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【飲食店向け】新型コロナウイルス対策下で家賃の減免をお願いする方法(ひな型つき)【2020/6/5更新】

 新型コロナウイルスの感染拡大は収束の目処が立たず、ついに全国を対象として緊急事態宣言が発令される事態となりました。
 外出自粛や短縮営業の要請を受け、飲食店を取り巻く環境は悪化の一途をたどり、長期化も避けられない状況となっています。
 飲食店の資金繰りについてまとめた第1弾の記事テイクアウト営業の法規制についてまとめた第2弾の記事には大きな反響がありましたが、そのなかには「家賃交渉のやり方が分からない」とか「どうせ無理だからあきらめている」といった声もありました。
 最大の固定費である家賃の減免が実現できるかどうかは、この状況を生き抜くために最も重要なポイントといっても過言ではありません。
 そこで、飲食店向け記事の第3弾として、家賃の減免をお願いする方法についてまとめ、さらに、家賃交渉にそのまま使えるひな型を公開します。
【2020/6/15更新】
 賃貸借契約に関して法務省の公式見解が発表されました。概ね、ここに書いた内容のとおりです。

※重要※
 家賃交渉の方法は、事案に応じて千差万別です。契約の種類、契約の内容、お店のおかれた状況によっても異なります。
 また、家賃交渉の申入れをきっかけとして関係が悪化したり、退去を求められてしまう可能性も無いとはいえません。
 本記事は一般的な内容をまとめたものですので、実際の家賃交渉ではご自身に最適な方法を考えて慎重に行うか、専門家に相談してください。

1 家賃の減免とは

 家賃の減免とは、家賃を「減額」または「免除」してもらうことを意味します。
 一般的には「減額」というと一部の減額、「免除」というと全額の免除を指しますが、今回はざっくりと「減免」という単語でまとめます。
 なお、ひな型では「賃料」という単語を使っていますが、「建物の賃料」のことを一般的に「家賃」と呼ぶことが多いだけで、意味は同じです。
 「建物の賃貸人」のことを一般的に「大家」と呼ぶことが多いのと、同じようなものです。


2 家賃の減免の方法

 家賃の減免の方法は、大きく2通りあります。
 1つは、法律を根拠に家賃の減額を請求する方法
 もう1つは、賃貸人と合意する方法です。
 1つめの方法は「賃料減額請求」と呼ばれ、借地借家法第32条という法律に基づく権利として認められているものですが、今回この方法を適用するのは難しそうで、しかも結論が出るのに時間が掛かり、効果も見込めないので、説明は省略します。
 
 今回は、賃貸人(つまり大家さん)と合意することを目指しましょう。大家さんと合意するということは、言い換えれば、大家さんに家賃の減免をお願いして、了解してもらうということです。

 どのようにすれば、家賃の減免を了解してもらえるでしょうか。

(1)お店の窮状を伝える
 なにしろ大家さんにお店の現状を伝えることです。
 お店の売上がどれだけ落ちているのか、お店がどういう状況にあるのかを、できるだけ具体的に説明してください。
 テレビやインターネットの情報だけでは、お店の窮状を正しく理解してもらえない可能性があります。
 管理会社を経由してしか説明ができないこともあるでしょうから、そのようなときは大家さんまで説明が正確に伝わるように、口頭ではなく書面にして伝えましょう

(2)お店を継続するための努力を伝える
 お店の営業を継続するためにどんな努力をしているのかも、伝えたほうが良いです。
 大家さんには大家さんの努力や苦労があります。「努力もしないで甘ったれている」と思われないようにしましょう。
 もちろん、実際に、お店の営業を継続するために手を尽くしていることが前提です。

(3)お店が閉店してしまったときのことを想像させる
 万が一お店が閉店し、空き物件になってしまえば、大家さんも収入がなくなります。税金や光熱費の基本料金はかかりますから、実質的にはマイナスになります。
 この状況ですぐに新しいテナントが入ってくるとは考えにくいですし、このまま飲食店の閉店が続けば市場に空き物件は増えると予想されますので、今後も新しいテナントを見つけるのにも苦労するかもしれません。
 閉店されて収入がなくなってしまうよりは、家賃を減額してでも今のお店に頑張ってもらったほうが良いと考えてくれることを期待しましょう。
 ただ、このことを直接伝えると、脅しのように聞こえてしまうこともありますから注意しましょう。
 こちらが何も言わなくても、大家さんは先のことを考えているはずです。

(4)具体的にお願いする
 大家さんには、漠然とお願いするのではなく、たとえば「2か月間に限り、50%の減額」とか、「当面の間、家賃の半額については支払いを猶予」いうように、期間と金額をなるべく具体的にして申し入れましょう
 そのほうが検討もしやすく、了解を得やすいはずです。

(5)ひたすらお願いする
 情に訴えかけましょう。最後は人と人との信頼関係です。 


3 家賃の減免に応じてもらえたら 

 大家さんが家賃の減免に応じてくれたら、その内容をきちんと書面に残しておきましょう。口約束でも法的な効力は生じますが、後から「言った、言わない」の争いになることは避けるべきです。
 後掲のひな型などを活用してください。


4 家賃の減免に応じてもらえなかったら

 大家さんがどうしても家賃の減免に応じてくれなくても、あきらめないでください。
 減免がダメなら、支払いの猶予を求めましょう。
 支払いの猶予とは、支払いの期限を遅らせることを意味します。必要なところにお金を回し、収束までの時間を稼ぐ手段としては効果があります。
 ただし、減免された家賃と違い、猶予されたにすぎない家賃は後で支払う必要がありますので、注意してください。


5 ひな型と解説

 今回の家賃交渉は、自分の言葉で伝えるのが一番です。法律や経済の知識ではなく、お店の状況や情熱を伝えることが必要になるからです。
 とはいえ、ツボを押さえた上手な交渉をするのは、なかなか難しいかもしれません。

 そこで、あくまでも一般的なものとしてですが、①賃料減免のお願い
②賃料減免合意書
③賃料支払猶予合意書

のひな型を公開します(Googleドライブにジャンプします。)。

 まずは①賃料減免のお願いで家賃交渉を持ち掛け、協議の結果、家賃の減免に応じてもらえることになったら②賃料減免合意書を作成してください。
 減免ではなく、支払い猶予ということで話がまとまったら、③賃料支払猶予合意書を作成してください。
 なお、前月末日払いの賃料の場合、「5月1日から7月31日まで」の賃料とは、4月30日(5月分)、5月31日(6月分)、6月30日(7月分)に支払う賃料を指すことになりますので注意してください。

 それぞれのひな型には記載例もつけてありますので、ご参照ください。 
 ひな型の内容の変更や追記はご自由にしていただいて構いませんが、自己責任でご利用ください
 特に①賃料減免のお願いについては、ご自身の状況にあった内容に変更していただくとか、資料を添えていただいたほうが、効果が高いと思います。

 また、ひな型の内容に関するご相談に限り、試験的にメールでの簡単なご質問に応じます。
 (1)店舗の名称
 (2)店舗の所在地
 (3)相談者氏名
 (4)相談者住所
 (5)相談者電話番号
 (6)賃貸人名称(氏名)
※利益相反の確認のため必要です。
を明記して、専用メールアドレス(tsukijibengoshi@gmail.com)までご連絡ください。
 相談件数が多すぎる場合、必要事項が不足している場合、質問内容が不明確な場合、質問内容がひな型の内容と関連しない場合などには、こちらから特に連絡をすることなくご質問に対応できない場合がありますことをあらかじめご承知おきください。
 なお、相談対応は予告なく終了する可能性があります。

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