020/4/13更新】
国税庁ウェブサイトに申請様式と記載例がアップされました。
あくまでも免許の付与が必要で,守らなければならない事項もあるということに注意してください。また,申請に期限があることと,免許自体にも期限があることに注意してください。
【2020/4/15更新】
書類に不備がなければ、3~5日程度で迅速に免許が付与されているようです。酒類販売の可能性があるならば、早めに申請しておいたほうが良いと思います。
なお、ソフトドリンクの販売については、特別の免許は必要とされません。アルコール類でない限り、高級なお茶やジュースであっても、販売は可能です。
また,アルコール類の消費税率は10%、ソフトドリンクは8%です。
4 食品表示について
(1)食品表示の義務はありません
飲食店の店頭でのテイクアウト販売の場合、基本的に食品表示(コンビニ弁当などに貼ってあるラベル)の義務はないものとされています。食品の内容について、直接お客様に説明ができるためです。
(2)伝えたほうが良い場合もあります
万が一アレルギーや食中毒が出てしまってはいけませんので、可能な範囲で表示したり、お客様に伝えたほうが良い場合もあります。
たとえば、メニュー表等にアレルギー物質とされる特定原材料7品目(卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに)や、特定原材料に準ずるもの21品目について、「当店では○○を含む食品を取り扱っています」と記載しておくだけでも、安心できるお客様はいると思います。
ただしこの場合、「記載しなかったアレルギー物質は使用していない」と受け止められてしまい、かえって危険を招く可能性もありますので、十分に注意してください。
(3)お客様へのお声がけを推奨します
消費期限や保存方法についても表示の義務はありませんが、「今日中に召し上がってください」とか「冷蔵庫で保存してください」といったお声がけを徹底したほうが安心です。
特に、これから気温が高くなると食中毒のリスクがさらに大きくなりますので、衛生管理や加熱工程の徹底を含めた食中毒対策には十分すぎるほど注意を払ってください。
5 食中毒に十分注意する
(1)食中毒のリスク
テイクアウトの商品には、店内で提供する商品とは比べ物にならないほど大きな食中毒のリスクがあることを十分に意識してください。
お客様に手渡したあと、その商品がどのように保存され、いつ、誰が食べるのかをお店がコントロールすることはできません。
予期せぬ(ときには常識外れの)扱いがされる可能性もあるということを念頭において、調理工程を管理するようにしてください。
万が一、テイクアウトの商品で食中毒が発生してしまうと、そのお店の営業が停止してしまう可能性があることはもちろん、他のお店や飲食業界全体に大きな悪影響を与えてしまう可能性があります。
(2)PL保険(生産物責任保険)への加入
万が一食中毒が発生しても、直ちにそのお店が責任を負うとは限りません。しかし、場合によっては莫大な損害賠償債務を負うことがありますので、リスクには備えておくほうが良いと思います。
飲食店向けのPL保険(生産物責任保険)がありますので、未加入の方はぜひ検討してみてください。
6 東京都の業態転換支援助成金について
【2020/4/23更新】
東京都が、新たにテイクアウトやデリバリー、移動販売を始める飲食店経営者向けに100万円を上限として助成する制度を開始しました。
宅配用バイクリース料、梱包資材などの費用も対象となりますが、予算の限度があるので先着順とのことです。
7 その他
(1)消費税は8%
テイクアウトの場合、消費税率は10%ではなく8%となります(アルコール類を除く。)。
通常営業と併行して行う場合には、申告の際に分からなくなって混乱する可能性がありますので、テイクアウト専用の帳簿をつけておいたほうが良いかもしれません。
(2)個人情報の管理
デリバリーを行う場合には、お客様の住所をお聞きすることになります。氏名や電話番号以上に重要な個人情報ですから、厳重に管理してください。
(3)とにかく保健所に相談
この状況を生き抜くため、多くのお店が必死になっていることに胸を痛め、弁護士として何かできることはないかと思い記事にまとめました。しかし、冒頭にも記載したとおり、安易なテイクアウト営業を推奨するものでは決してありません。
保健所には食品衛生の専門家が揃っています。飲食店の窮状もよく理解してくれています。食品衛生指導、営業許可申請、その他食品衛生に関わることはすべて、とにかく管轄の保健所に相談するようにしてください。
(4)2020/4/10 東京都知事会見について
東京都は、2020年4月11日午前0時以降、飲食店の営業時間を朝5時から夜8時までとし、アルコール類の提供は午後7時までとすることを要請しました。
感染拡大防止協力金などの制度については、第1弾の記事か、公式ホームページを参照してください。
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